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白兎の従者~一文字で大きく違う異世界転移~  作者: ゆうき
第5章 やっぱり甘くない異世界の町
47/62

5-6

「ルナさま、先ほどは失礼いたしました。対応しておりました者には厳重に注意しておきますので」


俺たちの目の前で40歳ぐらいであろう男性がぺこぺこ頭を下げている。


この人、この東支店の責任者らしく、失礼な対応をしていた眼鏡の受付嬢の失態を詫びているのだ。


兎のギルド証だが魔法装置を使って真実神の証明を当然得られた。


なんせ別の場所とはいえギルドで作った物だしな。


そしてちゃんとお金も払って拠点を移した俺たちは早速ギルド証を更新したのだが、まあ、その内容を見て、兎の称号を見てが正しいのだが、エント村の緊急依頼の立役者と気付いて大慌てして頭を下げているのだ。


なんせちょっとした英雄というか、非公式だが魔族を討伐した功績、兎の魔法が攻略のカギだった訳だし、その相手に無礼を働いたあってはまずいと思ったのだろう。


責任者として部下の失態をカバーしようと必死なのである。


なお、その部下である眼鏡の受付嬢は、現在奥に引っ込んでおり、扉の隙間から覗き込んでこちらを睨んでいる。


特に俺を。


「そうね、今回は特に事を大きくするつもりはないわ。目立ちたい訳でもないし」


「ありがとうございます」


「それよりも、連れのカードを更新してもらえる?」


「それはもちろん」


「リース、お待たせしたわね」


「いえ、大丈夫です、ルナさま。あ、すみません、ちょっと事情がありまして、騒がないでくださいね」


「は、はぁ、解りました」


リースは男性にギルド証を渡し、魔法装置にセットされると青い宝玉に手をかざす。


この辺りは俺たちと同じ手順だから特に描写する必要はないかな。


20年分だし、しばらく時間かかるだろうから、俺たちが更新されてどうなったかを話しておこう。




名前:ナオヤ・トウドウ


種族:人族(男)


レベル:11


クラス:●●の従者


スキル:サバイバル、限界突破(限定)、剣術(初級)、二刀術(初級)、総合戦闘術(初級)、騎乗(見習い)


加護:嵐神の加護


称号:白兎の守り手




まず俺だがレベルが1上がって11になり、新しいスキルを一つ覚えた。


馬なんかの生物に騎乗する技術を有している事を表すスキルで、見習いレベルだから本当に駆け出しの技術ということだ。


約2日しか乗ってないのだが、馬の全力疾走にも耐えた実績が評価されたのかもしれない。


スキルを覚えたのは嬉しいけどそう考ええると微妙なラインだ。




名前:ルナ


種族:白兎(メス)


レベル:13


クラス:白兎の●●


スキル:光魔法、雷魔法、合成魔法、戦闘指揮、気勢操作、騎乗戦闘(初級)


加護:月神の加護


称号:白き獣、高貴なる智獣、森の女王、森の戦術家、舌戦の魔術師、極光使い、最弱魔物の天敵(ゴブリンキラー)魔を討ちし者(スレイヤー)




次に兎だがレベルが1上がって13になり、新しいスキルを一つ覚えていた。


騎乗戦闘というぐらいだから、騎乗しながら戦闘する技術を持っているという事なんだが、こいつそんな事してただろうか?


せいぜいあの兄ちゃんたちとの戦闘で馬上から魔法を使っただけだと思うんだがな、謎である。


しかし、ゴブリンにしろオオカミにしろ、ほとんど俺が倒したのになんでレベルの上昇が同じなんだ?


その辺が本当に納得いかない。


まさか、称号だけじゃなくって経験値的な物までこの齧歯類に吸い取られているんじゃあるまいな?


