5-5
朝からキーを叩いてやっと限がよくなりましたので投稿します。
三連休って良いですね。
やってきました町の総合ギルド!
さすがに村と違ってこれだけ大きな町のギルドだけに建屋も2階建てで敷地も広く、地方の公民館レベルの規模だ。
だからといえ貿易拠点のギルドにしては小さい?と思ったら、なんとこの町には5つのギルドが存在しているらしい。
町の中心、領主館の近くに存在する中央ギルドと東西南北に1つずつ支店が存在する。
俺たちが訪れたのは東に位置するギルドで、一番寂れた支店だそうだ。
なぜ寂れているかと言えばこの国から東には1つしか国がなく、それより先は女神の管轄外の未開地が広がっているので販路が狭いからだ。
未開地ならば開拓すれば?と思うのだが、この世界の住人は創世の女神の力が及ばない土地には近寄りたくない。
彼らは神々から力を授かっている者たちなので、そこでは力を発揮できないらしい。
この話を聞いて俺と兎は思わず笑みを浮かべた。
俺は東の未開の地、東方諸国からやって来た事になっているので、そちらにいた時はただの学生だったがこっちに来てから力を授かり強くなった、と言い訳できるからだ。
本当は異世界に迷い込んでから強くなったのだが、そこはまあ、言う必要もない事なので、これからはそういう事で、となったのだ。
で、今俺は、出来るだけ目立ちたくないので嫌々ながら兎を背中に背負い、フードを目深にかぶったローブ姿のリースと共にギルドの目の前に立っている。
町の入り口付近は村かよ!?と言いたくなるレベルの物だったが、さすがにこの辺りに来ると建築物や地面もかなり整理されておりやっと町らしいイメージに近い。
これから扉を開いてギルドに入るのだが、リースは呪いの件もあるし、目立ちたくないと思ってかすごく緊張している。
兎のやつは村よりも栄えた場所が珍しいのかそわそわして周りをきょろきょろ見ている。
俺はといえば、とても興奮している。
だってだな、これから冒険者がいっぱいいるであろう場所に飛び込むんだぜ?
エント村のギルドはどうした?って?
あれはあれだ、こう、あの村の住人は良い人過ぎたのでカウントしてない。
話を戻すが若造であるおのぼりさんがギルドにやってきたらテンプレの絡みイベントとかやっぱり期待するじゃないか。
特にこの世界のギルドは酒場が併設しているタイプだから、酔いの入った冒険者が絡んでくる率がぐんと上がるはずだ。
午前中から飲んでいる人は少ないかもしれないが、逆に言えばこんな時間から飲んでいるやつは碌でもないやつの可能性が高いので、ピンポイントに発生するんじゃないかと、ワクワクしてるのだ。
トラブルが好きという訳ではないが、こう、異世界ファンタジーぽいイベントはやはり体験したいと思うのが男ってもんだろう。
俺はそんな事を思いつつ、うんうんと頷いていた。
「いて、何するんだよ」
「早く入りなさいよ。入り口の前でニマニマしてたらただの変質者よ」
「へ、変質者ちゃうし!解ったよ、入るよ、まったく」
本当にこの兎は男のロマンを解っていない。
とはいえ、この齧歯類の言う通り、そろそろ入った方がよさそうだからリースに声を掛けて扉を開けた。
その先には沢山の冒険者たちが
「めっちゃ閑散としてね?」
全然いなかった。
閑散としていて当然だった。
もう既に朝と言ってもかなり時間が経っているからギルドでたむろしている方が逆におかしいのだ。
ちょっとは居るかと思っていたが、やっぱり居なかった、そういう事である。
「あの村を基準に考えるから変な妄想をしてしまうのよ。さっさと受付に行きましょう」
妄想とか言わないで欲しい。
俺が変質者みたいじゃないか、それだと。
さて、実際の所メンバーと思われる人たちは誰もいない。
依頼書が貼られる掲示板にもほとんど掲示物がなく、なんというか寂れた感が半端ない。
とはいえギルド内は綺麗に保たれているので、利用者がいないという訳でもなさそうだ。
きょろきょろと辺りを見つつ受付カウンターまで進むと1人だけ受付が居た。
カウンターの大きさから行けば5人ぐらいは並びそうなのだが、暇だし1人だけ残っている状態のようだ。
その受付の人だが若い女性で人種と思われる。
思われるという表現をしているのはカウンターまでかなり近寄ったのに下を向いたまま何か作業をしているからだ。
カウンターの奥は事務スペースになっているようで、そちらでも忙しそうにギルドの職員が机に座って事務作業をしている。
どうやらこの時間帯は事務処理に充てるのが何時もの事らしい。
このまま無視され続けるのもアレだし、取り合えず声を掛けてみた。
「おはようございます、今大丈夫ですか?」
受付嬢は突然声を掛けられ驚いたようなそぶりを見せ顔を上げる。
うん、ちょっときつめの目を眼鏡で隠す、委員長タイプの少女だった。
こういう女性も嫌いじゃないな!
