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第19話 雪の降る日に

冬ですねぇ。

 

 本格的に冬が到来した。


 雪が降り積もって、辺り一面は銀世界。


 幻想的? いやいや寒くてやってられませんよ。


 前世では、産まれた土地が雪のあまり降らない場所だったから、雪にも寒さにも慣れてないんです。


「情けないわね」


「お兄ちゃん遊ぼうよ」


 今はエヴァと母さんと一緒に雪掻きをしている。

 父さんは料理の仕込みだ。


「こんなに寒いのに二人共元気だね………」


 震える身体を両手で抱きしめるようにしながら、二人に視線だけ送る。


 あー、顔が動かない。きっと凍ってしまったんだ。

 エヴァお兄ちゃんを暖めて溶かしてくれ!


「うん! わかった!」


 そう言ってエヴァが僕の背後に回る。

 後ろから抱きしめてくれるのかな?


 エヴァが僕の後ろから抱きついてきた。

 しかし。


「ッ! 冷た!!」


 うひゃー! エヴァ何やってんの!?


 背中に雪を入れられた。

 全身の毛が総毛立つ。


「えへへ。やーい寒がりさーん」


 エヴァがリットを挑発する。


 コイツやったな……。

 可愛い妹だが、許せん!


 仕返ししてやる!


 そう思った瞬間に隣から雪玉が飛んできた。


 甘い!


 それを察して避けるリット。


 いったい誰だ!?



「ちっ! 当たらなかったか」



 そこにいたのは高級そうな毛皮のコートを着たフレデリクだった。


 フレデリク! 貴様かぁ!

 この暇人がぁ!


「やぁ、リットにエヴァ、それにルーティさんも。ご機嫌いかがかな」


 悪いわ!

 今まさに最悪になった!


 あははは、と笑うフレッド。


「フレッドいらっしゃい。まだ店開いてないわよ」


「ははは、雪が積もっていたのでリットと遊ぼうかと」


 本当に貴族なのかお前?


「さぁ、何をして遊ぼうか」


「フレッド様。提案です!」


 エヴァが挙手してピョンピョン飛び跳ねる。


 かわいい。癒される。

 心なしか暖かくなったような。


「何だいエヴァ」


「雪合戦しましょー!」


「いいね。でも人数が少ない」


 そうだな。雪合戦するならもっと人数が欲しい。


「遊ぶのはいいけど。雪掻きも並行してやってよね」


 ルーティに注意される。


 はい。了解であります母上。


「大丈夫ですよルーティさん。すぐに切り上げます。気晴らしも必要でしょう」


「そうね。でもどうするの? 四人しかいないわよ」


 あー、母さんもやるのね。


 そんな時だった。


「私達を忘れてもらったら困るな!」


 バン! という効果音がつきそうな登場をするアルリエルさん率いる冒険者パーティー疾風の狩人。


 あなた方も暇なんですか? 仕事は?


「寒くて依頼なんかしてられん! あと面白そうな気配がして」


 仕事しろ!


 だがこれで八人。四 対 四で雪合戦が出来る。


 寒いけど、エヴァがやりたがってるからなぁ。

 ふとエヴァを見ると既に雪玉を量産していた。

 エヴァそれは卑怯なんじゃ……。


「お兄ちゃん、備えあれば憂いなし、だよ」


 可愛く言われてしまっては許すほかない。


 フレデリクとアルリエルを見る。

 二人も雪玉を量産していた。



 世界の(ワールド)破壊者(ブレイカー)


 加護で全部消してやった。



「「あー!!」」



「何するんだいリット!」


 何のことだ?


 全力でとぼけるリット。


「そうだぞリット! 私の子供達を! つまりお前の子でもある!」


 あんたは黙れ。


「うぇ〜ん。ルーティ、リットが冷たい! 雪なんかよりよっぽど冷たいよ〜」


 ルーティにすがりつくアルリエル。


 あんたキャラどうした?

 あとすごい目でエヴァが見てるぞ。それこそ凍えるような目だ。



「いや、どうやって今、雪玉を消したんだ? 魔法か?」


「あんな魔法ありませんよ。炎も出てないですし。溶けたわけじゃなく本当に消してるんですねぇ………」


「今、何をしたんですかリットくん?」



 ローダス達が疑惑の目を向けてくる。


 さあ、何のことやら。


 早く始めるぞー。雪掻きもせにゃならんし。


 誤魔化して雪合戦を強制的にはじめる。




「よし、じゃあチームを分けよう。」


 フレデリクが仕切り始めた。こうゆうところは貴族っぽいな。


「じゃあリットは一人で」


 おいっ! イジメか!


「何を言っているんだい?」


 真面目に分からないって顔をするな!


