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第7話 少女は一人、悲しいだけの嘘をつく


「かなな、みずず、準備はいい?」

「もちろん!アタシはいつでも大丈夫!」

「私も大丈夫よ!」


 とても大きい不気味な神さまを相手に、私達がとれる手段は少ない。

 接近戦をいきなり仕掛けて何か罠があってもいけないから、まずは私の弓矢での牽制と先制攻撃。


 私達が立っている場所から、敵の場所まで大体2kmくらい。

 この程度の距離なら、私の矢の威力は落ちないもんね!


『万が一飛び道具での反撃が来ても、わたしのむてきばりあ?があるから大丈夫です。ゆかちゃん、全力でいきましょう!』

「うん!ありがとことりん!」


 ことりんの無敵バリアに、横ではかななとみずずが待機してくれてる!

 うん、これなら何の心配もない!


「狙うのは、2本のリングで守られている本体の眼球よ!」

「うん!行くよ〜、そいっ!」


 力を溜めに溜めた、私の全力の一射!

 大神様の神力で強化された矢は、周囲の空間も歪むくらいの威力で敵の本体に直撃──


「あ、あれ?」

「……効いてない?」

「確かにゆかりの凄まじい矢は、弱点らしき部分に当たったはず。なのに……」


 周囲のリングを縫うように避けて私の矢は当たったのに、爆風が吹き荒れるくらいのとんでも威力だったはずなのに……!

 どういうわけか、敵はピンピンとしてる!


「こ、ことりん〜!」

『大丈夫です!確かにゆかちゃんの一撃で、敵の神力が減りました!』

「ほんとに!?」

「ごめんなさい寿葉。私達には分からないのだけど、具体的にはどれくらい?」

『一割ほど、でしょうか』

「「「一割!?」」」


 私が全力で溜めに溜めて、隙をついて弱点ぽい所に当てて一割!?

 そ、そんなの硬すぎるよ〜!?


