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第26話 転生ゲーム 2

少し長め。

 

 転生ゲームが始まった。


 若干目が血走った者もいるが、進めさせてもらおう。


 コマを進める順番はやった事のある僕、エヴァ、その後に初心者のフレデリク、アルリエル、イリナ、オーランドの順になった。


「順番は決まったね。じゃあまずはみんなに銀貨紙幣五枚を渡します。最初の所持金だね」


 銀貨紙幣の他にも銅貨紙幣、金貨紙幣などを作ってある。


「紙なのね」


「その方が数えやすいだろ、大きさも一緒だし魔法で転写も出来るから量産もしやすい」


「紙もタダではないが枚数が決まっているなら金額設定もしやすいな」


「コストダウンで紙の大きさ質も変えられます。あまり言いたくはありませんが。貴族用と平民用でグレードを分けましょう」


「それがいいね」



 全員に紙幣を渡していく。


「最初に銀貨紙幣一枚で保険に入れるんだ。馬車保険。イベントマスで事故に遭ったりした時に使えるからなるべく入っておこう。決算の時、無事故ならお金がもらえるよ」


「馬車保険……聞いたこともないな」


 まぁまぁ、気にせずに。


「色々考えてるね。保険か、貴族ぐらいしか入ってないけどゲームだもんね」


 そう。細かいとこは放っておこう。


 全員保険に入ってスタート。



「最初のスタート時は、全員平民スタートなんだ職業なんかはない。進むにつれて職を得たり職がランクアップするんだ」


「面白そうだ。まさに転生ゲーム、ワクワクしてきたな」


 オーランドさんが嬉しそうにしている。


 待ちきれなさそうだ。

 リットはルーレットを回す。


「真ん中のルーレットを回して出た数のマスを進むことができる」


 リットはルーレットを回してコマを動かす。

 ルーレットが示すのは五の数字。


「コレで五マス動かせる。そして止まったところにある文字を読むんだ」


 あっ、売り出す時に文字が読める事前提じゃないといけないな。

 説明書も読めやしない。


「課題はあるがちゃんと商品になるよ。貴族は娯楽を求めているからね」


 貴族用になってしまいかねないな。

 まぁいいか。


「リット、最近は学校に通ってる子が増えてきてるから多分大丈夫よ」


 ほえぇ、舐めてたな。


 じゃあ気にせずやろう。


「この止まったマスにはこう書いてある。お腹が減ったので食事をとる。銀貨紙幣一枚を払う。つまり銀貨紙幣マイナス一枚で保険にも一枚使ったから残り銀貨紙幣三枚になる。マイナスになるマスや、プラスになるマスがあるからね。お金が足りなくなったら借金になる。最後に全員ゴールした時の所持金で勝敗を決めるんだ」


「なんとなくだがわかったな。よしやってみよう」


 やる気だけどリエルさん順番守ってね。


「じゃあ次わたしね」


 エヴァから順にルーレットを回していく。


 皆が普通にプレイする中、一人現実を歩む者がいた。


「あっ、職業マスですね。オーランドさんもう一度ルーレットを回してください」


 オーランドがルーレットを回す。止まった数字は2だ。


「えーと、2だから……商人ですね……」


 めっちゃ悲しそうな顔をするオーランドさん。

 大丈夫、まだ職業が変わるチャンスはある。


 全員から就職祝いに銀貨紙幣三枚をもらう。


「パパお金持ちでいいじゃない……」


 イリナが悲しそうにそう言った。


 優しいと思ったかい?

 違うんだ。イリナは出た目が悪すぎて序盤で借金をしている。今のでさらに増えた。


 このゲームは人の仲を引き裂く類の物になるかもしれない。


 ゲームはどんどん進む。



「む、職業マスだな今は見習い騎士だが転職できるのか?」


「ルーレットを回してランクアップも出来ますよ。ランクアップしたら次の職業マスでは、転職のメリットがあまり無くなります。更にランクアップして最終職業にしたほうがいいですね。その後職業マスに止まるとボーナスで金貨紙幣五枚がもらえます」


