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第15話 エッグベネディクトを作ろう

 

 冬が近づき肌寒い日が増えてきた。

 朝起きるのも、寒さで億劫になってしまう。


 今朝も肌寒く、毛布にくるまって寝ていた。はずだった。


 う〜ん。朝か、ん? 暖かいぞ。


 なぜかいつもは肌寒い朝が、今日は少し暖かかった。


 その理由はすぐに分かった。


 リットの胸元で何かがモゾモゾ動いている。

 なっ!? 何だ!?


 毛布を剥いで胸元を確かめる。


「う〜。むにゃむにゃ」


 そこには幸せそうな顔で寝ているエヴァが居た。


 何だエヴァか。ビックリしたぞ。


 時々エヴァはリットのベットに潜り込み、リットを驚かせているのだ。


 ビックリしたけど、可愛いから問題なし!


 エヴァの頰を指でつつく。


「むにゃむにゃ。お兄ちゃんのキノコさん大っきくて口に入らないよ〜」


 寝言っ!? 何その寝言!

 てか何の夢見てんの!?

 お兄ちゃんちょっと心配です!


 エヴァの若干危ない寝言を聞いて、ハラハラしてしまうリット。


 うん。可哀想だが早く起こそう。


「エヴァ朝だよ。起きて」


 うーん。と、猫のように伸びをして目をこするエヴァ。


「おはようエヴァ」


 そう言ってエヴァの髪を撫でつける。

 寝癖ついてるな。後でブラシで直してやろう。


「……おはよー。お兄ちゃん」


 と言って、ポスッと、リットの胸に頭を預けるエヴァ。


 ほわぁ〜! か、かわいい!

 エヴァは世界一可愛いなぁ。


 だがしかし、ちゃんと起きてもらわねば。


 ほらっ、早く起きて朝食を食べよう。


「うーん。ぐぅ」


 こらっ、狸寝入りしないの。


「……いじわる」


 そんなこと言わないで、お兄ちゃん傷ついちゃう。


 どうしたら起きてくれるんだい?



「ん〜。ちゅーして」



 上目使いでお願いしてくるエヴァ。


 ドッキーン! ぐはぁ! 僕のハートをいとも容易く撃ち抜くとは!


 僕の妹が世界で一番可愛い件について、うん。物語にするならこのタイトルで決まりだな。


「エヴァは甘えん坊だなぁ」


 デレッデレでエヴァを撫でる。


 お姫様の要望である。リットはエヴァの頰にチュッと唇を押し当てた。



「ひゃわぁ〜!」



 顔を赤くして飛び上がるエヴァ。手をブンブン振って興奮している。

 これは怒っているのか? 喜んでいるのか?


 ただ、起きてくれたのは確かだ。


 だが、またしてもエヴァが僕の胸に飛び込んできた。頭をグリグリ胸に押し当ててくる。


 顔を見るとニヤニヤしていた。



「お兄ちゃん、おかえしです」



 そう言って、僕の頬に唇を押し当てた。


 キョトンとするリット。


 エヴァは、イタズラが成功した時のように、満面の笑みを浮かべていた。


 うん。転生してよかった。僕はこの瞬間のために転生したに違いない。


 ニヤニヤしていると突然声をかけられた。


「朝から仲のいい兄妹だな」


「「!?」」


 エヴァと一緒になって驚くリット。


 部屋の扉を見るといつのまにか開いていた。

 そこには一人の女性がおり、リットとエヴァの事を苦笑いしながら見ていた。


「いつから居たんですかリエルさん……」


 そこに居たのは最近この宿に移って来たアルリエル。

 アルリエルは静かに、リット達に近づいていく。


「ついさっきから居たのだがな。リットがエヴァを襲っているあたりか?」


 誤解を招く言い方!


