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第23話 ケモ耳っ娘を求めて 2

 

 亜人種が、あと十年以上この区画には移り住まないことを知り愕然とするリット。


「この家を出て、獣人族がたくさんいる区画に移り住むことにするよ。あっ、エヴァは連れていくから」

「ゆるさん! 父さんからエヴァを奪うんじゃない! 唯一の癒しなんだ……」


「エヴァは僕が連れて行く。父さんには母さんがいるじゃあないか!」

「ルーティのことは愛しているが、それとこれとは話が別だ」


 母さんが聞いたら怒るよ!


「僕からケモ耳を奪っておいて、エヴァまで僕から奪うのか!」

「それは俺じゃないだろう! 娘はやらん!」


 まるで嫁取りのようなやりとりが繰り広げられる中、カトレアは呆れたように話を聞いていた。


「この親バカが!」

「黙れシスコン!」


「……二人とも醜いからやめてもらえないかしら」


 冷や水を浴びせられたように、はっと我に返るリットとライオス。


「リット冷静になりなさい」


 はい。


「だいたい何で亜人? それも獣人にこだわるのよ? あとケモ耳って何?」


 すごい圧だ。特にケモ耳のあたり。


「こいつケモ耳っ娘がタイプなんだと」


 おやじぃー! 何言ってくれちゃってんの!?

 息子の趣味をバラすかね普通!?


「……どういう事? 説明なさい」


 恐い! 何なのドス黒いオーラ出てますけど!?

 エヴァもたまに出しているが……。


 仕方ない。語ってやろうじゃあないか!


「……ふっ、男のロマンってやつさ」


 キリッ。

 キメ顔をする僕に対してイリナが。


「説明なさいよ」


 めっちゃ睨まれた。


 あ、はい。すいません。


「あれだよあれ。なんかさ庇護欲というか、癒されるというか、とにかく説明できないような魅力があるんだよ」


「つまり、自分に従順なペットが欲しいと?」


 誰が言ったそんなこと!? 曲解だろ!


「庇護欲、癒されたい、つまりペットじゃない。犬や猫だとでも思ってんの? この変態」


 僕は変態じゃない! フレデリクと一緒にしないでくれ!


「あんた、仮にもフレデリクさんは貴族よ。しかも次期当主。それを変態呼ばわりなんて……」


 違うのかい?


「……違わないわね」


 遠い目をするイリナ。


「って、あんた話をすり替えないでよ」


 ちっ! バレたか。


「まぁいいわ。今度美味しい料理を作ってくれたら許したげる」


 ははぁ、ありがたき幸せ。


 大袈裟に礼をとる。

 イリナは「ふふっ」っと笑って唐揚げを頬張った。


 いつも笑ってたら可愛いのに。

 ついそんな事を思うリットだった。


 イリナが食事を済ませ立ち上がった。


「ごちそうさま。次はパパと来るわ。その方があんたも嬉しいでしょ。獣人の女の子が好きなリットくん」


 いたずらっぽく笑いながらイリナは店から出て行った。

 素直ではない言い方だが、どうやら父親のオーランドさんに今日の事を確かめてくれるようだ。ありがたい。

 持つべきものは幼馴染だな。

 まぁ僕の抱く幼馴染の幻想は砕け散ってしまったが。

 理想としては、僕にデレデレの幼馴染を希望します!





 ――後日、再びイリナがやってきた。



 今度は父親のオーランドさんも一緒だ。


「いらっしゃいオーランドさん」


 オーランドさんに挨拶をして、席に案内する。


「ああ、ありがとう」


「ちょっと、私には何もないわけ?」


 はいはい。いらっしゃいお嬢様。


「死ねっ!」


「ぶっふぅ!?」


 グーパン!?

 ありがとうございます!


「この汚物が」


 その筋の人なら喜びそうな言葉と侮蔑を含んだ目ですね!


「こらこらイリナ。リットくんが喜んじゃうだろ」


 喜ばねーわ! 僕の事どんな風に思ってるの!?