などと機嫌を悪くしている間にリースの更新が終わった。


男性が魔法装置からカードを取り出して更新されたか確認を取る。


この辺りも全く同じなのだが、内容を見て完全に固まった。


「な、なんだこれは?ほとんどの情報が文字化けしてる。あと、リースさんは男性だったのですか!?」


あ、やっぱりリースの事を少女と思ってたんだな、この人も。


そりゃあ驚くよな。


「それにエル」


「すみません、それ以上はちょっと」


「ああ、すみません、騒がないとお約束しておきながら。それにしてもこれは」


「私にも確認させてください」


リースはギルド証を受け取り内容を確認すると、ため息をついた。


「はぁ、やっぱり」


「影響が出ているのね。私たちも見せて貰って良いかしら?」


「そうですね、ご相談したい事もありますから、どうぞ」


魔女の呪いの影響がかなり出ていたようで、かなり表情が暗い。


取り敢えずギルド内に併設された酒場に移動して、飲み物を頼んでギルド証を見せてもらう事にした。


まあ、あれだ。


俺たちの内容もおかしいが、リースのは輪に掛けておかしな内容だった。




名前:リース


種族:エルフ(男)


レベル:5


クラス:●●


スキル:妖精眼、精霊眼、●●魔法(植物)、●●魔法(風)、弓術(見習い)、魔弓術(●級)


加護:●●、暁の加護


称号:●●、花妖精の寵愛、樹妖精の寵愛、風精霊の寵愛




「なに、これ?文字化けのオンパレードじゃないか」


「表示が本来と違うと言うのなら、呪いの説明も納得できたのだけれども、これはちょっと酷いわね」


「私もここまでとは思っていませんでした」


「これってさ、真面に表示されてるのが種族だけじゃないか?」


「そうね。リースはあくまでも愛称だからそれが名前として表示されるのはおかしいわ。呪いの影響かしら。そしてさすが意地悪な魔女ね、呪いではなく加護として表示させるなんて」


「スキルもほとんど変な表示されてるけど、あれ?リースちゃんって風魔法が使えるんじゃなかったっけ?」


「あー、それは。すみません、嘘をついていました。本当は風の精霊さんにお願いして風を操っていました」


「細かい事はあまり気にしてないわよ。精霊魔法って言うぐらいだからやはり精霊に魔力を与えて行使するのかしら?」


「本来はそういう魔法なんですけど、私の場合呪いを受けて以来魔力を放出できなくなっているんです」


「え?それじゃあどうやって魔法を使ってるんだい?」


「お願いして使ってもらってます。私からは何も渡せてませんから、すごく心苦しいのですけれど」


申し訳なさそうだけど、凄い事を言ってないだろうか、リースは。


リースに聞いた魔法の使い方からいくと、どんな魔法使いであっても自分の魔力を使わない限り魔法として発動しないんじゃなかっただろうか?


今の話だと、精霊がリースに力を貸して魔法を使ってる、しかもタダで、いう事になるのだが。


これってば、どえらい事なのではないだろうか。


「リース、あなたは色々危険な状態なのね、思った以上に」


「どういう事ですか?」


「あなたはこの世界で唯一魔力を使わないで魔法が使える魔術師なのよ。もしそれが世間に知れ渡ったら、エルフという以上に騒ぎになるのではないかしら」


「あ」


この子、町で生活してて大丈夫なんだろうか?