「仲がいいのはよろしいが、朝からそんなものを見せられた私はどうすればいいのだ?」


 困った顔でそんな事を言われた。


「なんかすいません」


「謝るな、逆に寂しくなる」


 そう言った後に、リエルが不意に顔を近づけてきた。


 近い近い! 良い匂い!?


「フシャーー!!」


 おや? 猫のモノマネかなエヴァ?


 後ろに下がるアルリエル。


「そう威嚇するなエヴァ。ふぅ、リット朝食を作ってくれないか? いつもと違うものが良いな」



「わかりました。すぐ支度しますね」



 アルリエルに催促され、リットは急ぎ目に厨房へと向かった。



 ▶︎▶︎



「おはよう。父さん母さん」


 厨房へと向かうとライオスとルーティが各々仕事をしていた。


「おはよう」

「リット朝食作ってちょうだいお腹が減ったわ」


 父さんに作って貰えば良いのに。まぁ、リエルさんの分もあるし、まとめて作るか。

 さぁ、何を作ろうか。


 朝食に合ったものか。

 うん。決まった。今日は、簡単なエッグベネディクトを作ろう。



「父さん手伝って」


「おう」



 作るメニューを決めてライオスに手伝いを頼む。


 さぁ、まずはポーチドエッグだな。



 半熟のポーチドエッグを最初に作ることにした。

 並行してソースを作ったり、パンを焼いたりしよう。



 ポーチドエッグは、まず鍋に湯を沸かし少量のお酢と塩をいれる。

 お酢を入れるのは卵白を早く固めるため。


 オタマで鍋を円を描くように混ぜ、渦を作る。

 卵を容器に割っていれる。

 それをそのまま湯の渦の真ん中へ。


 2分くらいで形ができるだろう。あとは好みの固さになるまで茹でる。


 網で取り出して少し水にさらす。

 出来上がり。


 レンジがあれば楽なんだけどなぁ。



 上の作業と並行してパンとベーコンを焼いておく。


 近くのパン屋で買った、イングリッシュマフィンっぽいパンをフライパンで焼いていく。


 ベーコンは食感を楽しめるようカリカリに焼く。

 出来たら皿に置いておこう。



 さて次は。


 味の決め手、オランデーズソース作り。


 卵黄、牛乳、レモン汁、溶かしたバター、塩胡椒、そしてマヨネーズを加える。


 マヨネーズは加護を使って作っている。じゃないと味が変になってしまう。

 手作りには限界があるのだ……。


 ソース作りのポイントは、溶かして熱を取ったバターを数回に分けて入れること。


 あと卵黄や牛乳は常温が好ましい。冷たいと、バターを入れた時に固まってしまう可能性がある。


 よく混ぜて、トロトロになったら出来上がり。



 さぁ、出来た物を盛り付けて行こうか。


 一番下にマフィンを置いて、その上にベーコン、さらにその上にポーチドエッグを乗せる。


 お好みでレタスやトマト、溶かしたチーズを間に挟むのもオッケー。


 最後にオランデーズソースをかける。

 うん綺麗だな。


 ソースの上から黒胡椒とパセリで香りと色をつけて、簡単エッグベネディクトの出来上がり。


 エヴァとアルリエルが二階から降りてきた。

 丁度いい。今出来たところなんだ。



「美しいな」

「キレー」


 二人が目を輝かせている。


 皆さん、席に着いて下さい。朝食ですよ。


 家族四人とプラスワンでテーブルを囲む。


「早く食べましょ」

「リットまたレシピ教えてくれ」


 はいはい。


 それじゃあ食べましょうか。



 さぁ、召し上がれ。



 ナイフを使い、ポーチドエッグを割って見る。

 中から半熟の卵が溢れ出す。ソースと絡み合い、色彩がとても綺麗で、食欲をそそる。



「……絶品だな。まるで天上の料理を食べているようだ」


 大袈裟だなリエルさんは。

 はははっ。


「ん〜!」


 エヴァはもぐもぐと咀嚼しながら、笑みを浮かべて食べている。


