人の思う輝きとはなんだ?欲しいもの?届かないもの?私の思う輝きは・・・
私は、昔からなにかに秀でている物がなかった。
そこそこに勉強ができ、そこそこに運動ができ
人にもそこそこの評価を得ているそんな人間。
でも私は、そんな自分が嫌いだった。
ただ人に流されることを受け入れて自分を偽っているようだ。
そんな私の楽しみは、テレビを観ることだった。
ジャンルは多種に及んでいる。ただ一つ共通していること
それは・・・輝いている。
芸能人でもアニメの中の登場キャラでも感情というものに私は動かされた。
これは、人から自分を偽り続けた私が、ただ一つだけ追い続けた
「輝き」の物語
キーンコーンカーンコーン・・・
今日も授業が終わる。
私は、どこの部にも所属していない。正直興味のある部活動がない
高校の選びは学費の安い国立と決めていたので、入れた時点で目的は達成している。
帰ろうとするが、先生に呼び止められる。
まただ、どうせこの前プリントを届けるのを手伝ったから
今度も手伝ってくれると思ったのだろう。
しかし断ることはしない、こんな小さなことで先生の評価を落としたくないからだ。
使いやすい生徒などと思われるのは、癪だが、特に予定もない。
「こちらの本を・・・までですね?」
「うん。よろしく頼むよ」「わかりました。」
行き先は、靴置き場の反対側だった・・・
頼まれたものを届け終わり、靴を履き替える。
私もこれから塾だ。浮いた話や遊び話を入学して3カ月まったく聞かない。
高校に入学したばかりだというのに今から卒業まで大学の
入学を考えて生きていくのは、気が滅入る話だ。
塾が終わった。すでに時間は22時を回っている。
慣れたものだ、それでもあの空気に長く居たいと思ったことはない。
家に帰る。母親が出迎えてくれて、居間にいけば父がいる。
これからご飯を作ってくれるという母親・・・
いつものことだが、ちょっぴり申し訳ない気持ちにもなる。
しかし自分で作る気などは、起きなかった。
シャワーを浴びたらもう23時だ。
ここから私の楽しみは始まる。
録画していたものを一つ一つ観ていくのだ。
観れる時間の方が圧倒的に少ないので、たまる一方である。
それでもテレビを見ながら勉強をするこの時間は、かけがえのないものであった。
人の声を聴きながら勉強をする。
時刻は1時を回ろうとしていた。
これ以上は、一日の生活の中での時間を超えてしまう。
お世辞にも私は、早起きが得意ではないのだ。
電気を消して、布団に入る。
「明日良いことありますように」願い事のように呟いて私は目を閉じた。
彼女は眠りに落ちる。
光が目の前で大きくなった。
私の前で、光の玉が浮かんでいる。
これは夢だ。テレビの観過ぎかな?
私は、苦笑した。それでも好奇心は抑えられない
光の玉へと手を伸ばす。
触れた・・・しかし特に何も起こらない。
拍子抜けだ。
夢なら少しは気の利いた演出があってもいいのではないか?
光の玉を覗いてみる。なにも映らない。他に何もない。
この夢の中で、私と手の中にある光だけ。
ただ光を放つことしかしない玉に、少しイライラしてきた。
結局この夢は、何なんだろう?
ずっと続くなら、早く朝になって私を起こしてほしい。
もし寝覚めが悪かったら、この夢を恨もう。
私は、光に恨み言を言いながら、見つめていた。
時間がわからない。けれどそんなに時間は経っていない気がする。
もう一度光を覗いてみる。相変わらず光は明かりを灯すだけだ。
「この光・・・なにも変わらない。そこにあるだけの光」
私は、自分の夢なのもあり、まるで光が私を写しているように思えてきた。
今あることを受け入れている。そんな自分。
不満だけを心に並べて、変わることをしない自分。
もし願ったら・・・変わるのだろうか?私は・・・変われる?
