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白兎の従者~一文字で大きく違う異世界転移~  作者: ゆうき
第5章 やっぱり甘くない異世界の町
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5-14

兎とリースが行方不明になって既に4時間、そろそろ辺りが暗くなって夜を迎えようとしている。


最後の目撃者は中央広場で市を出していた人物で、兎を肩車でもするように歩いているローブ姿の子供が露店の前を通ったのを見たそうだ。


それ以降の目撃者は居らず、もしかしたら居るかもしれないが通行人とかだろうし現時点では見つかっていない。


もうほとんど人通りもなく、飲食店ぐらいしか店も開いていないのでこれ以上の捜索となれば行き当たりばったりになってしまうだろう。


時間さえ掛けれるのなら色々と探しようはあるんだろうが、人攫いなどの犯罪に巻き込まれていたとしたら即急に見つけないと二人の安否が心配だ。


だからと言って焦っても仕方がないし、情報収集を兼ねて飲食店へと向かった。





「すみません、あれから見かけませんでしたか?」


「あー、あれから見かけてませんね」


「そうですか。すみません、お忙しい時間帯に」


「いえいえ。ちょっと待ってくださいね」


「はい」


1時間ほど前にも聞き込みしてみたがその時と状況は変わらずで、やっぱりここにも来ていないようだ。


俺とキロロは焦りがそろそろ限界が超えて情緒不安定になりそうで、ほぼ口を利くこともなくなっていた。


先ほどから思いつめた表情をしていたキロロは何か決心でもついたのか、顔をこちらに向けて話しかけてきた。


また何か嫌な事でも言うのかと身構えたのは仕方がないと思う。


「その、すみませんでした」


「いきなり謝られても意味がわからん」


「いえ、その、ルナさんへの指名依頼の件です。私が斡旋しなければこのような事には」


「関係ないかもしれないしあるかもしれないな、たしかに」


「はい。それでなくとも目立つ方です、ルナさんは。でもそれ以上に、必要以上に目立つ事をさせていたのは事実です」


「そうだな」


「それと神殿の事もです。あなた方が難色を示しているのに当たり前だと押し付けていました。本来ギルド員は自由のはず。でも、それを」


どんな心境の変化があったのか、それともあれほど頑なだったのは自身の所為で行方不明になったという焦りからと理解したのか、急に詫びを入れてきた。


いきなり謝れても意味が本当にわからん。


それに謝られたからとあの二人が見つかる訳でもないし、気が収まらないのも事実。


かといってキロロが完全に悪いとは思わない。


どっちかというときっかけの一部でしかないと思う。


なんというか、キロロは融通が利かないすごく真面目なやつなんだろう。


だからこそ優秀なんだろうがその所為で視野が狭くなるとかそういう弊害もあるんだろうな。


貴族と思われるけどこんな零細ギルドの受付嬢をしているのはその辺に関係あるかもしれない。


「はぁ。もう分かったよ。詫びは受け取るから俺に力を貸してくれ」


「ありがとうございます」


「あんたも口が悪いけど言葉使いは丁寧なのはすごいな」


「どういう意味ですか?」


「い、いや、ちょっと言っちまっただけだ。失言ってやつだよ」


「それは思ってたという事です。はぁ、あなたと話していると疲れますね。ルナさんはよくあなたとチームなんて組んでますね、信じられません」


「やっぱあんた口悪いよ!」


「ふふ」


「なんだ笑えるんだな。いつも不機嫌そうだから笑えないのかと思ったぜ」


「あなたにだけです。他の方には普通に接しています」


「確かにそうだな。で、キロロ」


「女性を呼び捨てですか、失礼な男ですね」


「あんたも言うのかよ!いや、もう今更じゃないか、だからキロロって呼ばせてもらう。それよりもだ、知恵を貸してくれ」


「確かに今更ですね。ところで知恵ですか?」


「ああ」


うん、慣れあうつもりはないが一緒に兎とリースを探してくれているんだから、こっちも攻撃的になってる場合じゃない。


それよりも早く見つける為にできる事を協力してやった方がいいに決まってる。


何度か話した感じだと、キロロは俺よりも頭の回転が速そうだ。


だから俺が情報を渡して考えてもらう、という方法をとりたいのだ。


