表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

3章 五華の雄&4章 決意と決断& 5章 闇

〜3章 五華の雄〜


***


「では、世界の話をしましょうか。」

「そこまで大きな話なのか?」

「お二人が、転移人である以上、確実に知っておいた方がいいです。」

「そうか、なら頼む。」

「はい!頑張ります!まず、地図全体を見て下さい。」

カイリにそう言われ、地図全体へと目をやる。

こ、これは....。

「どうですか?お二人の世界と比べて。」

「明らかに我達の世界より大きい....。2倍、3倍。いや、それ以上か?」

そう、魔王の言うとおりこの世界はめちゃくちゃに大きい。

なぜそんなことが分かるかというと、この地図には山や湖等が、細かく記載されているが、それらに比べ世界の規模があまりにも大きいからだ。

人口3億5千万人と呼ばれた俺達の世界イーヴェルハイトより、5、6倍はあるかもしれない。

さらに、俺達の世界では連合側と魔界側、二つの勢力に別れていたが、この地図上ではその大きさに応じる様に沢山の国々に色分けされている。

「まず、この世界の名前は『イーヴェルハイト』と言います。その世界を様々な国家と連合が別れて存在しますが、その中での大国5つを五華の雄と呼びます。」

五華の雄....。

大国か、この規模だと相当なものだろうな。

しかし、全くもって意味の分からないことがある。

それは、転移前の俺達の世界と転移後の世界の名が変わらないことだ。

確実に、地形も国も存在する種族でさえ変化しているのに。

まぁ良い。後でカリンに聞いてみよう。

今はこの世界の理解が先だ。

「では、大まかな国々を紹介していきます。まず、世界のおよそ中心の大きな窪地、ここにあるのが五華の雄で世界一の大国、『聖ローレイ皇国』です。」

そういうとカリンは、地図のほぼ中心に青く塗られた国を指差す。

「ここには、人間種が半分、残り半分を妖精種と他種族が分けています。更に、長年皇帝制を敷いていて宗教的に女神ローレイを崇めています。これが聖ローレイと言われる所以ですね。」

こんなにも大きな国が宗教国家なのか。俺達の世界で言えば、そういう国は内部で必ず勢力が別れてくる。もし、戦争になったらひとたまりもないな....。

「そして、そのすぐ西には私達が今いるトレス村がある、『アルマダ国』があります。山間部にあり小国ですが、土壌に恵まれ生産性がとても高いです。人間種が殆ど....ですが、かつては古代人の国だったらしいですよ!森の中にも石碑があるんです!」

興奮しながら話すカイリ。

本当にこの村が好きなんだな。

......それにしても良い子だ。

「次は、『シュク国』です。アルマダ国の北東に一部分接していて、そのまま東へと細長く聖ローレイ皇国の北を覆っている感じですかね。」

緑色で塗られている、横に細長い国を指差すカイリ。大きさはアルマダ国の1.5倍くらいだろうか?

「実は、この国は五華の雄なんです。」

「この大きさでか?あまり、アルマダ国と変わらないじゃないか。」

「ええ、そうなんですが、とても大きな軍事力を保持しているんです。.....実は、ここに住んでいるのは猫人種と狗人種という種族で、身体機能が優れているんです。野生的というか.....。」

猫人種?狗人種?

獣人種みたいなものだろうか?犬と猫しかいないとか?

うちにはバールのおっちゃんがいるが....。

勇者リリーナの親衛隊の一角に、バーロリオンという狼の獣人種がいる。彼は竜騎士であり、獣人種特有の獣と話せる能力を使い、赤い竜にのっている。

なんか、話が大きくなってきたな、おい。

「カイリよ、以前話していたアイビス公国というのはどれだ?」

魔王が身を乗り出し、前傾姿勢になる。そうすると当たり前のように、.....おいおい、胸!胸が!!なんで気にしないんだこいつは!さっきのは、俺をおちょくってたってことか!

カイリは魔王の言葉に、橙色の縦長の国を指差す。

「この国も五華の雄です。『アイビス公国』は、聖ローレイ皇国の東に大きな湖を挟んで存在しています。元々、様々な国があったのを統一したため他種族が存在していますが、人間は少ないですかね。だから聖ローレイ皇国とは、対立しやすいんです。」

なるほど、人間が多い国とは対立しやすいということか。

でも、これが転移人となんの関係があるって言うんだ?

