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白兎の従者~一文字で大きく違う異世界転移~  作者: ゆうき
第3章 異世界の森での危険すぎる緊急依頼
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間話~偉い人たちの内緒話~

「教皇、お耳に入れたいことが」


「よろしいですよ」


聖アルテシウム教国と呼ばれる現存する国家ではもっとも長い歴史を持つ国がある。


名が示す通り宗教国であり、創世の女神アルテシアを主とする神々を祭る女神教を国教とし、法律等全てが女神の教えを元にした国家だ。


この国、女神教の始まりは最初の勇者の従者の1人にして、創世神の声が聞けたされる初代聖女が示した教えが元となる。


勇者が魔王を討伐し東へ去った後、彼女はこの地に残り、教えを説いた。


その教えとは、隣人を愛し、大地を育み、生けるモノ全てに感謝を、そしてこの恵みを下さった女神に敬意を、と言う単純なものだ。


当時の人たちは勇者を遣わした創世の女神が加護を与えた聖女が説く考えに同調し、徐々にではあるが世界中に広まっていった。


だが初代聖女の死後、その教えは姿を変えていく。


隣人を愛せ、と博愛の精神を説いた教えは、女神教を信じる者のみ愛を。


大地を育む、と自然との調和や作物を作る者たちへの感謝を説いた教えは、女神が大地に恵みを与えて下さるのだから女神教に寄進せよと。


全ての命ある者に感謝を、と人は人だけはなく他の全てと共存する事で生きていけると説いた教えは、人、特に女神教を信じる者だけが特別で他は下賎なるモノと。


女神に敬意を、と女神が下さった全てに感謝と祈りをと説いた教えは、女神教を受け入れないモノは全て悪と。


このように変わっていった経緯には、女神教をより多くの者に広め人々に幸福をと願った者たちの努力が歪められた事が原因だ。


女神教による権威を欲した者たちの思惑があった事。


ただ己の顕示欲を満たさんが為に都合の良いように改ざんしていった事。


他国との政治的手腕の一つとして改ざんされた事。


誰かが求めた欲によって、女神教はその姿を大きく変えたのだ。


ただ、中には初代聖女の教えを忠実に守ろうとする原理主義者も少数だが存在する。


現代の聖女テシアもその一人であり、彼女に同調する者たちだ。


「ふむ、今回は何用ですかな、ナダル枢機卿」


「人払いありがとうございます、デグネ様」


「いくら人払いが済んでいるとはいえここは総本山、どこに紛れているかわかりませんよ、呼び方には気を付けてください。様と付けるお方は神々と聖女、あとは聖者のみです」


「これは失礼を、デグネ教皇。いささか早すぎましたな」


女神教の教皇と枢機卿である二人は、教国の首都である聖都アルテシウムにある女神教総本山、アルテシア神殿の一室に居る。


この部屋は教皇であるデグネの執務室であり、実質この国を動かしているのが教皇だけに、この国の中枢とも言える場所だ。


部屋の造りはそれほど広くはなく、過度な調度品もない。


ただしそれは表向きの事であり、隠されているが防護や防諜の魔術式が施され、調度品も見る者が見れば一級品と解る物ばかりだ。


その他にも彼専用の私室や避難用の隠し扉も存在しており、王の部屋と変わりがない。


そのような部屋で人払いも済ませて話す事だ。


察して然るべき、と言えた。


「ファーロン王国にて魔族が出現しました」


「ほう、東の小国にか。それで魔族による被害は?」


「それが被害はなく、魔族はすぐさま討伐されました」


「なに?最下級の魔族ですら普通の者では倒せないはずだ。何者が倒したのだ?」


「冒険者にてございます。魔法を使う者もいたようで、ゴブリン討伐中に現れた魔族を討伐に成功したようです」


「ただの魔術師ではあるまい?」


「その辺りに関しましてはギルドが情報統制を行っているようでして、詳しくは。また、魔族出現も箝口令を用いて民には伝わっておりません」


「ふむ、魔術師よりもそちらの方が面倒だな。ギルドか小国連合が我らへの牽制か排除を考えているのだろう、下賎なる者が考えそうな策だな」


「やはり魔王出現を公表するべきではないかと」


「おぬしもそう思うか。聖女が我儘を言って遅らせていたが、この期を逃すとまずいな。聖女には私が承認させよう」


「勇者探しですか。その事でもご報告が」


「なんだ?」


「それが魔族が出現した場所、討伐者たちの中に白い獣を連れた者が混じっていたそうです」


「なに?まさか、本当に勇者が居ただと?聖女の世迷言と捨てておいたが、即急に選ばなくては行かぬな」


「真実神へ問い合わせたところ、その者は勇者か判別できない、との事でした」


「判別できない?真実を視る神プルーフの目でも判断できぬと?まさか未開地、東方より流れてきたのか?」


「おそらくは。ただ、判別ができない、という事は現時点では勇者ではない、との事でしょう」


「解った。取り敢えずその者の事を調べ上げよ。あと、その者に付いては情報を漏らさぬように」


「聖女さまにお知らせしなくともよいので?」


デグネは枢機卿の言葉を聞き、笑みを浮かべた。








「何、聖女さまには勇者を連れて行くとも。この私が選んだ勇者をな」

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