まずは、と思った辺りで店員が戻ってきた。


「お待たせしました。お客さんに聞いてきましたが見た人はいましたけど聞いていた時間よりも前ですね」


「わざわざありがとうございます」


「いえいえ。ところでこれは噂なのですが、数か月前から行方不明になる話が出ているんですよ」


「事件になっているという事ですか?」


「ギルドでは特に話題にあがってませんね」


「噂止まりですよ。というのも町に住む浮浪者が数名見なくなったという程度ですから、ほとんどの人が事件性を感じていないのですよ」


「移民が多いですからね、この国は。定職に付けずにあぶれてしまう人も多いですから」


「おそらくその方たちだと思うのですが、私も見かけた事のある人がある日を境に見かけなくなったという事がありまして」


「んー、なんか引っかかるな。あ、すみません、情報ありがとうございました」


「いえいえ。お役に立てず申訳ありません」


浮浪者、宿にも泊まれず住処がない移民者たちのなれの果てという事なんだろうが、その言葉に引っかかりを覚えたのだ。


それと先ほどキロロに聞こうとしていたのはギルドで人攫いの話が上がっていないか、というものだ。


何せわざわざ彼女が探し回っているんだからそういうのが発生していると思っちまったしな。


「何か心辺りでもあるのですか?」


「うーん、何かあったような。そうだな、取り敢えず聞いておきたいのがさっきも言ってたが行方不明とか人攫いとかの話は出てないんだよな?」


「はい、特に出ていませんね。ですがギルド員に関しては討伐依頼中に命を落とされてですとか、拠点移動の報告がなくてという事で行方不明になる場合もありますが」


「なるほどな。ところでさ、移民に関してなんだけどギルドでは何か対策取ってないのか?」


「ギルドが国営と言っても管轄違いです。ただギルドに登録されたのであれば別ですが」


「移民がギルドに登録しに結構くるのか?」


「それほど多くありませんが、西支店で登録されて東支店に流れてくるというケースは多いですね」


「なるほど。ん?」


ちょっと待てよ。


移民のギルド員という言葉で何か思い出せそうだな。


以前にもそういう話をどっかで聞いた覚えがあるぞ。


あれはどういう時だったろうか?


「ナオヤさんのように他国からの移住者でギルド員になって一線で活躍されている方はなかなかいませんよ」


「急に褒めてどうし、ああああああああ!」


「ど、どうしたのですか?」


「思い出した!移民のギルドメンバー!」


そう、思い出したぞ!


かなり有力な情報かもしれない事も!


あれはこの町にくる直前に出会った兄ちゃんたち、盗賊行為をしようとしてたギルドメンバー5人組の事。


たしかあの人たちは言っていたはずだ。


「以前出会ったギルドメンバーが言ってたんだ、数か月前から人攫いの斡旋があるって!」


「え!?そんなギルドが犯罪行為をだなんてありえません!」


「いや、正式じゃなくて裏でとか言ってたな。でも支店でそんな話は全く聞かないんだよな?」


「はい。まさか移住者を狙って話を持ち掛けている?それと移住者であれば行方不明になっても気に留める人が少ないから」


なるほど、確かにそれだと話が通じるな。


やっぱりキロロは頭の回転が速いな、ちょっと情報を与えただけで次がすぐに出てくる。


「ギルド職員が斡旋しているのならすぐに解ります。ですから外部の、そうですね、直接話し掛けて交渉している?」


「流石にギルド内では話掛けないよな」


「どういった経緯だったか聞いていませんか?」


「たしか寝床を探している時とか言ってたな。結局野宿して夜営をしていたら近寄ってきたとか」


「でしたら最初っから当たりを付けていたかもしれません。移住者の方たちが宿が取れずに集まる場所が何か所かありますので」


「偶々って事は?」


「考えられますが大体同じ場所で確保するようですから、夜営場所は。それに武装している者に声を掛けるのですから観察はしっかりすると思います」


「なるほど。移民のギルドメンバーたちがよく夜営しそうな場所に心当たりは?」


「あります。ギルドに戻って応援を頼みましょう。ちょっと数が多いですから」


「ああ」


よし、何とか繋がったぞ、これで。

お読みくださってありがとうございました。


次回も近日中に投稿します!

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