 美味しそうでよかった。


「リット朝食を別料金にしましょうか」


 ルーティが商売の顔になっている。


 おいっ! 朝はメニュー決まってるじゃないか。

 それに朝食は宿泊費に含まれてるだろ。

 わざわざ金を出すわけがないだろう。

 あと少し面倒だし。


「俺も手伝ってやるよ」


 父さ〜ん! ありがとう。


 家族で団欒しながら朝食を食べ、ゆったりした時間を過ごす。

 全員食べ終わった頃に評価してもらう。


「で、食べた感想は?」


「「「「おいしいっ!」」」」



 お粗末様です。



 その後、その日の営業も終わり。疲れた身体を癒すべく、床に就いた。




 ▶︎▶︎




 朝方、薄っすらと意識が覚醒する。


 うーん。あったかい。それに何だかいい匂いがするぞ。


 もぞもぞと身体を動かす。



「ひゃん!」



 ん? 何だ? またベットに潜り込んだんだなエヴァ。


 そう思い、頭を撫でるべく手を伸ばす。


 手が何かに触れた。

 プニプニ、何だこれ柔らかいな。

 初めての感触に夢中になるリット。

 何だかモチモチして弾力があるぞ。気持ちいいな。

 それにスベスベだ。


 リットは気持ちよくなって、その手触りの良い物を触り続ける。

 モミモミ。プニプニ。ツンツン。



「……あぁん」



 ん? 何だ今の艶っぽい声は。

 リットは慌てて布団を剥ぎ取る。


 ばさっ!


 そこに居たのはエヴァではなく、全裸のアルリエルだった。

 その肢体は、美しくしなやかで、つい見惚れてしまった。

 たわわに実った大きな二つの膨らみが目の毒だ。


「……リット、意外と大胆なんだな。ぽっ」


 ぽっ、じゃねぇーー!

 何してんだアンタ!

 てか今まで僕が揉んだりつついたりしてたのは……。


「私の胸だな」


 うわぁぁぁぁぁぁぁ! なんて事を僕はしてるんだぁ!

 そしてなぜ寝ぼけていた! 感触が思い出せん!


「気にするな、その……なかなか良かったぞ」


 頬を染めて言わんでください!


「そう言うリットも真っ赤だぞ」


 うぅ〜! どうしてこんな事を?


「昨日のエヴァが羨ましくてな、つい」


 つい。じゃありませんよ!

 ビックリしたんですからね。


「すまない」


 そう言って寂しそうな顔をするアルリエル。


 その顔は卑怯ですよ。まったく。


 仕方ありませんね。少しだけですよ。



「リットは優しいな」


 ギュッと僕を抱きしめるアルリエルさん。


 柔らかな肢体がリットを包み込む。


 やばいっ! 理性が!


 それにこの香りは!


 いい匂いが鼻腔をくすぐる。

 甘く官能的な香りが理性を刺激して、暴走してしまいそうだ。


 身体全部が心臓になったようだ。緊張して脈が速くなっている。


 アルリエルさんが僕を抱きしめる力が増した。


 二つの膨らみが押し付けられ、むにゅっと、形を変えた。


 何これ!? すごい!?

 あぁダメだ! 意識が飛びそう……!



「エヴァがキスしたのはこちら側だったな」


 アルリエルさんがそんな事を聞いてきた。


 えっ、はい。そうですね。


「なら反対の頬は私の物だな」


 は?


 リエルさんがそう言った瞬間、僕の頬に熱を帯びた何かが当たった。


 その時とても甘い匂いがして、僕はクラクラしてしまった。


 リエルさん、前世で童貞だった僕には刺激が強すぎます。


 頭が真っ白になり、その後のことはよく覚えていない。


 ただ一つ覚えていることは、リエルさんの顔が紅くなっていて、その顔がとても可愛らしかったという事だけだ。



「……顔が赤いぞリット」



 ……今の貴女に言われたくはありませんよ。



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