私は、どうせならと光を包んだ。そして願う。
「一つでいい、たった一つ、私を好きになれる。私になりたい!」
光の玉が、大きく光った気がした。まるで黒い世界を広げるように
「・・・・・んぅ」
少しづつ瞼が開く。カーテン越しの光が眩しく感じた。
「昨日の夢・・・」
それは、先ほどまで見ていた夢。
目が覚める前に大きく輝いた光の玉。
まるで願いを叶えてくれたと錯覚しそうだ。
制服に着替え、髪を整える。
扉を開けると台所の音が聞こえた。
私はまずお手洗いで、早々に支度をするのだった。
「おはよう、お父さん、お母さん」
両親は、私より早起きだ。
テレビでは、相変わらず経済と政治のニュースばかりが並んでいる。
たまにあるのは、殺人や火災の事件。
もう少し楽しい話題は、ないものか・・・
朝からこれでは、悲しくもなる。
昨日夢の中とはいえ、とても恥ずかしいことを言ってしまった。
でもいい機会だとも思った。
別に私は、生活で不安などはない。
誇れる両親、評判のいい学校。
これ以上を望んだら、神様に怒られてしまうよ・・・
でもこの想いは、誰もが一度は持つものだと思う。
今の自分との決別。想いは、人それぞれ
きっと私は欲張りだ。けれどたった一度しかない人生なら
「輝きたい・・・」私は小さく呟いた。
登校する時間だ。両親に挨拶を交わし、私は通学路を歩き始めた。
胸の中には、自分のしたいことの一つが、渦巻いていた。
簡単にはできないかもしれない。それでもやらない事には始まらないから
電車の中で揺れる。私は、好きな音楽を流しながら駅までの時間を過ごす。
学校は駅から5分程度だ。朝の通勤時間としては20分も掛からないだろう。
今日のように考え事をしていると、一瞬のように感じる。
教室に着けば、表向きは、またいつもの私だ。なので、校舎を回ることにした。
色々な部活動が朝の練習をしている。
この学校は、特にどこかの部が優秀だとか、そういうことはない。
でもみんな真面目にしている。勉強をしているときは、ただ静かに
部活動をしているときは、とても楽しそうだった。
さて・・・朝から考えていたこと。
それは、吹奏楽に用があった。
近づくにつれて音は大きくなる。それぞれが練習をしているからだろう
まさに不協和音と呼べる場所になっていた。
その中で目当ての人間を目で捜してみる。
「・・・・・いた。」
その娘は真剣にトランペットを吹いていた。
邪魔するのも悪いので、少し待ってみる・・・・・
どうやら一度区切りがついたらしい、私は彼女に話しかけることにした。
「夢乃」それが彼女の名前 林夢乃 私と同じ中学出身。
中学時代は親交もあった、今でもどこかで会えば会話をする仲だ。
彼女は、あれ?と首をかしげる。まぁそうだろう。
朝の時間になぜ私が、ここにいるのかと思われても不思議ではない。
「えりか?」私の名前が呼ばれた。今更だが、私の名前は
大星えりかと言う。平仮名になぜと思ったこともあるが、今はこの名前で落ち着いている。
「一日ぶりくらいかな?」
「それ昨日だね。」
ふたりは笑いあう。
夢乃とは長い付き合いだ。本音を言い合えるそんな仲
「珍しいね。というか初めて?えりかが見学に来るなんて」
「ちょっと用があってね。少し話があるんだけど、今日のお昼一緒に食べない?」
そう告げると彼女は、考えることなく承諾してくれた。
「うん。それじゃあお昼に食堂で待ち合わせする?」
私もそれに頷いた。いつまでも朝の練習で会話をしていては迷惑だろう。
約束をして自分の教室へと足を運ぶのだった。
教室に戻る間、生徒先生と挨拶を交わす。
頭の中では、今後したいこと、それは「音楽である」
何かを残したいと思った。それは思い出なのか・・・?
しかし・・・今の私には、そんな時間がない。
学校が終われば、塾が一週間の中で五日
テスト前なら休みなしと万全の学園生活態勢だ。
話をするだけならタダにしても夢乃も吹奏楽がある。
もし夢乃が吹奏楽一つでいきたいと言ったら、早くも私の願いは砕け散る。
だけどこれは私のお願いだ。夢乃に無理はさせたくない。
私は、少しクールダウンのために息を吐きだした。
行き当たりばったりだな・・・分かってはいたけど
もし快く承諾してくれたとしても、その先は、きっと困難だろう。
教室の前にたどり着いた。このドアを開けば、いつもの私だ。
スイッチを入れ替えるように、私は扉を開ける。
すでに来ている生徒に挨拶をされた。
私も挨拶を返す。心なしか、挨拶が明るくなった気がした。
久しく忘れていた気持ちだ。
中学校のいよいよ後半になると、受験がカウントダウンのように迫ってきた。
高校になっても気持ちは抜けずに、次のテストの事ばかり、考えていた。
それは当たり前のことなのだけど、楽しいかと言われると楽しくない。
毎回テストで満点を獲れる。そんな人間にしても、それ相応の努力をしている。
その努力が、たった一度のテストで自分の評価を変えるのだ。
今の実力を試してみたい。下から上がる人間は、もしかしたら楽しいかもしれない
けれど一度上まで登り切ってしまうと、その上はないのだ。
やっぱり程々がいいなと思うのだった。
しかし、今の私は、楽しみを持っていた。
お昼の約束である。こうして目的を持って彼女と話したのは
ずいぶん久々のことに感じた。
