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GOOD LUCK  作者: 阿寒湖まりも
第1楽章「黎明爆破」
3/38

2話「清浄と異端のコラージュ」

アズマ展望塔の近く。

サラリーマンで賑わう昼時の街路と対照的に、

一際静かな場所があった。


雪が降る夜のように静かな図書館に1人、

いや、正確には2人。読書に(いそ)しむ男たちがいた。


「なあ、カシ。」

『何だ(らく)。今、読書中だから、後にしてくれ。

 ほれ、ページをとっととめくるんだ。』

「何故俺は、読みたくもねえ

 歴史の本を読まなきゃあならないんだ?」

(らく)と視覚共有しないと、

 俺が読めないんだから仕方ないだろ。』

「そうじゃなくて、

 この活動に何の意味があるのかってこと!」

『ふむ。』



(らく)とカシ。2人の男は

爆破予告事件後の約2週間、

しげく図書館に通っては本を読み続けていた。

歴史書、神学書、ここ数十年分の新聞……etc

やがて(らく)は、この図書館の司書及び常連に

認知される域に達してしまっていた。


(らく)さん、すっごい深刻な顔してますね。

 大丈夫ですか?お水汲んで来ましょうか?」


特に、この司書さんは親切に俺を気にかけてくれる。

トレードマークは白髪(はくはつ)のポニーテール。

新人らしいが、誰にでも優しいので、

大抵の人に好かれているようだ。


「い、いえ、結構です。お気になさらず。」

「そ、そうですかぁ…。」


そう言うと、彼女はしょぼしょぼと去っていった。

だが、カシのことを言うわけにもいかないし、

これもまた仕方のないことだ。うん…。


『気にかけてくれる人は大切にした方がいいぞ。』

「誰のせいで悩んでいると思ってやがる………」


ここ最近のカシの変化は凄まじい。

つい数日前、俺は彼の姿を捉えられるようになった。

あの日のように夢の中ではなく、現実で、だ。


まあ、それはカシが俺に何らかの細工をしたからで、

本人曰く、「俺しか彼を感知できない」そうだが。


「お前のせいで、俺、多分変な人だと思われてるよ。」

『そんなの、俺の知ったことじゃないね。

 契約者が雇用主のために働くこと。

 それは、子供が飴を好きなのと同じくらい当然だ。』

「はいはい、そーですか、そーですか。ケッ」


『そうだそうだ。話の続きだ。

 確か、この作業の意味についてだったな。』

「ああ。」

『それは、今この時代。この“日本”を知る為だ。』

「……時代?日本?」

『…………まあいい。

 それを知らなければ、神を殺すなど夢のまた夢。

 生き返らせた対価はきっちり払ってもらうよ。』

「分かってるよー。俺を生き返らせたのは、

 他の誰でもない、お前なんだからな。」



ゴーンゴーン



『正午…か。さあ、食事にしよう。

 君の空腹が伝わってきて大変不愉快だ。』

「えー…。今、キリが悪いのに。

 そんなにヤなら、感覚共有切れよ。」

『それでは俺が、本を読めんだろう。』

「……………。」ムスッ



あしへん



最近の図書館は便利である。

そのすぐ側に、カフェテリアが併設されている。

お腹が空いたら、すぐに満たせるのだ。


「ちゃーす」

「いるrrrrrrrrrrァッッッッッしゃいますぅェェェッ!!!」

「うるッせェェェ!!!」


だがこのカフェテリア。接客がクソである。

店長の性格(キャラクター)が濃すぎるのだ。


「オホン! 相変わらず…その…お騒がしいですね。」

「無理にッ 敬語をッ 使わなくてもいいよォッッ!!!

 ところでッ 少年ッ!今日で来店14日目だねッ!!!