「なるほどな気に入らなければ転職すれば良いと」


「はい。まぁ運良く職業マスに止まればですが、それに職業を無条件に失うマスもあるので注意してください」


「私はランクアップしよう」


 ランクアップを選びルーレットを回すアルリエル。

 一から五ならそのまま、六から十ならランクアップ出来る。


「む、七だな。ランクアップして騎士になったぞ」


「初ランクアップですね強制の給料マスで給料が増えますよ」


 強制のマスにはどんな目が出ても止まらなければならない。


 高笑いするアルリエル。だがそれを地味に追いかけるオーランド。

 まだ勝負は始まったばかりである。



「お兄ちゃん私もランクアップする!」


 職業マスには止まったエヴァがランクアップを希望した。

 えっ、いいのかい? だってエヴァの職業って。


「やったーランクアップだね!」


 すでに回してるぅ!

 ランクアップしてしまった! 転職しなよ!


「……魔王だな」


 そう、エヴァは早々に職業マスでランクアップを済ませ、最後のランクアップも済ませてしまったのだ。

 誰も選ばないであろう最終職業である魔王に。


 最初にまさかの職業魔物を引いてしまうとは、そして魔将軍、魔王とランクアップしていった。


 エヴァは満足気である。


「特殊効果発動!」


 そう最終職業になれば一回だけ特殊効果が使えるのだ。

 魔王の特殊効果は。



「お兄ちゃん。わたしと……結婚してください!」


 潤んだ瞳で見つめられ、つい頭を撫でてしまう。

 エヴァは魔王でも可愛いなぁ。

 むしろエヴァが魔王なら全人類が従っちゃうよね。

 うん。間違いない。


「「ダメ〜!」」


 アルリエルとイリナが抗議の声を上げる。


 何だと! 魔王エヴァンジェリン様に従えぬと!


「何バカ言ってんのよ! 何なの特殊効果って!」


「そうだぞ! 魔王になるとリットと結婚出来るのか!」



 いやそういうルールなんだよ。魔王の特殊効果は強制。

 つまり個人に対し、結婚、職業などに関してのイベントを強制的に起こすことができるのだ。


「そんな卑怯よ!」


 だが欠点もある。


 エヴァこれは指定した相手がルーレットを回すから誰と結婚するかはわからないんだよ。


 これはギャンブルなのだ。


「えっ? そうなの?」


 エヴァの顔が青くなる。


「とっ、取り消し!」


 両サイドからエヴァが掴まれる。


「ダメよエヴァ、いや魔王。もうあなたの能力は発動してるのよ」


 イリナ悪い顔だ。


「そうだぞエヴァ、いや魔王。正々堂々と勝負しようじゃないか」


 リエルさん悪い顔だ。


 魔王に正々堂々って……。


 そういえば悪い魔王ばかりじゃないんだっけ?

 まぁ僕には関係ないしどうでもいいか。



「「さぁリット! ルーレットを回して!」」


 はいはい。


 僕としてはエヴァの希望を叶えたいのだけど。


 一か二ならエヴァと、三か四ならフレデリクと、五か六ならリエルさんと、七か八ならイリナと、九か十ならオーランドさんと、とりあえず男は避けたい。


 まさかここにきて男女を分けなかったことを後悔するとは……。


 くっ! リット行きまーす!


 運命のルーレットを回す。


 全員が固唾を飲んで見守っている。


 エヴァとリエルさんとイリナはルーレットの半径十センチの距離をキープしている。


 いや女性陣前のめりすぎない?


 見えないし……。


 カラカラカラカッ!


 ルーレットが止まった指針の先には。


「……三」


 誰が言ったかはわからない。だが見ればわかる。


 止まったのは三だ。


 つまり……。


「……リット」


 頬を染めるフレデリク。


「……よろしくね」


 おまえかー!


「……フレッド様」


 あぁ、エヴァが今まで見たことないくらい落ち込んでいる!


 くそー! 必ず別れて君のもとへ!


「リット、離さないよ」


 やめろー! 物理的に近づくなぁ!



「くっ、フレッドが邪魔だな消すか」


 物騒だなおい!


「やむを得ないわね。フレデリクさんには私と同じ借金地獄に堕ちてもらうわ」


 黒いオーラ出てんぞ!


