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還愁
初投稿であります。ご意見感想の方いただけると嬉しいです
床へ落とされたかげの動きが段々と遅くなっていく。一定の間隔ごとに列車全体が揺れ、かばんの中身がカラカラと鳴る。列車の中の人は輪郭がぼやけてよく見えない。覚えているようないないようなあたたかい色で脚色された景色が通り過ぎる。さらに列車は速度を落としていく。さほど多くも残っていない列車の中の人たちが一様にして天井の荷物へと手を伸ばし始めた。,,ブー,,音を立てて扉が開く。側に置いていたカバンを閉めて列車の外へ出る。強烈な西陽が指していた。すり減ったアスファルトに夕陽が反射して地面が白飛びする。駅員のいない裸の駅、里山と言われるこの世界ではとても浮き出て異質だった。それから目を外して正面を見る。目の前にはどんな景色が広がっているんだろう。大切なものが入ったかばんを握りしめ今一歩足を踏み出した。