私から見ればもう昔・・・まだ夢乃と他の友達と遊んでいた頃が懐かしい。
みんな3年の夏が終われば、いよいよ受験に集中して
遊ぶことは、極端に少なくなった。
学校が分かれると、いよいよ会うことが無くなる。
正確には、会おうと思えば会えるのだが、時間がないのだ。
4時限目の授業が終わる。
生徒たちに挨拶を交わしながら、私は食堂へと足を運んだ。
・・・・・・・・・・・いた。
この学校の食堂は大きいと思う。値段も安いので学生に大人気だ。
私も、基本は食堂を利用している。
夢乃に近づくと彼女も、こちらに気づいた。
どうやら考えることは同じらしい。
彼女は、席を確保してくれていた。私が、来てもそうしていただろう。
「ありがとー、先に頼んでこよっか?」
「そうだね。それじゃあ」
じゃんけん。席を取ってもらったのだから、代わりに行ってもいいのだが
昔から、慣れたこの方法を使う。
食堂の中で、女二人が、じゃんけんをしているこの光景は、シュールだ。
・・・・・
そして私の勝ち、だけどじゃんけんだから申し訳ないとは思わない。
私は笑顔で、Aセットね!と料金を渡すのだった。
どうやら料理が、できたみたいだ。私も途中まで行き、お盆を受け取る。
そして二人揃って席へと座った。
お昼でも休憩は、30分しかない。ご飯を食べながら、私はさっそく切り出した。
「夢乃さ・・・色々な楽器使えたよね?」
「ん・・・まぁそれなりに」
「私さ・・・音楽をしてみたい!」
「ほぇ・・・え?」
夢乃は面食らっているようだった。
「音楽と改めて言うってことは、吹奏楽に入るわけじゃない?」
「じゃないね」
・・・・・・・・・・
彼女は期待していたかもしれない、私が吹奏楽部に入ることを
「ええええ!?><戻ってくるんじゃないの?」
私は、吹奏楽部だった。中学の時に・・・でも辞めてしまったのだ。
数十人で奏でる楽曲。私には、それが合わなかった。
「音楽は好きだったけどさ、どうも合わなくて・・・」
私のやりたいことは、聖歌でも、合唱でも吹奏楽でもない。
みんなが、オンリーワンのチームを作りたい。
好きなように演奏して、一つの音楽にしたい。
私の思いを、夢乃に伝えた。
「んー・・・まぁできなくもない」
意外とあっさりしてた。
「私は、吹奏楽以外は、特にしていないからね。
成績を落とさない程度に勉強さえすれば、音楽していいし!」
夢乃の両親は、とても厳しい。
高校性で、音楽をできない可能性もあった。
それを彼女は、自分の学力を証明して、親に音楽を続けてもいいと言わせたのだ。
そして、逆に彼女の自主性をとても喜ぶ両親でもあった。
幼いころから音楽が好きだった夢乃は、親から欲しい楽器を与えられた。
初めて家に行ったときに、とても大きなピアノをみて、私は驚いたものだ。
しかしもう高校生。家にある楽器を趣味で演奏ならいいが、時間の取られることを
両親としては、避けたい思いもあるのだろう。
しかしこんな簡単に承諾してもらえ、最初は実感が湧かなかったが、
だんだんと嬉しくなってきた。
やばい・・・今、私の顔、絶対変だ・・・顔を手で隠して笑った。
「夢乃ありがとう・・・」
嬉しい。高校の入試に受かったとき、母は泣いて喜び、父も喜んでいた。
その時、私は嬉しかった。それは両親の期待を裏切らないで済んだこと
勉強は自分のためだ。でも私が、受験に落ちれば、周りの人に迷惑をかける。
私は、合格と分かった時、涙は出なかった。嬉しかったけど
それ以上に、安堵の思いが強かったのだ。
夢乃は、大切な友達だ。そんなことはわかっている。
それでも、いきなりこんなことを言われて、快い返事をしてくれるか?
考えても仕方のないことだ。なのに私は、私は、自分を夢乃の立場で考えてしまった。
「ありがとう・・・」
涙が出てきた。それは夢乃に対する感謝。ただひたすらに感謝。
それだけで涙が出たのだと信じたい。
もう一つの思いは、こんな考えしかできなくなっていた自分に対する悔しさだった。
せめて夢乃には、こんな考えをしたくなかった。するなんて思わなかった。
私は、心の中で叫び、夢乃に謝った。
「泣いてる!?そこまで嬉しいか!?」
泣くとは思わなかったのだろう。夢乃は少し困惑しながらも
明るい声で励ましてくれた。
「ふふ・・・とても嬉しい」
心からの言葉だ。夢乃にここまで言わせてしまった。
もう引き下がれない。私も、やることをやらないと!
食器を片付けて、お互いに廊下へと戻る。
「それじゃあ、連絡するね!」
「うん!待ってる!あ、そうだ。どうせなら明日もご飯食べよ?」
夢乃からの提案。嬉しい。
私も、明日までに、両親と話し合う必要がある。
「いいね!また連絡するね!」
私達は、クラスが違うので入る場所は、違う。
それでも、変わらない友人と話、とても楽しかった。
昼の授業そして塾。頑張ろう。私の心は、また少し暖かくなった気がした。
読んでいただき誠にありがとうございます!
基本的に、ストックが溜まったらここに張り付けていくといった感じです。
なので区切りの場所が少しおかしいかもしれませんが、お許しください。
普段は、「ユメ詩とふじモーのお話」というブログでストーリーを書いております。
書きたいことを書いているので、お見苦しい点もあると思いますが、良ければ指摘、感想を頂けると幸いです。