 これをッ 君にッ 託そォッッッッッ!!!!!」

「……なんですか、これ。」

「ラーメン家康 のッ 味玉無料クーポンだッ!!!」

「……あ、ありがとうございます。」

「ちなみにッ 使用期限はッ 今日までだッッッ!!!!」

「あと12時間で紙くずになるじゃねェかァァァ!!!」


いかんいかん。不味い。相手のペースに飲まれる。


「店長、いつもの。」

「客のッッッッッ 好みはッッッッッ

 何一つ覚えていないぞぉぉぉぉぉ!!!!!」

「一ッッッッッ番安いやつだよ畜生!!!」

「まいどありッッッッッ♡」


毎度毎度、注文だけで何故、ここまで疲れるんだ。


「――――――。」

『それ、いつも飲んでるが。美味いのか?』

「味ねェよ。お冷だもん。」

『だよな。』


ここ最近は、本業“何でも屋”に仕事が来ない。

()()()()のせいで、ここらに人が近寄らなくなったからだ。

本来、このようなどうしようもない時は、

(みなと)から仕事を貰って食いつないできた。

だが今は、(みなと)が多忙でなかなか連絡が取れない。


「おっと、珍しい人に会うこともあるんですね。

 貴方がこんなところにいるなんて。」


そんな思いを()せていると、

洒落(しゃれ)なカフェテリアには似ても似つかない、

見覚えのある屈強な戦士がこちらに向かってくる。


「あ、天馬正和(てんままさかず)さん。お久しぶりです。」

「お久しぶり。元気にしてたかな?」

「まあ、お陰様で。報酬もたんまり頂きましたし。」


()()()()でJECに表彰されたことで、なんとかギリギリ生きていける程度の収入を得た。だが贅沢するほどの余裕もない……。


「………………。」

「………………。」


やめてくれ、天馬(てんま)さん。

俺のお冷を信じられないと言わんばかりの目で見ないでくれ。そんな悲しそうな目をしないでくれ。

大丈夫。大丈夫だから。

え? 『マンゴーフラペチーノ』一口くれるの?

ありがとう。


「おいしい」


何日ぶりの糖分だろう。涙が、こぼれ落ちそうだ。


「……ところで、(らく)。何故、このカフェテリアに?」

「最近は図書館で調べ物するついでによく来るんだ。

 天馬(てんま)さんこそ、よく来るんですか?」

「久々な休暇なものでね。

 こういう静かな空間は居心地が良いんです。」

「…ふーん。」


そっか。と呟き、(らく)は二言目を口に出す。


「ところで、聞きたいんです、

 その後の繁芸獏(しげきばく)の動向について、何か分かりましたか?」


天馬(てんま)は首を横に振る。


「彼ら………。繁芸獏(しげきばく)とワタルは今、

 各地を転々としているみたいだ。

 “ワープ”の影響もあってなかなか………。」

「JECでも見つけられないのか………。」

「…………申し訳ない。

 (らく)くんは何か知ってたりしませんか?」

「いいえ。」

「……………。」

「……………。」


沈黙。それは実に耐え難かった。


「(まずい…。もう話題が無い。)」

『何か喋れよ………。』

「(何でずっとこっち見てくるんだ……。気まずい。)」

『一緒に飯食いたいんじゃないか?誘ってやれ。』


「あの……。一緒にご飯食べますか?」

「!  では、お言葉に甘えて。」


天馬(てんま)はやや照れくさそうに、

だが嬉しそうに椅子に腰をかける。


『どす』『どす』『どす』『どす』


「こちらァァァッッッッッッッッッッ!!!

 当店のサァぁぁぁぁぁビスのぉぉぉぉぉ!!


           『コトッ』


                  お冷です。」

「「あ、どうも。」」

「……………………。」

「……………………。」

「………(らく)さん、これ、飲みます?」

「好き好んでお冷飲んでるワケではないんですよ。」

「ですよね。」

「はい。」


〜閑話休題〜


「それでは失礼しますね。」

「また何か合ったら連絡しますね。」


楽はペコリと礼をし、カフェテリアを後にした。

しばらくして、天馬(てんま)の電話が鳴る。


✆) ) )

「はいこちら、JECアズマシティ支部長 天馬正和(てんままさかず)。」

『お仕事お疲れ様です、先輩。

 蝶野楽(ちょうのらく)との接触は上手く行きましたか?』

「……まあ、なんとか、な………です。」

『……………。』

「ほ、本当ですよ!?」

『……緊張で私語と敬語が入り混じってますけど。』

「……………。」


この後輩………もとい現・部下。実に鋭い。


『で、(らく)はどうだったんですか?』

「ここ2週間の動向についてだが、報告書によると、

 ほとんどをこの図書館に費やしているようだ。

 以前の彼からは考えられない。

 あの事件以降、明らかな内面の変化が生じている。」

『……クロってことですか?』

「それは違うと思う。

 

 …だが、恐らく何かを隠している。

 引き続き、役洲(えきす)に監視を続けさせてくれ。」

『了解でぇーす。』

✆[通話終了]


「いい加減、先輩呼びやめてくれないかなぁ……」



(あしへん)



「なあ、カシ。」

『どうした?』

繁芸獏(しげきばく)を見つける方法は無いの?」

『………見つけてどうする?』

「もう2度と悪さできないようにしてやる。」

『………見つけられんことは無いが、

 今の君では到底勝つことは出来ないよ。』

「何故?」

『君、さては死んでもやり直せると思ってるだろ。』

「傷、すぐに治るし。」

『はぁぁぁぁぁぁ(クソデカため息)