「みずず〜、他に作戦ないかな〜?」

「そ、そうね……。でも、あの攻撃を打ち込まれても動かないし、削りきれるまでゆかりの弓矢で──」


 あれ?何か、周囲から光が消えた気が──


「ふせてっっ!!」

『逃げてっっ!!』





「──かり!──ずき!!」

『み──ん!!だい────!?かな──!?』


 眩しい?ううん、違う。これ、光で目がチカチカしてるんだ。

 耳も、ようやく聞こえ初めてくれて──


「え?」


 そこはさっきまで立っていたビルの屋上でなく、灰色が主を占める地面。

 ゆっくり起き上がれば、どうやらみずずも同じタイミングで起き上がったみたいで。


「うそ……」


 みずずが目を見開いて見る先には、さっきまで私達が立っていた場所。

 その4階建てのビルは、2階部分から上が綺麗さっぱり無くなっていた。


「あ、2人とも起きた!!」

『本当ですか!?』


 あ、頭にことりんの声が……。

 かななもほっとした顔してるし、えっと……。


「な、何があったの?」

「もー、水希もゆかりも敵から目を離しちゃダメだって!寿葉のバリアがなきゃ、アタシ達死んでたかもなんだよ!?」

「ご、ごめんなさい……」

「香苗も寿葉も、本当にごめんなさい……。今の衝撃は、敵の飛び道具かしら?」

『…………っ。かなちゃんの視界から見えたのですと、恐らくは光線のようなものかと』


 なるほど、光線。だから、さっきまで立っていた場所があんなに……。

 あの破壊規模だと、私のさっきの一射よりも遥かに威力は強いよね。


「……作戦を立てないと。ゆかりの弓矢で攻める作戦だと、今みたいな手痛い反撃を喰らうかも」

「でも、ことりんのバリアのお陰で傷一つ付いてないよ?これなら今の作戦を続けても……」

「確かに……。さっきの2人は光と音で体が驚いちゃっただけっぽいし、傷を受けないなら──」

「ダメ。敵は神様なんだから、寿葉のバリアを貫通しないとも限らない。寿葉のバリアは私たちの生命線だからこそ、対策を取られることは死活問題につながるのよ?」


 た、確かに……。

 私たちの手持ちの札で、生命線かつ切り札なのがことりんの無敵バリア。

 このバリアの対策を取られたら、さっきみたいな攻撃を受けきるなんてきっと無理だ。


「となると、新しい作戦かー。アタシ、頭使うの得意じゃないんだけど……」

「かななに同じく……」

「知ってるわよ?」

「「ひどっ!?」」

「どう寿葉?何かさっきまでで、気になったところとかない?」


 もしかしなくてもこのチーム、みずずとことりんが頭脳担当だよね。

 うう、もっと頭良くなれればことりんにお姉さん風吹かせられるのに!


『…………みずちゃんは、ゆかちゃんの矢が当たる瞬間を見ましたか?』

「ええ、もちろん」

『不思議なんです。本体の眼球を覆うように回っているリングが、ゆかちゃんの矢に反応を示さず素通りさせたの』

「やっぱり寿葉に聞いて正解だった。私もそこが引っ掛かっていたから」


 2人の会話に、頭の上に?を浮かべる私とかなな。

 そんな私たちを見かねたのか、みずずが苦笑いで話してくれる。


「あの二本のリング、あれが敵の防御装置だと思ってたの。そうじゃないと、態々外側で回っている意味が薄いでしょう?」

「でも、そういう神様の姿かと……」

『ゆかちゃんの視界越しでしか見れませんでしたが、わたしにはワザと矢を素通りさせたように見えました』

「そう、なのかな?」


 え~と、つまりは弱点を攻撃したと思わせたという事?

 2人の会話的には、それこそが私たちを油断させて一網打尽にする為の罠だった?


「ゆかり、今度は矢をばら撒くように打ってみて。こう、物陰に隠れて雨を降らすみたいに」

「わ、わかった」


 みずずの言うとおりに、建物の陰から雨を降らすイメージを。

 

 でもこの神器、本当に凄い。

 私のイメージ通りに薄く緑に光る矢が生成されるし、狙った場所に飛んでくれる。

 大神様も力を貸してくれている弓だから、ここまでできるのかな?


『ゆかちゃんが矢を撃ち次第、みずちゃんとかなちゃんは反撃に警戒しつつ、ゆかちゃんを抱えて退避を。敵に認識されないように建物の影を縫って、光と音に気を付けてください。物理的なものは、わたしのばりあで防ぎます』

「りょーかい!それじゃあ、ゆかりはアタシが担ぐよ!水希は先に走って道案内宜しくね!」

「かなな~、優しく運んでね~?」


 作戦は決まったし、これで何か成果があれば御の字かな?

 これが無理だったら、また作戦会議をするしか……。ん?


「みずず?どうかした?」

「………………いえ、大丈夫。この作戦が終わったら話すけど……」

「けど?」

「……2人とも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 みずずは声を潜めて、焦りや怒りを含んだ声音でそう言った。

 

「えっと、どうしたのみずず?」

「なんかあった?」

「……少しね。もし私の考えが当たっているなら、確実にお説教案件だから」


 みずずはそう言って、自分の胸の前で拳を握る。

 こんなみずずは初めてで、わたしもかななも少し困惑してしまって。

 

『それでは、作戦を開始します』


 

 でも、その真意を問う事は、結局手遅れになるまで出来なかった。





 きっと、みずちゃんは気づいてしまっている。


 自傷も効かない、敵の攻撃も効かない、危険なことは一切ない。

 神様相手にも通じる、皆様を包むわたしの加護。

 2年前には出来なかった、わたしが出来る戦うための術の1つ。


 そんな最高の守りが、何の危険も負わずに維持できるはずがない。


 みずちゃんは感づいてしまったからこそ、わたしに内緒でかなちゃんとゆかちゃんに注意を促した。

 結果的にわたしには聞こえてしまっているけど、そのお心遣いはとても嬉しいもの。


 わたしなんかには、過ぎたお心遣い。


 説得する言葉は持ち合わせておらず、反論できるような余力も恐らくない。

 少しだけ、この後に起こるお叱りが憂鬱ではあるけれど。


 

 今はただ、英雄様達の為に。

 


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