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白兎の従者~一文字で大きく違う異世界転移~  作者: ゆうき
第1章 それはルイスキャロルのような異世界転移
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間話~勇者を待つ少女~

少女はこの時を待っていた。


青く輝く強大な魔法陣の前で片膝で座し、胸の前で手を組む、神に祈りを捧げる少女。


この時のために、数日にわたる清めの儀式と神への祈りを捧げた。


少女が持つ魔力の全てを神に、魔法陣に捧げた。


捧げたのは少女だけではない、他にもたくさんの人々が魔力と祈りを捧げて初めて成しえる儀式。


それは異界の地より魔王を討伐せし者を呼ぶ、神の奇跡だ。





「聖女さま、召喚は成功したのでしょうか?」


聖女と呼ばれた少女は魔力を大量に消費した疲れからか、その表情には陰りが見える。


ただ、その瞳にはやり遂げた者だけが見せる輝きを放っていた。


「勇者さまを召喚せし創世の女神さまの御業は成功しました。黄金の、女神さまの神力の輝きがその証です」


勇者召喚の秘術は女神教に伝わる聖書や文献、伝承に記されたものだ。


それに沿って行われた今回の儀式も成功した。


はずであった。


だが、勇者はこの場に現れなかった。


この世界では、魔王を討伐できる存在が勇者と言われている。


世に知らされていないが、魔王が現れたため、勇者が今必要となったのだ。


そのための儀式であったが、成功したはずの召喚で勇者が現れなかったのである。


聖女に話し掛けた者、女神教の教皇である彼は失敗したのではないか?と思い聖女に声を掛けたのだ。


そもそもな話、魔王を討伐するのに異界より勇者を召喚する必要はない。


初代勇者である者こそ召喚によって女神に遣わされたが、それ以降の4人の勇者はこの世界の者だ。


勇者として認められる方法は一つ。


真実の神プルーフに勇者のクラスと神の加護を持つと承認される事。


これさえ確認されれば、その者が勇者となる。


さらに言えば勇者にしか魔王を倒せない訳ではない。


2代目の勇者は当時存在した小国の王子だったと言われている。


彼は神の加護は持っていたが、クラスは剣聖であった。


そして魔王を国の騎士団と共に討ち、初めて勇者のクラスを得たのである。


それ以降の勇者たちは全て女神教が見出した者たちである。


世間では2代目勇者も女神教が見出した勇者と認識されているが。


その3代目以後の勇者たちは神殿に見出された勇者候補として、白き獣と契約させ、送り出している。


これは初代勇者が白い竜と契約し、従者としていた事から来ている。


白い獣は神の使い、聖獣と言われているのは、勇者と契約する事より、神力に触れ、その存在を聖獣に昇華するからだ。


全ての白い獣が聖獣という訳ではないが、世の中での認識は全て聖獣と思われている。


なので女神教が扱う獣、伝書鳩、馬と言ったものは全て白い毛並みの獣で揃えていた。


もちろん今回の召喚の儀式に合わせ白い獣を用意して、現れた勇者と契約させる予定であった。


それらも無駄になってしまったのだが。


教皇である彼は今回の失敗、聖女は認めていないが、を心の中では喜んでいた。


彼は勇者召喚に反対、表向きは聖女に賛同していたが、今回も神殿が見出すべきと思っていたのだ。


自身が見出した勇者候補が魔王を討伐し、勇者を導いた聖者となる。


それが彼の野望なのだから。




「魔王に妨害されたのかもしれません。勇者さまはどこか別の場所に現れているはずです」


聖女と呼ばれる少女テシアは、両親から創世の女神の名を一部頂き期待された少女である。


女神教の敬虔な信者であったテシアの両親の期待に応えたのか、彼女は聖女のクラスと創世神の加護の称号得て、聖女となった。


テシアは聖女に相応しい信仰心と教養、容姿を持っている。


白銀に輝く髪に、人々に安らぎを与える微笑み、聖書見ずに聖言を諳んじる記憶力、信者の相談にも親身に答える心構え、そのすべてが相応しかった。


初代勇者を支えた少女、初代聖女の再来と人々は呼んだ。


その聖女であるテシアは高い信仰心により、初代聖女が伝えた教えを忠実に守る原理主義である。


だからだろう、彼女は此度の勇者には異界より召喚された者を望んだ。


それは物心付く前から神殿で神に祈りを、その身の全てを捧げた少女が初めて持った想いなのかもしれない。


「皆に願います。どうか、勇者さまを探して下さい。」


テシアは女神を信じている。


祈りを、願いを聞き入れてくれた事を。


だが長き年月求めて止まなかった勇者が目の前にいない。


この時初めて、少女は自身の想いを口にしたのだ。


「解りました、聖女さま。必ず勇者さまを見け出し、あなたの前にお連れします」


その姿に心打たれた神官たちが進み出て、幼少の頃から見守り続けた少女の願いに答えた。


「感謝いたします」


「聖女さまの仰せのままに。ですが、勇者さまがどのような方なのか解りませんよ?」


ただし、自らの野望を秘めた教皇だけは答えなかった。


「そうですね、デグネ教皇。ですが女神さまが遣わされた勇者さまならば」








「必ず白き獣を連れているはずです」

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