「続いてお二人に紹介したい国が、少し特殊なんです。この二つの国は、転移人が造ったと伝えられています。そして今現在も、これらの国は人間種しかいません。」

「ほう、それは興味深いな。何という国なのだ?」

魔王が首を傾げ、カイリに問う。

「シュク国のさらに北、聖ローレイ皇国の南西にそれぞれ存在する月の国・エドと陽の国・オオサカです。」

........ 月の国・エドと陽の国・オオサカ?

あれ....?何処かで聞いことあるような....。

「.........そ、そうだ!リリーナだ!」

「なんだどうした賢者よ。ついに禁断症状がでたか。」

「ち、違う!.....実はリリーナは俺達の世界に転移してきたんだ。チキュウという場所から!」

「ほう。それは初耳だな?して、それが何の関係がある。」

「........そのエドもオオサカも、チキュウの地名らしい。」



〜4章 決意と決断〜


***


一通り話が終わった後、カイリが二階に寝床を用意してくれるというので、お世話になっている。

いやぁー!ふっかふっかだな、おい!

ベッドに頭から飛び込みその柔毛性を体感する。

何だか....凄いことになっちゃったな。俺はあの魔王の間で、魔王キースクルームの最後を見届けた。その後、あいつから溢れ出した謎の魔力からリリーナを庇ってここに来てしまった....。

でも、まさか転移してしまうとはな。

これからどうするか....。

その時、部屋のドアをノックする音がした。

「ソラさん、お風呂どうぞ。マオさんと私は入りましたので。」

「ん、悪いな。何から何まで。」

「い、いえいえ、大丈夫です!」

ドアを開けて、カイリについていく。

本当に良い娘だよなー。

............魔王とカイリの入った後か....。

いや!何も考えてないぞ!!


***


あー、気持ちよかったー。

お風呂後の服も用意してもらった。父の物らしい。

てか、何から何までお世話になりっぱなしだな。

女子二人の後のお風呂は何が変わるわけでも無かった。

何か良い匂いしたけど.....。

そんなことを考えながら部屋に入ると、

「うぉ!?ま、魔王!?」

「なんだ賢者、なにを騒いでおる。」

そこには、お風呂上りでその黒髪が湿っている魔王がいた。

先程、考えていたことがあれだっただけに焦ってしまった。

「な、何でもない!....どうしてここにいるんだ?」

「何を焦っているのだ...。なに、今後の我達のことを話そうかと思ってな。」

「なるほどな......。」

そう、俺達は状況が状況なだけに共に行動しているが、本来は勇者の仲間『賢者』とその敵の長『魔王』なのだ。

立場的には絶対に同じところにいてはならない。

なんなら、今すぐ殺しあっても良いくらいだ。

「魔王、お前はどうしたいんだ?」

「....我は何でも良いのだ。一度あの小娘との勝負に負け、死んだ身だ。それが何故かこうして生きておる。して、どうなろうがそれもまた運命ということだろう。」

魔王は窓際の椅子に腰を下ろし、既に真っ暗に染まる夜闇の中、空に輝いている星々に目をやる。

これだ。こういうところが、魔王なんだ。俺なんかとは比べものにならないくらい度量がでかい。世界が大きい。

でも俺はこいつと敵なんだ。

「そうか。でも、魔王は今すぐ俺を殺すかもしれないんだろ?」

「貴様がその気ならな。ただ、森でも試したとおり、我は何故か魔法が使えなくなっておる。....カイリが話した精霊と関係するとは考えておるが、何しろ嫌われてるらしいからな......。」

わ、割と落ち込んでやがる!

魔王にバレないように笑いを堪える。

でも、こいつなら体術だけで俺を瞬殺できる筈だ。

なら、俺はどうしたいのだろうか....?

「それとだ賢者。魔王の紋章のことを考えてみたのだが....。」

「あぁ、背中のか。」

「うむ。状況から考えて、魔力の光に貫かれた貴様だけでなく近くにいた我も転移したということは.....。」

おい、まさか!!