 あのな、それは俺が必死に治してるからだ。

 あんま無理されちゃあ、たまったもんじゃあない。

 それに、君はしばらく戦うことは出来ない。』

「なんで戦えないと分かる?」


カシが指パッチンをする。


「ヴッ!?」

(らく)さん!?」


突如全身が、心臓のように脈打ち、

吐き気を催すほどの激痛に襲われ、地に伏す。

心配した司書さんが駆け寄るが、

……まずい。上手く呼吸出来ない。


「な…………に………………。」

『代償だ。君の身体は、俺が繋ぎ止めてるだけで、

 既にズタズタでバラバラな、ただの肉片の塊。

 俺が痛覚をコントロールしていなければ、

 まともな生活を送ることさえ難しいんだよ。

 これに加え、君の()()のリスクがある。』

「そ………ういえば、

 あの…爆破予告の時。能力が使えなかった。」


ヨロリと起き上がり、司書さんに礼を言い、着席。

ざわざわしていた常連も、読書を再開する。


「で、お前は俺に何をした。」

『能力を封じたんだ。』

「どうして?」

『危険だからだ。』


カシが一冊の本を取るように指差す。

【能力の変容について】という医療の本だった。


『君の能力は【誰かから能力を借りてくる】こと。

 それは君自身で、なんとなく理解しているだろう。

 だが、能力には必ず代償が伴う。分かるか?』

()()()()のことか?」

『そう。だが、君の解釈は間違っている。

 君のそれは、【運不足】によって起こったものだ。』

「待て、待ってくれ。話が難しくて何も分からん。」


カシは一瞬黙り、

俺にも分かるように説明しようと考えた。


『要するに、能力の使用は極度の【運】の不足を招く。

 例えるならば、【死相】ってやつだろうか。

 望んだスキルを得るために、

 生死に関わるほどの運を消費しているってこと。

 これは【能力の変容作用】によるものでーー』

「分からん。簡潔に。」


だが、全く伝わらない。

カシはやがて思考を放棄した。


『次、能力使ったら身体が爆発四散して死ぬ。』

「なるほど?」

『だから絶対に能力は使わせないし、戦わせない。

 宿主が死ねば、俺も死んでしまうからな。』

「でもそれじゃ、神を殺せなくない?」

『この制限は一時的に設けたものだ。

 俺の“力”は()()()に来る時に底を尽きた。

 俺の力が完全に回復すれば、

 君は今までの比じゃないくらい強くなれる。』

「………………。」

『ま、それまでは大人しくしてろってこったな。』

「…………………。」



(みみへん)



〜♪

「あ、もうこんな時間か。」

『今日はここまでにするとしよう。』


閉館のチャイムを背に、(らく)は図書館を後にした。


「……………。」

『浮かない顔だな。今の生活は不満か?』

「…まあね。」

『…そうか。』


仕事がない。自由もない。

こんな退屈な日常を不満と言わずして何と言おう。


『!』


カシが素早く後ろを振り返る。

同時に、必死の形相で俺に何かを伝えようとした。


『逃げ―――


だがその瞬間、

首から下が()()されたように動かなくなる。


「見つけたぞ、蝶野楽(ちょうのらく)!」

「誰だお前!」


金属のように(つや)やかな黒い髪。クリーム色のつなぎ。

異質さを放つ、腰に提げた玩具のナイフ。不健康な肌。

勘だが、この男は、恐らく………。


「…お前は、同業者か。」

「そう!俺ァ、何でも屋……。戦闘専門のな!」


(それって“何でも屋”とは言わなくない?)


「お前の首にァ、100万の報酬が懸かってンだ。

 俺の明日の為に、大人しく死んでくれァ!!!」

「ふッざけんじゃねェ!依頼主は誰だ!」

「守秘義務だァ」

「クソッタレ!」


こいつの能力はどういうカラクリがあるんだ?

それがわからないと、この拘束を抜け出せない。


最も恐れていたこと。それは奇襲。

ある程度秩序が保たれているとしても、

生命の危険はすぐそばにあるのだ。

この【能力が当たり前に存在する世界】では。


「おいカシ!」

『ん?』

「もう“戦っちゃいけない”の次元を超えたぞ!

 力を使わないと死ぬ!制限を解除してくれ!」

『断る』

「な!?」

『先程説明した通り、君は、次に能力を使用し、

 “唱えて”しまったら、()()微塵(みじん)になって死ぬ。

 勿論(もちろん)、感覚と肉体を共有する俺も死ぬ。

 よって制限はまだ解放できない。』

「でも!」


「ごちゃごちゃ独り言垂れてンじゃあねェよ!!」


誰が信じられようか。

俺の視界は今、宙を大きく旋回して舞い、地に落ちた。

切られた?俺の首が?


死ぬ。やばい。

やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

死んでたまるもんか。こんなところで、死んでたまるか。



こんなところで。




『楽。』




「!」




あれ、生きてる。

もうとっくに死んでてもおかしくないのに。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

言っただろう。『死なせない』と。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「お、俺………生き………て??」

『君の力はまだ返すことが出来ない。

 代わりに、俺の力を使わせる。』

「一体、俺に、何を………。」


『LESSON①! 右手に力を込めろ!』

「いきなり何!? てか、首から下無いんだけど!?」

『いいから念じろ!』


右手に………力を…………


『ドクン』『ドクン』と、胸から、右手へ。

何かが体内を伝って移動する感覚がする。

これが……カシの力か?


