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白兎の従者~一文字で大きく違う異世界転移~  作者: ゆうき
第5章 やっぱり甘くない異世界の町
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5-3

何とか書けましたので、投稿しました。

部屋に戻ってみたら着替え中で、といったイベントもなく備え付けの椅子に座ってぼーっとしているリースが居るだけだった。


ノックをせずに入ってしまったのだが警戒することなく、と言うのが不思議な所だ。


取り敢えず声を掛けると笑みを浮かべて答えてくれた。


そのリースだが既に食事や湯浴みも終えたのだろう、少し濡れた金色の髪が顔のラインを判りやすくしていた。


部屋に入るまで来ていたであろうローブは壁に掛けられており、布製の上着と半ズボンというスタイルだ。


少しゆとりのある服とはいえ、思わず目が行った胸はぺったんこで、ああ、やっぱり男なのかと残念に思った。


いや、残念には思ってないぞ?本当だぞ?いや、マジだって。


などと自分に言い訳しつつ、慌てて目線をそらして兎がすでに飛び乗ったとは別のベッドに腰かけた。


「さて、もう今日は遅いから明日から動くとして、どうするか決めるか」


「そうね、そうしましょう」


「えっと、たしかリースちゃんはギルドに行くんだよな?」


「あ、はい。かなり長い間更新してませんし、ちょっと確かめたい事もありますので」


「じゃあ、明日は朝からギルドを目指すか。たしか徒歩で1時間もしない場所だったよな」


「そうですね、たぶん1時間もかからないと思います。辻馬車が出ていた気もしますけど、勿体ないですものね。あれ?私の用事ですよ?お二人は合わせる必要はないんじゃ?」


「え?ああ、俺たちもギルドに行く用事があるんだよ。ほらこいつとか納品したいし」


既に持ち込んでいた俺たちの荷物、大きな袋には沢山の毛皮が入っている。


昨夜の野営で襲ってきたオオカミたちの毛皮を前処理だけ終わらせているので、これを持ち込んで報酬を貰いたいのだ。


ギルド以外にも持ち込めるところはあるんだろうが、この町の相場が解らない以上、下手に持ち込んだら買い叩かれる可能性が高い。


ちょっとで稼ぎたいし、ギルドに貢献しておきたいから納品という形をとるのだ。


あと、ゴブリンの討伐証明や魔石もあるしな。


「あ、なるほど、解りました。私もご一緒させてくださいね」


「ああ、こちらこそ、よろしくな。それで、徒歩で良いよな、急ぐ用事もないし」


「私もそれで構わないわ」


と、明日の行動予定が決まったあたりで雑談タイムに移行した。


雑談と言っても今日会ったばかりだし、目の前にあるオオカミの毛皮についての話になった。


リースも森で狩りをするからだろう、どうやってこれだけ大量のオオカミを仕留めたのか気になったらしい。


それを聞いた俺は自身の武勇を語るかのように声高々に話し、リースは瞳をキラキラさせながら聞いていた。


頬なんかも赤くして興奮するその表情は、絶対に性別を間違えてうまれてきたよねこの子、ととても残念に思った。


で、思ったのは最初の頃だけで、途中から兎がいちゃもんを付けて、気が付いたらリースの兎への信仰度がアップする結果になった。


いやいや、俺も超がんばって倒したし、毛皮の処理は俺がやったんだけどな。


なんでいつもこうなってしまうんだ、と心の中で泣いた。


「ところでリース、ちょっとよいかしら?」


「なんですか、ルナさま」


「いえね、色々と疑問に思う事があるのよ、あなたに。問題なければ聞きたいのだけれども」


「えーっと、その、話せる範囲でしたら」


「おい、何聞こうとしてるんだよ、お前は」


「あなたも疑問に感じているだろう事よ。そうね、まず、前回この町に来たのはどれぐらい前なのかしら?」


「20年ほど前です。父に連れられてですけど」


「20年前!?え、リースちゃん一体何歳なんだ?」


「今年で30歳になりました」


「え?年上なの!?全然見えないんだが」


「あー、その私たちエルフは成長速度が人の半分ほどなんですよ。だから人に比べたら幼く見えるかもしれません」


いや、ごめんリース。


君の事は10歳ぐらいだと思ってました。


だってエント村でみた10歳ぐらいの女の子たちと同じぐらいの身長だしね。


あ、でも男であるリースだから15歳ぐらいに、いやそう考えても12歳程度だわ。


うーん、俺よりも年上とは、異世界のエルフ恐るべし。


さて、次いでと言ってはなんだが、エルフという種族についてリースに質問してみた。


リースによると、エルフとは元々人と妖精の混血種だったらしく、伝承では数千年前に始祖となるエルフが生まれたそうだ。


アニメなんかでもよくある長寿種設定だっそうで、平均年齢は200歳にもなるらしい。


ちなみにこの世界の人の平均寿命は80歳ぐらいとあっちの世界とほぼ変わらないので、成長速度が半分くらいっていうのはこの辺も関係してくるらしい。


あとやはり外見年齢も20歳前後で止まるらしく、死ぬまで若い外見を保つそうだ。


しかも皆容姿端麗ときており、髪の色は金か銀で、瞳は青か緑と、まさに妖精のような外見をしている。