魔王は驚愕する俺の表情を見て頷き、

「そうだ。他の奴等も転移しているかもしれん。....少なくとも、あの部屋にいた小娘は転移してると考えて良いだろう。」

「で、でも!俺達が目を覚ましたところにリリーナはいなかっただろう!」

そう、俺達が目を覚ましたあの森には俺と魔王だけで、近くには人の気配が無かった。

「.....貴様が言ったのではないか。小娘は既に転移を経験済みで、エドとオオサカとかいう国は小娘の世界の国だと。そこが何か関係しているのではないか?」

なるほど...そうも考えられる。

リリーナが他の国で目を覚ましたかもしれないということだ。

しかし、リリーナだけでなく俺達の仲間や、あの戦場にいた軍隊がまるまるこの世界に来た可能性だってあるかもしれない。

もしそうだった場合は、転移人は数万に及ぶだろう。

だったら、何だ?

だったら、俺はどうすれば良い?

.....そんなの決まってる。

「なぁ、魔王。」

「なんだ賢者?」

「....協力してくれないか?.....俺は仲間を探したい。元の世界に帰るかはそこから決めたいんだ。」

「.....それはソラという貴様ではなく、賢者として、魔界の王である『魔王キースクルーム』に協力を望んでいるのか?」

「両方だよ。『俺』が協力を望んでいるんだ。」

そう、とんでもないことをしているのは分かっている。

連合側のほぼトップが、魔界側の王に協力を頼み込んでいるのだ。

謀反、裏切り、反逆になるかもしれない。

でも、それでも俺は仲間を助けたい。それが、仲間を裏切ることになっても。

「ぷっ.....フフ....フハハハハ!!フハハハハハ!!」

魔王はこちらを驚いた様な顔で見た後、いきなり笑い始めた。

「な、なんだよ?」

「フハハハ!!...貴様、『魔王』に『俺』からの協力を望んでいるだと!フハハハハ!!!」

うん、もう凄い勢いで笑われてるんだが。

「くっ...フハハ。良かろう!この魔王キースクルームが『貴様』に協力をしてやろう!!」

おお!なんかいきなり話の展開が変わった!

でも良かった。いくら今は魔法が使えないとはいえ、魔王だ。体術や知識は俺なんてものじゃないだろう。

「では、賢者。」

「な、なんだよ魔王。」

「協力してくれぬか?我は仲間を探したい。そして、無事に返してやりたいのだ。」

「!?」

...... そうだ。こいつは魔王だ。

魔王だが、大切な仲間や居場所なんて幾らでもある。

普通に生活するし、友と語りあったり、恋だってするかもしれない。住処だって、あんな城ではなく普通の家だ。

こいつは、魔王キースクルームの前に一人の女なんだ....。

「勿論だ。『俺』が、賢者が、ソラが、『お前』を助けてやる!!」

うおー!言っちまったぁぁぁぁぁぁ!!

「.....そうか。ありがとう。感謝する。」

魔王は俺の言葉に、いままて見せたことのないような笑みで、優しく微笑んだ。

そして、外の星々へと目を戻す。

その黒い目は、何処か儚くて悲しそうだった。

なんでそんな顔するんだよ...。お前、魔王だろうが....。

そんなことを考えているのが少し気恥ずかしく俯くと、

「そうだ、賢者!なら、我のことは魔王とは呼ぶな!」

「はぁ?じゃあ何て呼ぶんだよ。キースクルームか?長いだろ。」

「そうだな...よし、マオと呼べ!」

「マ、マオぉ?」

間抜けな声が出てしまった。

「そうだ、マオだ!カイリにはそう呼ばれたからな!」

「マオか....。分かった!なら、俺のことはソラと呼べ。」

「なっ!!....何故だ!///」

何でいきなり赤面してんだ、こいつは。

「そうだよ。俺はお前のことをマオって呼ぶ。だから、お前は俺のことをソラって呼ぶんだ。」

「わ、分かった.....。.....ソ....ソ、ソラ.....。....うぅ...///」

何故、顔面真っ赤にしながら恥ずかしそうに俯いて言うんだぁぁぁ!!こっちも、恥ずかしいだろうがぁぁぁぁ!!お前、魔王だろっ!?

と、内心全力で赤面している時、

「あ、お二人とも!明日の予定なんで.....す...が....。」

「........。」

「........。」

「あ、す、す、すみません!!私!!あの!その!」

ドアを開けた瞬間、俺達の状況を見て、お茶をお盆に載せながら顔を赤くするカイリ。

終わったぁぁぁぁぁ!!!

