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第27話 春の訪れ、兄妹の朝

朝ですよ〜。


 

 長い冬が過ぎ。生命の芽吹く季節がやって来た。


 そう、春だ。


 春は良い。寒くもなく、暑すぎもしない。季節の中では一番好きだろう。


 暖かな朝の日差しが、開けた窓から入ってくる。


 そろそろ起きるか。


 ん〜。と、伸びをして起き上がる。


 やばい。ポカポカして眠気が覚めない。


 ……父さん、申し訳ないが、モーニングの準備よろしく。


 心の中で謝罪して、そのままもう一度横になる。


 たまらん。この暖かな日差し、爽やかな風。そしてふかふかのベット。


 あっ、これはすぐ寝るやつだ……。

 おやすぅすぅ……。


 二度寝を始めた瞬間であった。


 ギィ。


 部屋のドアが軋む音が聞こえた。


 そろそろ改修が必要だな。

 寝る時にギィギィしてたら気になってしょうがないぞ。

 万能(ユニヴァース)創造(クリエイト)で一発だが味気ない。

 バラしてから一人で直してみよう。

 無理だったら加護使おう。


 足音がゆっくりとベットに近づいてくる。


 誰だ? まぁ足音でわかるんだが。


 ベットの横で足音が止まる。


 バッサァ!


 勢いよく掛け布団がはがされる。


「お兄ちゃん朝だよー!」


 案の定、愛しのエヴァが起こしに来たようだ。

 だがまだ眠いのだ。たまにはいいだろ?


 という事で寝たフリ。


「お兄ちゃん朝ですよー」


 寝たフリ。


「もうっ起きてるんでしょ!」


 がっふ!?


 エヴァが僕に飛びかかって来た。


 フライングプレスだと!

 何て危険な技を!


 まぁ軽くて助かったけど。


「……起きるからどいて」


「や!」


 何で!? 起こしに来たんじゃないの?


「ポカポカあったか」


 僕の上に乗ったままホワホワした顔をするエヴァ。

 僕の胸に、両腕で頬杖をついて、脚はパタパタと動かしている。


「お兄ちゃんの眠そうな顔かわいい」


 エヴァが僕の顔を覗き込んできた。


 いや、何を言っているんだ? 鏡を見ろ。

 今のエヴァの破壊力は僕の世界の(ワールド)破壊者(ブレイカー)を軽く凌駕するぞ。


「エヴァ早くどかないとくすぐるよ?」


「やれるものならやってみるがいい」


 何その魔王口調。

 どこの魔王ですか?

 エヴァが魔王なら僕は勇者か。


 勇者なら魔王を退治……しない方がいいな。可愛らしすぎる。こんなに可愛い魔王なら、絶対服従誓います。


 可愛さで世界が滅ぶまである。


 絶対可憐魔王エヴァンジェリン爆誕の瞬間であった。


 っと、馬鹿な話は置いといて、エヴァ、母さんに頼まれたんだろ? 起きるからどいとくれ。


 もぞもぞ僕の上で動くエヴァ。

 うん。お兄ちゃん朝の生理現象があるからヤバイね。

 少年の元気舐めんな。


 もぞもぞと動き回り、どいてくれるかと思ったのだが。

 エヴァはベストポジションにたどり着いたのか、瞳を閉じて「おやすみ」と、宣言して寝息を立て始めた。


 気分的には、そうそうどいて……って、寝るんかい! といった感じだ。


 まったくしょうがない妹だ。兄を起こしに来て一緒に眠ろうとするなんて。

 けしからん! が、嬉しい。


 という事で、僕も……。


 エヴァの体温が温かい。まるで日向にいるようだ。

 実際窓から朝陽が差しているのだが。人肌には勝てないな。


 心地いいエヴァの体温を感じながら、僕は意識を手放した。



 ――が、そんな幸せな時間も一瞬で終わりを告げた。



 バタン!

 ドアが勢いよく開く。


「こらっ! リットいつまで寝てんの! エヴァあんたまで寝てどうするの! あんたが起こしてくるって言ったんでしょ!」


 魔王もとい母の襲来だった。


 母の起こし方はエヴァよりも痛みを伴う方法だ。

 僕とエヴァは仲良く頬をつねられて涙目になっていた。


 ……痛い。


「おかーひゃん。いひゃいよぅ……」


「自業自得でしょ。早く顔洗ってきな。目が覚めたらリットはパンの買い出し、エヴァはテーブルセットよ」


「「ふぁーい」」


 頬をつねられたまま返事をする。


「よろしい」


 満足げに母さんは頷くと、僕達の頬を解放して部屋を出て行く。


 僕とエヴァは頬をさすりながら微笑み合う。


「痛かったな」


「うん。痛かった」


 ぼくはエヴァの赤くなった頬をさすってあげた。

 何故か反対の頬も赤くなる。


 わたしもしてあげる。と、エヴァが僕の頬に手を伸ばす。

 温かい手がとても気持ちいい。


「痛くなくなった?」


 そう言ってエヴァは微笑んだ。


 胸がキュッとなる。


「ああ、痛くなくなったよ。ありがとうエヴァ」


 そう伝えると、嬉しそうにも照れながら、可愛らしく、花が咲いたように笑ってくれた。



 エヴァのその笑顔が、春の木漏れ日のように、リットの身体と心を優しく包み込むのだった。



おはようございます。

寒い日が続きますね。

この作品で少しでも心が温かくなれば幸いです。

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