だからだろう、大昔には不老不死の存在とされ、その秘密を暴くために実験台にされたり愛玩や性奴隷として乱獲された時期もあったそうだ。


エルフの閉鎖的な性格はこの辺りから来ているようで、部族によっては人と一切関わらないところもあるそうだ。


森に住んでいる理由は妖精との結びつきが大きいからで、森に分け入ってまで彼らと接触しようという人が少ない、という事も閉鎖的と言われる原因が少なからずあるらしい。


性能面に関してもアニメによくあるように、手先が器用で魔法が得意、でも身体能力はそれほど高くないとのこと。


弓が得意というのは、森に住む種族ゆえに狩りを良くするからという方が正しいみたいだ。


魔法については兎が使うようなものではなく、エルフ独自の物が多く、妖精魔法と言われている。


植物を操る魔法なんかが代表的なモノで、リースも得意魔法は植物を操る妖精魔法で、あと風を操る魔法も得意らしい。


森で狩りをしていた時は植物を動かして獲物を捕らえ、風魔法の補助で矢を射て倒していたそうだ。


この話を聞いたとき、まさに俺が想像するエルフ像だったからかなり興奮したのは言うまでもなかった。


で、そんなエルフたちだが、一応この国にいる以上ファーロン王国の住人になるわけで、住民登録が必要になるとかこういうところだけファンタジーぽくなかった。


「他の部族はどうか解りませんが、私の所では10歳になると町に出て、ギルドに登録して国民登録の代わりにしているんですよ」


「あー、プルーフの証明がないと色々不便だもんな、こっちは」


「こっちですか?」


「そういえば言ってなかったわね。彼は東方諸国出身なのよ。だから真実神の証明書も最近なのよ、所得したのも」


「ナオヤさん、東方生まれなんですね。だから黒髪黒瞳なんて珍しい組合わせなんですか」


「ああ、まあね」


「私にしてもずっと山に居たから色々解らない事もあるのよ。あなたに助けて貰いたいと思ってるわ」


「それは任せてください、ルナさま!あ、と言っても人里に来たのも20年ぶりですから、頼りないかもしれません」


「お願いしている立場だもの、無理は言わないわ。あと、そうね、これが一番聞きたかったのだけれども、更新する必要がある訳って何かしら?」


「そ、それは」


おお、そう言えばなぜ更新が今更、20年間していなかった物をいきなりやるんだ?


よく考えたら変な話だよな。


何かありそうだ、と思うのだが、リースはそれを聞かれて顔を青くして俯き、すぐに答えない。


兎が疑問に思ったから聞いただけなら止めるんだけど、こいつの事だからそうじゃなく、助けになればと思っての事だろう。


なんせこいつ俺以外の者には妙にやさしいからな、俺以外には。


特に森の住人に関してはその傾向が強いから、エルフという森の民だからこそ手助けしようと考えている、そういうことだろう。


しばらく待って見てもリースは答えないし、兎も追及しない。


だったら俺が聞くしかないか。


俺だって折角知り合ったのだから手助けぐらいしたいしな。


「なあ、リースちゃん。何か問題抱えてるなら聞かせてくれないか?知り合って間もない俺たちだけど、袖触れ合うも多少の縁ってやつだ、何か手伝えることがあるかもだぞ」


「あなたがそんなことわざを知っているとは意外だったわ」


「以外とか言うなし!一応俺も学生だよ、しかも大が、高等教育の!」


「ああ、そう言えば一応そうだったわね、一応。あなたと会話していてインテリジェンスをあまり感じないから忘れていたわ」


「なんだと、このめろう!」


「ふん!」


「ぷ、あ、はははははは」


「まあ、あなたが笑われているわ。さすが芸人ね」


「芸人じゃねえよ!あと、俺だけ限定にするなよ!」


「あはははは、はー、ごめんなさい、突然笑ったりして。私が真剣に悩んでるのに突然言い合いなんか始めるからおかしくって」


「うふふ、やっぱりあなたは笑っていた方が素敵ね」


「ああ、確かに笑っていた方が可愛いな」


「か、可愛い、だなんて」


「オスに可愛いって、やっぱりあなた」


「それ以上言うな!あ、悪いリースちゃん、失言だった」


「もう、ナオヤさん!失言ってどういう事ですか!?」


「それこそ失言だったみたいね」


「ぐぬ」


「もういいですよ、ナオヤさんはそういう人だと思っておきますから」


えっと、誤解だぞリース。


確かに可愛いと思ったが、そういう意味ではなくてだな。


などと良い訳を考えていたらリースが表情を改めた。


「えっと、私が更新したい理由でしたよね」


「ええ、そうね」


「はい、覚悟を決まりました、お話しします」


その表情はとても真剣なもので、さすがに茶化す気もせず、思わず息をのんで続きをまった。






「更新したい理由は称号がどうなっているかを確かめたかったんです。私、つい先日、魔女さんに呪いを掛けられたのです」






え?魔女の呪い?


いきなり思いがけないワードが飛び出して思考が止まり、俺は兎と見つめ合う事になった。


リースが抱えているトラブルとは、思った以上に困難そうな案件だった。

お読みくださってありがとうございました。


次回は3月の16日か17日を予定しております。

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