またもや、タイミングが良すぎる!!!

狙ってるのかこの天使はぁぁぁ!!

しかも、二人で向かいあいながら、顔面を赤くしている状況!明らかにまず過ぎる!!

「ち、違うんだぞ、カイリ!これはだな!」

「....ぷっ...アハハ!分かってますよー!アハハハハ!ソラさん、本気で焦っちゃって!.....はぁー、アハハ。」

「!?」

ま、また騙された!!

天使の様な顔して悪魔だなこの娘は!


***


カイリは、寝る前用というハーブティーを机に並べる。

一口、口に入れた瞬間に落ち着く木の様な香りがする。

んー、美味しい。そして良い娘だ。

「なぁ、このハーブティーどうやって作ってるんだ?本当に美味しい。」

「あ、ありがとうございます。実はこのハーブ、裏庭で作ってるんです。」

「自家製か!凄いな!」

「エヘヘ、そうでもないですよ...?」

はにかむ様にして笑うカイリ。

うん、可愛い。

「うむ、確かに美味しい。そういえば、明日の予定というのは?」

「あ、はい!明日は市場へ買い物に行きたいんです!食べ物とか....後は、お二人の生活用品なんかも!」

「あー....カイリ?そのこと何だがー....。」

隣に座るマオへと目をやる。

「カイリ、実は我達の仲間もこの世界に来ているかもしれんのだ。して....あまり、ここには長くはいられん。探しに行かなくてはならないからな。すまん....。」

申し訳なさそうに謝るマオ。

カイリは、 俺達が来たのを久しぶりの客人だと嬉しそうだったからな。でも、こればっかりは仕方ない。

「そ、そうですか....。残念です.....。」

寂しそうに呟くカイリ。

そんな、少女を見て、

「いや、でも数日はいるつもりなんだ。カイリが良かったら....なんだけど。」

「本当ですか!!はい!はい!是非いてください!!」

満面の笑みで幾度も大きく頷くカイリ。隣のマオも微笑んでいる。

「よし、じゃあ早く寝るか!明日、早くから買い物に行けるようにな!」

「うむ。」

「はい!」

声色は違うが、元気に返事を返す二人。

もしかしたら、俺はこの世界を好きになれるかもしれない。

そんな事を思った。


〜5章 闇〜


***


暗い。暗い。

真っ暗だ。

一人。

周りは見渡す限りの高木。地面には草が生えていて、空には様々な星々が輝いている。

でも、まったく綺麗に見えない。

またこの景色だ。

前の世界に転移した時は、ここまでの絶望を感じなかった。

なんでだっけ?

高校に通い、大学受験を控えたその年、新しいクラスで新しい友達達と仲良くしていた....と思う。

でも、家庭は違った。

大好きだった父は私が小さい頃に病気で他界した。その後、母はおかしくなった。仕事は今まで以上に頑張り、女手一つで私を育ててくれた。

でも、父がいなくなったことで、母は新しい男を作る様になった。

「莉奈。この人は貴女のお父さんになる人よ。」

何度聞いたか覚えていない。

社長、サラリーマン、教師やホスト等、様々な人が家に来た気がする。

挙げ句の果てに、大学生を連れて来たこともあった。

私は、今までガマンしたけれど、その時は出来なかった。

抵抗した。

それが、悪かったのかもしれない。

その大学生に、二人きりの時に襲われかけたのだ。

幸い、その直後に母が帰宅し、大学生から守り追い払ってくれた。

「ごめんなさい、莉奈。ごめんなさい、ごめんなさい。」

泣きながら、私を抱き締める母。

この言葉も何度耳にしたかわからない。

そういう時、決まって私は言う。

「私ハダイジョウブ、心配シナイデ?」

大丈夫な訳がない。

自分に嘘をつく。

母に嘘をつく。

私は母の涙を見た日は決まって一人になった。母に気をつかった訳ではない。母の涙を見る度に怒りが心の底から湧き上がってくるのだ。

そんな時は決まって河原に行き、一人で本を読む。

その日は休日だったが、高校の制服に着替え、夕方から河原に向かった。

いつも通り、本を読んで時間を潰す。

そして、あの壊れた家に戻る。

だが、ある時異変に気づいた。河の中で青白く光っている部分があったのだ。

何だろうあれ...?

