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第1話 炎と黒煙の中で

初投稿。

拙いと思いますが、よろしくお願いします。

 

 っ! 熱い!


 僕は異様な暑さを感じ、飛び起きた。


 しがない料理店で働いている僕はスタッフルームに置いてあるソファーで眠っていたのだが、熱気と息苦しさで目を覚ましてしまった。


 周囲を見回すと、部屋の中では四方を炎が覆っていた。


 寝ぼけているのかと頬をつねったが痛みが無慈悲な現実を突き付ける。


 ……痛い。


 炎と黒煙が迫る。

 もう逃げ場はないだろう……。

 不思議と恐怖はなかった。

 いや、まだ現実を疑っているだけかもしれない。



 今は深夜だろうか、就寝してからどれぐらい時間が経ったかわからないが多分そうだろう。

 時計は無い。現在進行形で燃えている。


 スマホ? あー充電切れてるな、寝る前に充電しとくんだった。仕事で疲れて意識を失うように寝たからな。


 なぜ今、部屋が炎に包まれているのか。それは多分誰かが放火をしたのだろう。


 ん? どうしてわかるかって?

 そりゃ生きてりゃ恨みを買うこともある。


 突然だが僕には料理の才能があった。子供の頃からその片鱗はあり、周りにいた両親や兄弟、友人たちは僕が作る料理を美味しいと褒めてくれていた。


 自分の料理を食べて喜んでいる人を見ることが好きだった。


 料理で人を幸せにすることを生き甲斐にしてきた僕は、皮肉にも人の悪意に鈍感だった。


 とある料理店に就職した僕は、早々にオーナーと料理長に気に入られた。

 そして数年のうちに新作メニューを量産し、僕の料理を求めるお客様が来てくれるまでになった。


 それを面白く思わないのが副料理長および先輩シェフ。


 僕の作る料理に文句を言われるようになった。最初はアドバイスなのだろうと思っていたが次第にエスカレート、とうとう料理に手を出して来るようになった。仕事を始めた頃はよくあったが、年が経つにつれてなくなっていったはずだった。


 なぜ今更?


 理由がわかったのは時間が大分経ってからだった。

 あからさまに嫌がらせが始まり、料理に異物を入れられるという事件があった。


 大激怒。激おこ。

 ぷんぷんだ。


 そこで初めて気づいた。

 今までのは、全部悪意の元に行われていたのだと。


 その事件をきっかけに数人が退職、料理人として致命的な罪を負った。


 彼等はもう料理を作ること、食べてもらえることに喜びを感じられないだろう。


 それが最近のこと、最後に見た彼等の憎悪のこもった目は忘れられない。


 その後、今度は店に対する嫌がらせが始まり、警察に届けを出すか経過を見守るかの選択中であったのだ。


 今日も、従業員の一人が店の周りで見かけたといっていた。


 僕としてはお客様に迷惑をかけなければいいとおもっていたのだが……。

 甘かったようだ。




 問題を先送りにした結果、この状況に繋がってしまったのだろう――




 部屋の中が炎と黒煙で満たされていく。一酸化炭素が充満するのも時間の問題。

 調理場のガスに引火してドカンもありえる。


 寝ていたままのほうが苦しまずに済んだかもしれない。


 僕、童貞のまま死ぬのか? 死ぬ前に、愛する人に捧げたかった……。


 そう思った瞬間、意識が遠のいた。

 あぁ、一酸化炭素が満ちるのが先だったか。


 遠のく意識の中、もう料理が作れないのかと、憎しみや怒りよりも、悲しみの感情が心を塗りつぶした。


 ふぅ、生まれ変わったら綺麗な嫁さんもらって、料理屋でも営みながら、平和に暮らしたいな――



































 ――パチパチっと、まばたきをする。


 ん? 生きてる?


 周りを見ると何も無い。本当に何も無い。

 僕は真っ白な空間にポツンと座っていた。


「おー起きたようじゃな」


 突然どこからともなく声が聞こえて周りを見る。

 ……誰もいない。


「ここじゃよ」

「うわっ!」


 背後から声をかけられ飛び上がる。


「すまんすまん。びっくりさせたかの」


 そこには白い髭を長く伸ばした老人がいた。それこそザ・神みたいな老人がいた。


 ここってまさか死後の世界? だとしたらやっぱり僕は焼け死んだのか、こんがりとウェルダンに……。

 短い人生だった。もっと僕の料理で人を笑顔にしたかった。

 天を仰ぐ。空はないが、むしろここが天か。


「これこれ、そう悲観するでない」


 あっ、心読まれた。


「ここは神界、死後の世界ではないのぅ」


「……深海?」


「神の住む世界で、神界じゃ。ちなみに儂はまぁあれじゃ、神ってやつ。よろしく」


 あっ、はい。分かってました現実逃避です。すいません。


「さて、なぜここに君が居るかなのじゃが」


 はい。すごく気になります。普通は神界経由で死後の世界に行くのでしょうか?それとも知らないうちに大罪を犯していて神界送りになったとか?


「あー違う違う。どっちもハズレ」


 では何故?


「いくつか理由はあるが、儂は君の料理を食べたことがあるのじゃ」


「!」


 かっ神様が僕の料理を! そ、それはつまり僕の料理があまりにも口に合わなくて神様自ら僕に裁きを与えるためですかっ!


「いやいや違うから安心しなさい。美味しかったよ。とてもね」


「あっ、ありがとうございます!」


 神様が僕の料理を「美味しかった」だって!? 何だろうこの気持ちは、死んだはずなのに体が熱い心が温かい。涙があふれて止まらない。


 死んだ後で満たされてしまった。我が人生に一片の悔いなし!


 なるほど、神様は最後に僕の心を満たしてくれるためにここに呼んでくれたんだな。何と慈悲深く愛があふれる方なのだろう。

 はぁ、生きててよかった。


 あ、もう死んでたか。


「ん? まぁそれもここに呼んだ理由じゃが、他にもあるんじゃよ」


 これ以上があるんですか神様ぁ! 僕これ以上のことは死んじゃいますよ!

 あっ、もう死んでました。


「喜んでくれて何よりじゃな、早速本題に入ろう。君、転生する気はないかね」




 ……えっ? なんですと?




見て下さった方、ありがとうございます。


少しの間転生前の話になりますがちょっとした設定の説明などです。

読み飛ばしてもらって、気になれば見る感じで構いません。


では、これからよろしくお願いします。

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