「じゃあ決まりで」


 全員頷いている。


 くっ! エヴァ、君は僕の味方だよな。


「お兄ちゃんの背中に雪玉入れる係します!」


 裏切り者ー!


 もう何でもいい……。

 だがお前たち、後悔することになるぞ。

 この僕を、怒らせた事をなぁ!




 こうして雪合戦が始まった。





 雪玉の砲撃がリットを襲う。


 リットは流れるような動きで、雪玉の集中砲火をかわしている。


「ちっ! 何で当たらねーんだ!」

「玉の補充を!」


 対して向こうは流れるような連携を見せる。


 疾風の狩人のメンバーが連携しているのはわかるが。何故か他の人員もそれに参加し、なおかつ連携を乱さないでいる。


 理由はわかっている。


「ルーティさんリットの後ろに回って遊撃を! ローダスさん達はそのまま集中砲火! フィリアさん魔法で牽制してください!」


 フレデリクが指揮を執っているのだ。貴族は人を使うのが上手いらしい。


 ただ魔法を使うのはおかしいだろ……。


「あくまで牽制さ」


 爽やかな笑顔でえげつない事をしてくれる。

 流石は腹黒フレッド。


 だがしかし! 僕は負けない!


 そっちがその気なら僕も本気を出そう。


 万能(ユニヴァース)創造(クリエイト)で周りの雪を集めて壁を作る。

 これで正面からの攻撃は防げる。


 そして除雪にもなって一石二鳥。最初からこれで除雪すれば良かった。世界の(ワールド)破壊者(ブレイカー)だと不自然だからな。


 ふはははは! そんな火力で破れると思うなよ!


紅炎爆撃(フレアボム)!」


 空中で炎が爆ぜ、雪の壁が粉々になる。


 おいー! 何だそりゃ攻撃魔法だよねそれ! 危ないよ!


「フィリア! ナイス! 後は任せてくれ!」


 ナイスじゃないっすよ!?


 アルリエルがリットに突撃する。


 ……何でもありになってきたな。


「もらった!」


 アルリエルが至近距離で雪玉を投げつけてくる。


 ギリギリのところでそれをかわし、地面に左手をつける。


 万能(ユニヴァース)創造(クリエイト)

 今度は周りの雪を使ってアルリエルを閉じ込める牢を作った。


降雪氷牢(こうせつひょうろう)


 今思いついた技名をそれとなく言ってみる。


「無駄にすごい!」

「加護の無駄づかい!」


 何とでも言うがいい。

 だが勝負はもらった!


 残りのメンバーも雪の牢獄に閉じ込めていく。


「出しやがれっ!」

「くっ、油断したわね、流石私の子供!」

「これじゃ魔法が使えません!」


 フィリアだけは魔法が厄介なので雪だるまにしてある。


 あとはフレデリクとエヴァだけだ。


「諦めるもんか……。諦めてたまるかぁー!」


 フレデリクが吠えた。その手には雪玉が握られている。

 駆け出したフレデリク。顔は戦士のそれだ。


 これただの雪合戦だよね? 何で君ガチなの?


 万能(ユニヴァース)創造(クリエイト)でフレデリクの前にある雪を隆起させる。


「うおおぉぉぉぉぉ!」 


 ガッ! バタン!

 見事に足を引っ掛け転んだ。

 はい捕まえた。


 捕まえたフレデリクを雪だるまにする。


「くっ、無念……!」


 だから何でそんなガチなの?


 残るはエヴァだけだ。


 エヴァの方を見る。すると。



「お兄ちゃんずるいよ……」



 エヴァに涙目でそう言われた。


 いやいや! 勝負だからね!



「「「「「「あーあぁ、泣かせた」」」」」」



 全員から非難の目を浴びせられる。


 違うっ! 違うんだ!


 エヴァ許してくれ!


「許しません」


 赤くなった目でエヴァに責められてしまった。


 僕が悪いの?


 罪悪感に苛まれた僕は、いつの間にか復活したフレデリク達に、雪玉の集中砲火を浴びせられ、雪の中へと沈んでいった。


 フレデリク達の歓声が聞こえる。


 ふと、その歓声の中のエヴァを見る。

 こっちを見てペロッと、舌を出していた。


 嘘泣きだとぉ!


 お兄ちゃんエヴァの将来が少し不安です。



「だらしないわね」

「リットもうおしまいか?」

「剣じゃ勝てなかったが雪合戦じゃ俺の勝ちだな」

「リットくん私の魔法もなかなかでしょう」

「結果が全てですよ」

「リットはエヴァに弱いからなぁ」


「お兄ちゃんごめんね」



 寄ってたかって酷くない?


 はぁ、もう二度と雪合戦なんかするもんか……。



 雪に埋もれて身も心も冷たくなるリットだった。



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