「同士!」


 あんたやばい奴だな!


「私の娘に殴られて喜ばない男はいないぞ」


 なに当たり前みたいに言ってんの!?


 くっ、忘れていた。この人が重度の娘狂いだという事を。


「……パパ引くわ」


 イリナが後ずさる。

 娘に引かれて本末転倒じゃないか。


「おーい。オーランドさんまだ早いが飯食ってくだろ」


 ライオスが助け舟を出してくれる。

 ありがたい。かなり混沌とした空間になりかけてたからな。


「ああ、いただくよ」


 笑顔で答えるオーランド。


 席に着くと料理が出来るまでは僕が話し相手になる。

 元々そのつもりだったし。ケモ耳の件について。



 さぁ、第一回 〝ケモ耳っ娘招集大作戦会議〟を始めようじゃあないか。


「なによその鬱陶しい名前は」


 大切だろ! わかりやすいし。


「リットくん娘の言う通りだ、鬱陶しい」


 あんたは娘の言いなりなだけだろ。まぁ今回はそれで助かっているんだが……。なんか複雑だ。


「わかったよ。好きな名前つけてくれ」


「わかった」


 そう言ってオーランドさんが提案を出す。


「では、なぜイリナはこんなに可愛いんだろう会議を始めよう」


 趣旨が変わってるぅ!?

 イリナ説明してくれてるよね!? 三歩歩いて忘れるほどトリ頭じゃないよね!?


「ほっときなさい。内容は亜人種に関してだから」


 ならいいんだが……。


「まず……ツンデレの娘ってマジやばくね? いつもツンツンしてるのにたまに優しくなるあれ、もうたまらん! 父さん悶絶!」


 おいー! ダメなヤツやん!

 娘の自慢始めようとするダメなヤツやん!


 てか僕の周りに変態が増えつつあるんだが……リエルさんも予備軍だし……。



「……パパ、怒るわよ」


 イリナが頭を押さえてオーランドさんに注意する。


「リットくん亜人種の誘致に関してだったな」


 キリッ! っと、先程とは打って変わって真剣な表情になる。


 ……最初からそうしてくれよ。


 この人と会話するには、いちいちイリナに頼まなければならないのか。


 はぁ、疲れる。だけどこれは試練だ。ケモ耳っ娘を存分に凝視するために! あわよくばモフるために!


「ははっ、リットくんって変態だよね」


 あんたには言われたくない。


「気を取り直して、亜人種の誘致に関してなら試験的になら今すぐにでも出来るんだ」


 えっ!? 出来るの?


「試験的にだね。こちらから住居を提供して、さらに生活の面倒を少なくても一年。ここに永住してもらえないなら商会の店を構えることもできないし、メリットもあまりない」


 つまり?


「普通に考えれば馬鹿のする事だね。勝算がなければ」


 ぐはっ! もはやファイナルジャッジメントじゃないですか。

 期待薄か……。


「いやいや普通に考えればだよ。うちはかなり儲けているし正直誘致して住居を貸すことはできる。あとはさっきも言ったけど、ずっとこの区画に住みたくなるかどうかなんだ」


 つまり目玉となるものを増やす事や治安の安全化を図れと?


「うん。そうだね。具体的には君に協力して欲しいんだ」


 僕に? 一体なにをしろと?


「君の知識が欲しい。料理に関する事や儲けになる事だね。あるだろう?」


 オーランドが商売の顔になっている。

 うわぁ、商人ってコレだから油断ならない。まぁ普通に利益にならない事なんて誰もやらないか。


 だがしかし困ったぞ。そう言うのは母さんが決めてるからな。



「パパとりあえずリットを主体に屋台を出さない?」


「なるほど、いい考えだね。でもここで出しても儲けには繋がらないよ」


 おい。勝手に話を進めるなよ。

 まったく。この商人の親子は似た者同士だな。


「私は変態じゃないわよ」


 やめてやれ。隣で親父さん固まってるぞ。


「屋台を出すのはもちろんここじゃないわ」


 じゃあどこに出すんだ?


