番外 学外時間 入学式
春。春といえば行事も何かとある。が、学生の行事といえばやはり卒業式と入学式は一大イベントであろう。ただ送る者、迎える者にとっては退屈に思える者もいるだろうが。
自分はある学校の門前に立っていた。門の周りには桜の木が植えてあり、花は既に半分くらい散っていた。そして門前には 入学式 と大きく書かれた板が掛けられていた。今年からこの学校へ入学するのだなと、自分には珍しく感慨にふける。立ち止まっているのは自分だけで、後から後から人は門に吸い込まれるようにくぐっていく。そろそろ自分もその流れに乗ろうと一歩を踏み出そうとしたとき。
「ひっさしぶりー!」
威勢の良い声と、背中の張り手に吹っ飛ばされた。
「おおっと、ゴメンゴメン。でも君のリアクションでっかいね~」
リアクションじゃないから。吹っ飛ばしたのお前だから。というか誰だよ?
新しい制服についた汚れをはたきながら立ち上がると、女子生徒が立っていた。
「いやー、君もこの学校なんだね」
ニコニコと楽しそうに笑う姿。その姿は一年以上前に見た彼女とだぶった。
「もしかして、あの時の・・・・・・?」
「そうそう。倉庫の中で寝てた、あの時の」
卒業したあの学校にある、資料室。資料室とは名前だけで、倉庫のようになっている教室。そこで大の字になって寝ていた彼女。お互い知り合いというわけでもなかったのだが、あそこで彼女と話した内容は忘れにくいものだった。あれから時々は学校で見かけたりするも、すれ違うことは無く、挨拶もすることはなかった。接点もあの会話きりで。
「何かあの時と違う気がするんだけど」
「そう? 元はこんなもんだよ。根暗君」
「根暗じゃないから、悪趣味さん」
「ひどっ! だって君、あの時全然喋らなかったでしょうが」
「あんたが一人で喋ってたからだろ」
門前で言いあっていると、人の流れが滞りはじめたのに気がついてゆっくりと歩き始めた。
「君が私に質問ばっかりしたからでしょうが。律儀に答えてあげたんだよ、私は」
彼女も歩調を合わせて隣を歩く。
「いやー、しかし君も一緒か~。何やら学生生活が楽しくなりそうな予感がするよ」
自分は何やら疲れそうな予感がする。あの時の彼女の会話、そして先程の再会。けれど、確かに楽しくなりそうである。笑うときに余計な感情を入れられない彼女。心底愉快そうに、楽しそうに、気持ちの良い笑顔で。少し性格が悪い気がするけど。少し力が強い気がするけど。きっと一緒にいるんだろうなと思った。
「クラスとか違っても、これから三年間よろしく!」
またもや彼女は背中をバシッと叩いた。
「お手柔らかに」
これから起こすだろう彼女との厄介な出来事と新しい学校生活は少しの痛みと驚きより始まった。
そして彼は三年間彼女と同じクラスになり、事あるごとに何かしら巻き込まれることになった。
また、いつの間にか彼の妹も、彼女の従妹と友達付合いをしていて知らないうちにほぼ家族ぐるみな関係になってたり。