「う……吐きそう。気持ち悪い。

 まるでムカデが這い回ってるみてぇな……」

『LESSON②!

 そのキモいのを辺りにぶち撒けるイメージ!』


姿を確認出来ないが、俺の首から下がある辺りに

とてもおどろおどろしい空気が立ち込めている。

それを、肌が、血が、肉が感じている。


「何だァ? なんか空気が重く……気持ち悪ィ」


『LESSON③!

 羽のような軽さ、柔らかさのイメージ!!』


直後、これまでの肉体が拘束される感覚が無くなる。

今はまるで、羽毛布団の中にいるような感覚だ。


「なッ!? なァァァにィィィ!?!?

 俺ッ………俺の【空気の牢】がァァァァァァ!!!」


くーきのろー……。空気の「()」!

なるほど、アイツは空気を固めることが出来るのか。


…いや、それだけじゃないかも。

アイツは今、玩具のナイフしか所持してない。

俺の首を()ねるには不十分すぎる。

これらの推測から、こいつの能力は………。


「【硬化】か!」

「てめー、何故まだ生きてンだ!

 しかも、なんッで能力がバレてンだァァァ!?」


能力は【硬化】。

初対面からずっと左手はこちらに向けられていたことから、恐らく、(てのひら)で触れたものを硬くする。

だから玩具のナイフで俺の首を切れたんだ。


「!」


俺の首が、何かに拾い上げられる。


『一時的に身体を乗っ取った。』


俺の身体が、俺の首を持ち上げ、

(かぶと)を被るようにがっしりと。首をくっつける。


「まるで、俺、ゾンビみてえだな。」

『不満か?』

「………いいや、全然!」


「もう、なんッなんだよ!訳わかんねェ。

 死んでくれ、頼むから、死ねェ!!」


半ば錯乱しながら、刃物を振り回し突っ込んでくる。

まるで、何かを恐れ、何かに焦っているように。


「①、右手に力を込める。」

『!』

「②、辺りに、ぶち撒ける、イメージ」

『いいぞ、やってやれ。』


「うらぁぁぁぁぁぁぁッ!死ねッ!」

「③、金属のような、硬い壁のイメージ!!」

「ッッッッッへぶ!!!!」


『ドカン』と音を立て、

男は見えない壁に勢いよくぶつかる。

ナイフも粉々に砕ける。


分かった。【変容】だ。

カシはモノの“状態”を変えてるんだ。


【空気の牢】を、柔らかい空気の羽に。

大気を、不可視の硬い壁に。

――――――そして、俺を、不死身の化物に。


…よし。

相手の能力の正体は分かった。

カシの能力の扱い方も分かった。


「ッッッッッそれは、

 俺の専売特許だろォがァァァ!!!」


あとは、こいつを、片付けるだけ。


「①力を入れる」

「くそッがァァァァァァァァァァァァ!!!」


「②ぶっ放す」

恐らくこれは範囲指定。

【変容】を起こす範囲を定めるためのもの。


「喰らえ」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

巨大な拳のイメージ!!!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あァァァァァァァァァァァァァァ!!!?」


男は見えない攻撃に戸惑いながら、はるか遠方に吹っ飛ぶ。

そして、気絶……したようだ。


(俺、勝ったのか…………?)

安堵(あんど)したのも(つか)の間、激しい吐き気に襲われる。


「ーーヴヴォエエ…………」

反吐は赤く染まっている。紛れもなく血だ。


『やはりダメか。』

「何がだ……」

『能力の()()使()()は不可能ってことだ。

 肉体の維持と、【変容】の使用は無理らしい。』

「どおりで……。」


身体の末端の震えは止まらない。

血流のうねりは、「生き延びた」ことを実感させ、

同時に、「死」の身近さが、じわりじわりと。


『……楽? 楽!?』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

気持ち悪い。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ハッ!」


気づいた時には、病院のベットの中だった。

横に居たのは………。


「! 楽……。良かった! 本当に……

 看護師さん!看護師さァァァァァァァァァん!」


親友・(みなと)

目の下は、涙で赤く()れている。

それを見て、少し泣きそうになった。


大切な人がいる。

俺のために泣いてくれる人がいる。


和やかな雰囲気に包まれる病室は、

まるで、【かつての居場所】によく似ていて。


「…………ッ」

「どどどどど どうした楽!?

 泣いてるぞ! どっか痛ぇのか!!!

 待ってろ。すぐに看護師さん来てくれるぞ!!」


とても、懐かしくて、温かかった。



⇐to be continued

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