 むしろダークサイドに堕ちそうだ。


「ふっ、やれるものならやってみたまえ! 僕とリットの愛の前では、全てが無力と知るがいい!」


 調子に乗るな!

 愛し合ったことなんてないだろ!


「そんなっ! 僕のことは遊びだったの!」


 つい最近も同じようなこと聞いたぞ!


 まったく。まだゲームは続くからどうなるかわからないぞ。


「君と僕は結ばれる運命なのさ」


 うおぉぉぉぉぉ!? 鳥肌がぁ!!!


「そんなに喜んじゃって」


 なんなの!? 頭がおかしいの!?


「リット無駄よ。この人はこういう性格だもの」


 そうだな。相手をするだけ疲れる。ゲームを進めよう。


 次はアルリエルだが。簡易的な説明書を読んでにやけている。


 どうしたんだ?


「ふっ私の番だな。紙幣を貯めれば結婚マスで既婚者とも結婚できるのだ。慰謝料で金貨紙幣三枚を相手に払うことでなぁ!」


 ルールを把握し始めているだと! さっきのは結婚に関するルールを見ていたのか!


 だけどお金払うからメリットがない!

 最後は個人資産だから!


 じゃあなぜ作ったかって。

 面白そうだから!


 アルリエルはルーレットを回し、見事に結婚マスに止めた。

 なんつー強運だ。

 運の無駄使いとも言うが……。


 ちなみにこの国では一夫多妻や、一妻多夫が認められている。

 だが、ゲームでは一人の伴侶しか認められていない。


 アルリエルが相手を決めるルーレットを回す。


 ここでも強運が出るか?


 ………。


「アルリエルさんわたしだよ……」


 エヴァと結ばれた。


「のぅぅぅぅ!」


 女性の出す声じゃないよそれ。

 てゆうかエヴァじゃ不満なんですかぁ?

 少し威圧する。


「リットのばかぁ!」


 怒らせてしまった。

 すいません。僕が結婚マスに着いたらリエルさんを選べるよう頑張りますから。


「本当か!」


 満面の笑みで抱きついてくるリエルさん。

 いや、100%運なんだけどね。


 ん? どうしたエヴァにイリナ?

 すごい顔してるぞ。女の子なんだからそんな顔しちゃダメだぞ。


「「誰のせいだと思ってるの!」」


 えー! 僕のせい!?


 おい、フレデリク笑うな!



「いやー、リットくんは見てて飽きないなぁ」


 それ、褒めてます?


「褒めてるさ、私の息子にしたいくらいだ」


 大袈裟ですね。


 イリナがなぜかアワアワしていた。


「そうなると僕が年下なんでイリナの弟になっちゃいますね」


「そっち!?」


 イリナが掴みかかってくる。

 やめろ首が絞まってる……。


 ゴホッゴホッ。


 仕切り直しだ。

 みんなあまり私情を挟まないでくれ。



「じゃあ次は私ね」


 イリナが今までの空気を断ち切るようにルーレットを回す。


「ふははは! 十よ! 最高の目じゃない」


 いや多ければ多いほど収入から遠ざかるぞ。そのままゴールするつもりか。


「はっ! それもそうね。 えっとこのマスは……もう一度ルーレットを回して進む? 何よこのピンポイントなマスは!」


 渋々ルーレットを回す。


「ふっ、一よ。何々? 初恋の人が結婚、お祝いで金貨紙幣一枚を渡す? ……ちくしょー!!」


 ……あいつだけ一人でやってるようなもんだな。

 なんか居た堪れない。


 フレデリク笑うなよ。可哀想だろ。


「グルルルル」


 ほら睨まれた。


 ほーら、こわくない。こわくない。


「ガルゥ!」


 めっさ噛まれた。


 痛い。野生に帰っているじゃないか。


 離しなさい。


 イリナを引き剥がしながら次のオーランドさんの番を見る。


「ふむ、結婚マスだね。イリナ! 待っていろ。パパが今行くからね!」


 ルーレットを勢いよく回す。


「一だね……」


 ……僕じゃん。


「オーランドさん、リットは渡しませんよ! 僕の物だ!」


 いや女だったら喜ぶセリフだが。僕は男なんだ、勘弁してほしい。


「ふっ、要らん!」


 リットくんショック!