リースへの警告は兎に任せるとして、俺は毛皮の納品と仕事について質問する事にした。


あの責任者の男性が良かったのだが、眼鏡の受付嬢がアネットと呼んでいた少女しか受付に居ななかったので仕方なくお願いする事にした。


うん、あの受付嬢に腹が立っているのは事実だが、このアネットさんはなんの落ち度もないのだから仕方ないは失礼か。


一度気を引き締めて話しかけた。


「すみません、手に入れた毛皮を納品したいのですが、大丈夫ですか?」


「はい、こちらでも納品受け付けていますよ。ですが物によっては直接毛皮を取り扱うお店に納品した方がお金になると思いますが」


「お気遣いありがとうございます。ですが私たちは町に着いたばかりで伝手もありませんし、あと依頼が出てるのならこちらで、と思いまして」


「そうでしたか」


「えっと、何か?」


「いえ、その随分と丁寧な方だと。あ、すみません」


「ああ、先ほどまでのやり取りを見ていればそう思いますよね。あれはあの人に対してだけですよ」


ちらっと事務席に座ってこちらを睨んでいる眼鏡の受付嬢へ視線を向けつつ、そう答えるとアネットさんは苦笑して小声で話しかけてきた。


「それは、こちらの落ち度ですね。キロロ先輩はちょっとそういうところがあるんです、本当にすみませんでした。でも、優しい人なんですよ、キロロ先輩は」


「身内や女性に対してだけ優しいとかそういうタイプですか。まあ、別にいいですよ、その辺は。それで毛皮なんですが、こちらです」


「グレイウルフの毛皮ですね。あれ?これ下処理までしてありますね」


「まあ、そこまでは私でもできますから。鞣しは特殊な技術ですからさすがにちょっと」


「いえいえいえ。これはすごいですよ。他のメンバーの方は剥いだ状態で持ってこられますから、これでしたら大助かりです」


「それは良かった。1枚幾らになります?」


「そうですね、単品でしたら銅貨10枚、いえ、12枚は行くと思います。5枚単位での納品でしたら依頼が出てますので、達成報酬は5枚毎に銅貨10枚が付きます」


「お、そんなに!じゃあ、15枚納品しますのでお願いします」


「解りました。ギルド証の提示をお願いします。なお毛皮代は後日になりますので、本日は銅貨30枚だけお渡しですね」


「えっと、ついでにですね、チーム登録もお願いしたいのですよ。あっちに居る兎とリースを含めてですね」


「それでしたら手数料を引いて銅貨25枚のお渡しです」


これでリースも正式に俺たちの仲間になった訳なのだが、一応事前に了承は得てるし、逆にお願いされたぐらいだからな。


リースは弓こそ扱えるが今のところその弓がなく、何やら今朝凄い弓を作ったのだが、それを持ち出すのを却下しておいた。


どう見ても凄すぎる弓、こう、アニメなんかのエルフが持ってそうなファンタジー感あふれる弓だったので、そんな物を持ったローブ姿の子供なんて目立ってしょうがない。


目立つのが嫌だったらそれはさすがにダメだろうと兎にダメだしされて涙目になってた。


あと弓はあれど矢がないんじゃ、意味がないしな。


聞けば矢を買うお金もないようだし、というか所持金が銅貨4枚だから、マジどうやって町で生活するつもりだったのだろうか?


弓以外でできる事と言えば魔法なんだろうが、本人曰く現在まともに魔法が使えない状態のようだし、討伐系はまずこなせない。


じゃあ雑用系になるのだが、エルフという事を隠しながら受けるなんてまずできないだろう。


唯一出来そうなのが採取系だと思うのだが、それがあればいいんだけどな。


そんなちょっと残念な美少年であるリースを不憫に思ってチーム入りを提案したら、もの凄く感謝して了承してくれた。


チーム入りしてくれて2人と1匹のメンバーになった訳だが、正直前途多難である。


なんせ下手な目立ち方をすると身の危険があるやつらばっかりだからな、俺を含めて。


こんな俺たちは町で生活とかできるんだろうか?


そんな不安を覚えたのである。






「あ、実はですね、募集している依頼がありまして、なかなか受けてくれずに残っているんですよ」


「どんなのですか?」


「はい、馬小屋の清掃と世話です。銅貨3枚のお仕事で、5件ほど残ってます」


町に来ても馬小屋ですか、そうですか。


泣く泣くその依頼を全部受ける事にした。


なんせ今日はそれしか残ってないからな!


「あら、あなたにピッタリで得意な仕事じゃない。しっかり働くのよ」


「やった事ありませんけど、私、がんばります!」


どうやら俺一人でやり遂げる必要があるみたいだ。


チクショウ!

お読みくださってありがとうございました。


次回は3月23日に投稿予定しております。

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