怪訝に思い、近づいてみる。

河岸まで来てみるとどうやら、河の底でガラスか何かが反射しているらしい。

ただのガラスか....。はぁ...帰るかな...。

そう思い、振り替えった瞬間。

きゃ.....!!

足を滑らせた。

そして、そのまま河の中へ。

岸の筈なのに、流れがとても強くなっていた。

たまたま深くなっていたのだろう。

そして。

う....そ!....い、息が!....。

私は泳げなかった。

河に流される。

抵抗する。手で水を掴む。しかし、焦れば焦るほど、服に水が絡みどんどん流されていく。気づけば、河幅の中心あたりまで来ていた。

...暗い....。

既に意識が朦朧としてきている中、異変に気づいた。

.....な...に...あれ...。...光が....。

青白い光がどんどんとこちらに近づいてくるのが見えた。

眩しいと感じた次の瞬間、意識が切れた。


***


意識が戻ってからは楽しかったなー。最初は何も分からなかったけど(笑)

森の中で一人目覚め、迷っているうちにある男に見つかった。

彼は自称賢者らしく、その世界について色々と教えてくれた。

最初は信じられなかった。

そんなアニメや漫画みたいなことあるもんかって。

その後すぐに城に行って、色んな人と話して。

自分が勇者の信託を受けていると分かった時は驚いた。

凄く不安で右も左も分からなかったけれど、皆が助けてくれた。

剣術の鍛錬。魔法の修行。乗馬の訓練。世界の勉強。辛かったけど、皆がいたから笑って楽しめた。

何もかもが初めてで毎日が刺激の連続。

ソラと一緒によく西縁さんに怒られたっけ。あいつ、いつも乗馬の訓練サボろうとするんだもん。まぁ、私もだけど。

少なくとも、日本で生活していた時よりは充実してた。

寂しくなかった訳じゃない。でもそんな時は、ソラが、バールのおじさんが、ルメットが、西縁さんがそれぞれ、仲間として、父代りとして、親友として、お姉ちゃんとして一緒にいてくれた。

彼らは仲間の死を見て、私が泣く度に抱き締めてくれた。

バールのおじさんなんか、

「お前のせいじゃねぇ。俺達のせいなんだ。」

何て言うんだもん。

でも、私に悲しんでる姿を見せない様に気を使ってたの知ってるよ?

本当は皆も悲しかった筈なのに。

少しそれで悩んだ時期もあった気がする。

皆、優しくて厳しくて、仲間なのに家族みたいで。

.... あれ?....なんで私、今....泣いてるの.....?

皆との温もりが本当に暖かった。

だから、生きてこれた。

勇者になれた。

日々の訓練に耐えてこれた。

連合軍のトップという重役に耐えながら魔界軍と戦えた。

皆を戦地に安心して送り出せた。

魔王を倒せた。

なのに、なのに!!

今でも、ソラの呻き声と苦しそうな姿が忘れられない。

また、大切な人がいなくなってしまった。

涙が止まらない。

神様、私は何度失えば良いの?

何で私なの?

お父さんを、お母さんを、ソラを、皆を返してよ。

もう一度、夜空を見上げる。

自己主張の如く、懸命に輝く星々。

それはどれも個性的に見えて。

皆のこと思い浮かべたからかな?

星が綺麗に見えるよ?

ねぇ、ソラ。

死んでないよね?

また一緒に星見たいよ。

どこにいるの?

.......私は......私はここにいるよ!!!

「もしかしたらこの世界にソラ達が来てるかもしれない...。」

そんな自己暗示の様な、絶望に近い可能性を考えて、立ち上がる。

服は、あの時のまま。

魔法は....?

手を握り、片手に魔力を込める。

使えるけど....弱い....。

でも剣があるから大丈夫。

絶望的かもしれないけど、可能性があるなら....。

目尻に溜まる涙を拭く。

立ち上がり前を向く。

「よし、行こう。皆を探しに。」

少女は一人、闇を進むーーーー

読んでいただきありがとうございました。

KAIMIN枕です。

今回は、様々な人名が出てきました。

彼らのことは、今後更に明かされます。

そして、5章の少女とは?


では、次回もご期待ください。

感想等お待ちしてます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