 なんかムカつく。


 そのままゲームは進む。


「僕の番だね。さあ、どんなイベントかな?」


 フレデリクがコマを進めていく。止まった場所はピンク色のマスだった。

 おいっ! まさかそこは!?


「ふむふむ。妊娠して子供を授かる。全員から祝福される。お祝い金を全員から銀貨紙幣三枚もらう」


 オーランドさん大爆笑。


「……リット、僕デキちゃったみたい。テヘッ」


 何言ってんの君!?


「二人の愛の結晶だね♡」


 やめてくれー!


「「「リット(お兄ちゃん)!!!」」」


 僕のせいじゃないだろ!


「僕ら二人のせいだね」


 シャレにならなくなるから!


 このアホはどうにかならんのか……。



「次は私だ! 結婚マスに止まりたい!」


 リエルさん、そんなに作ってないから……。


「チッ、職業マスか、終わりも近いしランクアップするか」


 どうやら職業マスに止まりランクアップをするらしい。

 えーと騎士からランクアップすると最終職業は……。


「おっ、ランクアップできたぞ。つまり……ん〜」


 どうしたんだ? なんか顔が曇っているな、最強の職業なんだがな。


「お兄ちゃんアルリエルさん何になったの?」


「勇者だよ」


 騎士からランクアップすると勇者になれる。

 てか勇者と魔王が結婚しちゃってるよ……。


 リエルさん浮かない顔ですけど、どうかしましたか?



「勇者なんて私には分不相応だろう……まぁ遊びではあるがな」



 本当にどうしたんだ? リエルさんらしくないな。


 あっ、勇者の特殊効果も魔王とほとんど一緒ですよ。

 特殊効果、勇気。

 魔王と違ってルーレットを自分で回すことが出来る。


「我こそは勇者アルリエルなり!」


 切り替え早いな……。現金っていうか……。


「ずるいよ〜」


 と、エヴァが唸る。


「はぁーはっは! リット、私と結婚してもらうぞ!」


 だから確率なんですって、早く回してください。


「急かすな、気持ちは分かるがな。早く私と結ばれたいのだろう?」


 早く回せや。


「照れているのだな、かわいいヤツめ」


 ルーレットが回る。

 全員がルーレットに集中する……いや、約三名か。


 カラカラカラカラ。


 ルーレットが止まりその指針が四を指している。


「結局わたしだよ!」


 またエヴァの所で止まったようだ。


 羨ましい。


「次は私よ! 一発逆転ルーレット!」


 掛け声に凄みがあるな。借金やばいもんなイリナ。


「馬車から転落、治療費に銀貨紙幣二枚、さらに一回休み……」


 もう目も当てられない!

 保険も序盤で使ってるし。

 誰か助けてあげて! ゲーム関係なく。


 とりあえず撫でとこう。


「……えへへ」


 撫でてやると、イリナは頬を染めて笑顔になる。


 よし。少しはマシになったな。


 うん。今のは特別だからエヴァもリエルさんも頭をこちらに向けないでくれ。オーランドさんがルーレットを回せなくて困っている。


「ほらまだゲームは終わってないよ」




 この後もゲームは続き、終わったのは夜の営業前であった。


 順位に関しては聞かないでもらいたい。若干一名借金地獄で最後泣いたからな……。


 ゲームが長引いたのは、いちいち説明していたせいだな。

 父さんごめん。一人で仕込みさせちゃって……。


「子供は遊ぶのが仕事だろ」


 父さん……。


 感激していると。


「次は俺もやる」


 あっ、はい。是非一緒に。


 とてもやりたかったらしい。




「リットくん、生産はこれで決まりだね」


 おー。ゴーサインが出たぞ。

 よろしくお願いします。


 オーランドさんは胸を叩くと、そのまま料理を注文し、イリナとフレデリクと一緒に食事をはじめた。


 詳しい話はまた今度だな。




 ――翌日。



 今日もフレデリクとオーランドが来ている。

 仕事の打ち合わせかな?



「リット、今日も転生ゲームで遊ぼう!」


「それはいい。私も是非」


 どうやら遊びに来たらしい。


 あんたら仕事は?



「「父に(息子に)任せて来た!!」」



 仕事しろ!!



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