「おはようございます。何か御用でしょうか?」
何と言うか、とても不機嫌そうな声で返事をしてくれたのですが、きつめの表情も相まってしゃべりかけるなオーラが見える気がする。
偶にこういう受付っているけど、受付嬢としてはダメなんじゃないだろうか?
そんな思いを抱きつつ、表情にでないように、無理やり笑みを浮かべて要件を伝える。
引きつった表情になるのは仕方ないと思うんだ、俺もまだ若いし。
「エント村から移動してきましたので拠点変更の手続きと、ギルド証の更新をお願いします。後は毛皮を買い取って欲しいのですが」
「変更手続きですか、お二人分ですと銅貨4枚になります」
拠点を変更するだけでお金取るんですよね、この世界。
日本も転居したら転居届とかでお金が掛かるから、それと同じようなものかね。
素直に銅貨4枚を出して、俺と兎のギルド証を提示する。
受け取った受付嬢はめんどくさそうに内容を見て、兎の分で固まった。
「あの、このギルド証は何かの間違いでは?」
「え?あってますが」
「そんな訳ないでしょう。私をからかっているのですか?身分証の偽造は立派な犯罪ですよ」
信じられないのは解るけど、俺を犯罪者呼ばわりなんていくら何でも失礼過ぎるのではないだろうか、この受付嬢。
おい、あんたが騒ぐから奥にいる職員たちもこっちに注目し始めたじゃないか
「神が発行したものを偽造なんて出来ないと思いますが?」
「通常はそうですね。でも、兎に証明書だなんて。白い獣?まさかあなたは勇者様を騙ろうとしているのですね!」
「何勘違いしてるんだよ、あんた」
もう、この受付嬢は丁寧に接する気はない。
俺の機嫌が悪くなったのを察したのか、リースはこちらを見上げて心配そうな表情を見せている。
ギルドともめても良い事はないと理解しているが、犯罪者呼ばわりはさすがに我慢できない。
「これが偽造かどうかなんて魔法装置で確認できるだろ。さっさと確認してくれよ、ついでに更新も」
「あなた、ギルドを嘗めているのですか?このような事をしたら除名どころでは済みませんよ!」
「話にならねえ。なあ、そっちに居るあんた!代わりに対応してくれよ」
「え?私ですか!?」
「必要ありませんよ、アネット。それよりも兵士の方を呼びに行ってください」
「さすがにいきなりそれはまずいと思いますよ、キロロ先輩!」
「兵士ね。いいよ、呼べば?でも、これが偽造じゃなかった場合はどうしてくれるんだよ?」
「ナ、ナオヤさん、落ち着きましょうよ。別にここ以外の支店で対応してもらえば大丈夫と思いますから」
「いいや、リースちゃん。これがギルドの実態だとしたらどこに行っても一緒だろうさ。だから早い内に決着付けないとやってられない」
「そうね、まさかこれほど程度が低いとは私も思わなかったわ。森の住人たちを基準にしたのが間違いだったみたいね」
「な、なんですって!?あなた、今何と言いましたか!」
「わ、私は何も言ってませんよ!?」
「今言ったではないですか、私たちを貶すような事を!」
「私じゃありませんよ、おっしゃったのはルナさまです」
「ルナ?あなた以外に女性はどこにもいないじゃないの」
「はぁ、もういいわ、リース。さあ、もう行きましょう。こんな場所なんて居たくもないわ」
「そうだな、兎の言う通りだ。リースちゃん、行こうぜ。あとギルド証返せよ、受付嬢」
「え?兎の言う通り?」
「なにかしら、人間のメス。問題でもあるの?」
「え?」
眼鏡の受付嬢がぽかんと口を開けて固まった。
事務スペースも見てみたら、全員こちらを見て固まっている。
俺はそっとリースの耳を塞いだ。
「「「「「「「兎がしゃべったあああああああああああああああああ!?」」」」」」」
やっぱりこうなったか。
つうか、耳いてえ。
お読みくださってありがとうございました。
次回の投稿予定は3月21日です。