「決まってるじゃない。人がいつも多い場所」


「なるほどね。それなら誘致につながる可能性がある。どんな場所でも不満を抱えている人は多い」


 でもそれだと亜人種以外も来てしまうのでは?


「人が集まるところに人は集まる。真理だよ」


 たしかに、今よりはマシかもしれないな。あとは母さんに許可を得ないといけないな。



「話は聞かせてもらったわ!」


 ババン!

 ルーティが買い出しから戻ってきたらしい。エヴァも一緒だ。


「イリナおねーちゃん久しぶり!」


「あーん! エヴァ久しぶりー! かわいいかわいいかわいい!!」


 イリナがエヴァに抱きつく。

 そういえばコイツはエヴァ狂いだったな。ホント似た者親子だよなー。


「ぐふぅ! 悔しくなんかないんだからね!」


 キモいからやめろよおっさん。親の嫉妬は醜いぞ。


 だがしかしそろそろエヴァから離れろよイリナ。僕は君以上にエヴァ狂いなのだからな。


「シスコンは引っ込んでなさい」


 エヴァを抱きながらイリナが挑発してくる。


 このクソアマァ! 僕の妹を返せ!


「あんた達馬鹿やってないで話を聞きな」


「はーい」


「母さん僕の妹がとられてしまうよ!」


 無言でアイアンクローをされた。

 ……痛いです母上。



 咳払いをするルーティ。


「話は聞かせてもらったわ!」


 そこからやり直すの!?


 ルーティは話を続ける。


「屋台を出すことには賛成よ。利益も出るし、何よりうちの宣伝にもなる」




 確かに、屋台を出せばそれが広告塔になる。


 だがしかし、うちから人員を出さなければならないのでは?


「うん。最初はそうだね。でも人はこちらでも準備するから問題はないよ。教育が終わればあとはこっちでなんとかするから」


 あっ、ありがとうございます。至れり尽くせりですね。


「はっはっは、無条件なわけないだろ。さっきも言った君の知識提供が必要なんだ。と言うわけでルーティさん息子さんの叡智を借りてもいいかな?」


「私たちにもメリットがあるのよね?」


「もちろん。リットくんが提供してくれた知識を使った商売をする時は、収入の一割をそちらに」


「二割」


 母さんそれは……。


「わかりました。交渉が早くて助かります。それにしても今まで渋っていたのに何故?」


 決まっちゃったよ!


 そういえば母さんは僕の知識を出すことに躊躇してたな。


「最近は入り用なのよ。それにリット自身が決めることでしょう。リットがしたいならそれでいいわ」


 母さん……結局あなたが決めているような。


「小さい男ね。利益に繋がるならそれでいいじゃない。」


 イリナにそう言われてしまった。


 君は商人の娘だからそんなこと言えるんだろう。僕の意思は!


「じゃあ、あんたはお金が欲しくないの?」


 いやいや、欲しいけども……。


「じゃあ、うだうだ言わないでよ」


 ……はい。すいません。


「決まりだね。リットくんにはとりあえず二つ商品を出して欲しい」


 料理ですか?


「いや、一つは料理だけど、もう一つは日常生活に役立つ物だね」


「なるほど、料理は屋台用に、日常生活に役立つ物はこの区画に誘致する人達の働く場所を作るためですね」


「理解が早くて助かるよ。やはり君は頭が良い」


 笑顔が怖い!


 それにしても、話がかなり大きくなってるな。大丈夫か?


「大丈夫。助っ人を呼んであるから」


 助っ人?

 何か嫌な予感がする……。


 そう思った瞬間、店のドアが勢いよく開いた。



「リット! 話は聞かせてもらった!」


 勢いよく入って来たのは金髪の変人貴公子。



 やっぱりお前かフレデリク!


次まで話が続きます。

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