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第10話 餃子を作ろう

 

 黒猫亭では毎日、日替わり定食を出している。


 これは父さんと僕の気分によって、何を作るかが決まってくる。


 今回は、前日に僕が作ることが決まっていたので、少し無茶をすることにした。


 説明は前日に済ませ、仕込みも万全? だ。


「今日は餃子を作ります」


 そう、今日は餃子を作るのだ。

 初めて黒猫亭で作るので、少し心配。  

 昨日家族には作り方を教えながら、試食もしてもらった。


 味は好評で、女性にはどうかと思ったが、うちは九割くらいが男性客なので、あまり気にするなとのこと。

 うちの女性陣は気に入ったようだが。


 まさか前日にプレゼンするとは思わなかったが、父さんはすぐ対応してくれたので心強い。

 エヴァと母さんも、餃子の皮作りを手伝ってくれて、とても助かった。



 餃子のタネは今から作る。

 具材は、豚挽肉(世界に流通していないので能力加工)、タマネギ、ニラ、タケノコ、エリンギ、卵、ニンニクなど。

 タケノコがあると、シャキシャキとした食感が楽しめる。

 エリンギは、先日エヴァと一緒に取ってきた物だ。


 調味料に、能力で加工した醤油やごま油などを入れていく。

 仕込んであった鶏ガラスープも投入。


 それを、父さんと一緒にこねていく。


 あっ、父さん塩胡椒も忘れずに。


「安心しろ抜かりない」


 頼もしい。


 それにしても作りすぎか?


 できあがったタネの量を見て少し反省。

 余ったらスープにでも入れよう。


 よし、できたタネを、皮で包んでいこう。


 今のうちにタネを皮で包んでおけば、この世界には魔力で稼働する冷蔵庫や冷凍庫があるので、冷凍して、あとは調理する時に出すだけである。


「わたしもやるー」


 エヴァが手を挙げてこちらを見ていた。


 ん? エヴァもやりたいのか? 手を洗っておいで。

 エヴァと母さんも加わり四人で皮に包んでいく。


「難しいわね……」


「むぅ〜……」


 エヴァと母さんが苦戦している。初めてやるし難しいのは当たり前だ。

 僕は二人にレクチャーする事にした。


 ほら、こうやってヒダを作るんだ。


 二人が作ったものは少し不格好だが、そこはご愛嬌だろう。

 愛情が最高のスパイスってね。


「よし。出来た。あとは冷凍してと」


 出来たものを冷凍しようとすると、母さんが詰め寄ってきて、僕に催促を始めた。


 ……近い。


「リット母さん頑張ったわ」


「うん。そうだね」


「だからご褒美ちょうだい」


 欲に忠実な母だ。

 昨日も食べたろうに。

 母は細身の体だがよく食べる。まったくどこに入っているのだか。


 母さんだけに作ると不満が出るので(特にエヴァ)、家族の分の餃子を焼いていく。



 フライパンに油を入れ、それから餃子を入れていく。

 打ち粉をしているが、あまり落とさないようにする。羽根を作りたい。

 羽をつけることが出来れば、僕も食べる人もテンションが上がるのだ。


 火をつけて、少し焼き目がつくまで待つ。


 ジュ〜〜…………。


 焼き目がついたら、鶏ガラスープを回しながら投入。お湯でもいいが、どうせなら味に奥行きがある方が良い。


 フタをして強火で焼いていく。


 ジュワワワァ〜。


 水気が飛んだ頃にフタをとる。


 ここでさらに油を投入する。


 羽根が黄金色になったら火を止める。


 後は水で濡らした布巾の上にフライパンを乗せれば餃子が剥ぎやすくなる。


 ジュッ!


 よし。ひっくり返そう。


 皿を餃子に押し付けてそのままひっくり返す。

 完成だ。


 羽根が綺麗だ。

 外カリカリで中ジューシー。


 黒猫亭特製餃子、さぁ、召し上がれ。


「「「いただきます」」」


 三人は箸が使えないので、フォークに刺して食べ始めた。

 箸の布教を始めようかと最近真面目に考えている。父さんは教えたら割と使いそうだ。主に菜箸を料理に。


「外がカリッとして中身がジュワトロだな、タケノコの食感がまた良い。噛んでいて飽きない」


 実に料理人らしい感想だ。でもそれ試作の時も言ってたからね。あとジュワトロは初めて聞いた。


「ほんと飽きないわぁ。あーお酒飲みたい」


 わからないでもないけど、営業始まるんで控えてください。


「この中にお兄ちゃんのキノコが、……ごくり」


 それもしかして意味分かって言ってるの? そうなら再教育が必要になるよ? 母さん相談があります。


 三人から色々と感想をもらい、今後に活かせそうな部分は活かしていきたいと思った。


「エヴァは、他にないかな?」


 そう言って近づくと。


「来ないで!」


 へっ!?

 なんで!? お兄ちゃんのこと嫌いになったのかい!?


「違うよ! 大好き! でも、今口がにんにくで……」


 大好き大好き大好き、頭の中でその言葉が反響する。

 リット、感激。


「エヴァ、僕は気にしないよ。たとえ君の口がにんにく臭くたって」(キラッ)


「いやぁー!」


 なんで嫌がるの、お兄ちゃん気にしないよ!?


「いや、言い方が悪いわよ……」


「もはや、口が臭いことは認める言い方だもんな」


 失敗した。どうやらデリカシーに欠けるらしい。反省しよう。


「……ごめんエヴァ」


 はぁ、これから女性客も増えるかもしれないし、にんにく抜きバージョンも考えますか。


 一つ賢くなったリット少年でした。















 ――昼の営業にて。


「うまいっ!」

「天才かリット!」

「旦那! 嫁に来てくれ!」


 絶賛の嵐。嫁にはいかん。

 なんだ? エヴァの顔が険しいような?


「……お兄ちゃんはわたしのだもん」


 何かブツブツ言っているが小さい声で聞き取れなかった。


 餃子は、お客さんや宿泊客にも概ね好評だった。


 週一で良いから出して欲しいと言われたが、仕込みが大変なのだ。月一でお願いしたい。




「お兄ちゃんわたしギョーザ好きだよ」


 臭うけど、とエヴァ。


「あ、リット私も。また作ってね」


 母さんは食い意地が張っているだけだ。



 やれやれ、家族の分くらいなら、毎日でも喜んで。



エヴァのイメージはちょうど今アニメでやってる学園モノのペル◯アちゃんかなぁ。容姿はイメージピッタリ、性格違うけど。

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