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GOOD LUCK  作者: 阿寒湖まりも
第1楽章「黎明爆破」
23/38

番外「深夜、『Ⅹ』の動向。」

この話は、『GOOD LUCK』の本編でカットされた内容です。


19-20話の蝶野楽と繁芸獏の戦闘において、

『秘密結社Ⅹ』が裏でどう動いていたのか。


興味のある方は、是非ご覧ください。

御門渡(みかどわたる)との戦闘を経て、

クタクタになった一元湊(いちもとみなと)御門移(みかどうつる)井寺伴助(いてらはんすけ)

そして、鬼無瀬(きなせ)ロガの4人は今、


「「「・・・・・。」」」


焼肉屋さんに居た。


何故こんなことになったのか。それは少し前に遡る。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『秘密結社Ⅹ』アジト(兼ロガ宅) 時刻 23時40分


「そういえば、あん時言ったッスよね。

 『今度焼肉食べに行こう』って。」

「ああ、言ったな。」

「焼肉!? 焼肉食べれるのじゃ!?

 行きてェ!!! 今すぐに行きてェ!!!!」

「今すぐは無理じゃねぇスか?」

はしゃぐ井寺(いてら)に、(うつる)が冷静に言い放つ。


「嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃ!!!

 行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい!!!」

「食べ盛りの子どもか。」

ロガが呆れた顔をしながら、ポケットを探る。


「それ焼肉屋さんのクーポンッスか?」

「ああ。この前 知り合いから貰ってな。」

「……ん?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

焼肉屋『煉獄』 レギュラーコース50%OFFクーポン


           使用期限:H30.10.28まで

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……ボス。これ、もう使えないんじゃ…」

「まだだ。」

「え?」

「諦めるにはまだ早い。」

「ボス?」「ボス?」「ロガ殿?」

まずい。ボスが大暴走する。

この場にいる全員がそう思った。だが時すでに遅し。


「【ワープホール】」

こうなってしまったボスはもう、誰にも止められない。


「ちょっと!!

 おれっちの能力を勝手に使わないでほしいッス!!!」

「社長命令だ。使わせてくれ。」

「ボス!! このクーポンの文字読めないンスか!?

 これってどっからどう見ても今日の日付ッス!!!」


「それがどうした?」

「「「!?」」」


「そもそも『今日』の定義は何だ。

 『今日』の終わりは午前0時だろう。

 とすれば、あと20分も余裕がある。」

「そういうこと言ってないッス。

 店側に迷惑が掛かるから止めようって言ってるんスよ。」

「迷惑? そんなもんは掛からん。」


「なぜなら……」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『商品ヲ、オ取リクダサイ。』

「あ、おれっちが取ります。」


御門移(みかどうつる)が注文した商品を受け取り、

横で一元湊(いちもとみなと)が頬杖をついて座り、

向かいで鬼無瀬(きなせ)ロガがひたすら肉を焼き、

その隣で井寺伴助(いてらはんすけ)がひたすら食う。

完璧な連携が為せる技である。


「しっかし、知らなかったッスよ。

 まさか夜遅くまでやってる焼肉屋があるなんて。」

「焼肉屋『煉獄』のオーナーは【不眠】の能力者でな、

 普段の店の諸々はAIロボット達に任せて、

 有事の時だけ対応できるように工夫しているそうだ。

 しかも、コースがレギュラー、プレミアムの2種類あり、

 加えて先払い式だからこそ間に合ったわけだ。」

「まるで案件だぜ、ボス。」


「米がうまい!肉がうまい!」

「はんすけっちは肉に七味かける派か…。

 みなとっちー。甘ダレ取ってー。」

「……はい。」



(しょくへん)



『商品ヲ、オ取リクダサイ。』

「…誰ッスか。『山盛り塩キャベツ』頼んだ人。」

「んっ!!!」

井寺(いてら)が一切の躊躇無く、曇りなき眼で手を挙げる。


「はんすけっち。野菜じゃなくて肉を食べなよ。」

「私は別に野菜を禁じてはいないよ、(うつる)。」

「あ、そうッスか。」

「それにたしか、井寺(いてら)が居た時代は

 食糧難でロクなものが食べられなかったと聞く。

 今くらいは好きなものを食べさせてやろう。」

「ボス…!」「ロガ殿…!」



「じゃあこの黒毛和牛を

「たわけ!!! それはプレミアムコースのメニューだ!!!

 絶対にそれを頼むのではない!!! 分かったか!?」

「ちぇっ。ドケチ殿。」

「……《能力全開放》。」


ロガが赫灼のオーラを纏い、空気が揺らぐ。


「バイバイ、はんすけっち。

 短い間だったけど、一緒に働けて良かったッスよ。」

「ワシを勝手に殺さないで!!!

 (みなと)殿も何か言うのじゃ!!!」

「…ん? ああ。」

一元湊(いちもとみなと)が間の抜けた返事をする。


「……どうかしたのか? 箸が進んでいないよ。」

「(良かった…! ロガ殿の攻撃が止まったのじゃ!)」

九死に一生を得た井寺伴助(いてらはんすけ)がほっと息をつく。


「俺……(らく)が心配で…。」

「ふむ。」


ロガが小型のプロジェクターを取り出し、

焼肉屋の壁に『アズマ展望塔 展望台の映像』を映し出す。


「!」

「戦いへの干渉は認めないが、観戦くらいは許可しよう。」

「……ありが……とう…ございます?」

「すっごい顔してるッスよー、みなとっち。」

「モグモグ!モグモグモグモグモグモグ!

 (そうじゃ! もっと楽しい顔をするのじゃ!)」

「・・・・・。」



(しょくへん)



「・・・・・。」

『映像』はずっと変わらない。

2人の男がすやすやと眠っているだけだ。


「何も喋らなくなっちゃったッスねー。」

「構わん。肉を食え。」

「前から思っておったが、ロガ殿は、

 こう……頭脳派の脳筋でござるな。」

「悪口か?」

「褒め言葉でござる!!!」


「…にしても爆睡してるッスねー。」

「いや。これは【魂の対話】だな。

 蝶野楽(ちょうのらく)が数時間前に言っていただろう。」

「ああ、あれッスね。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

やります。やれます。やってみせます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「魂に訴えかける?だかなんだか言ってたッスね。」

「良く言えば『説得』。悪く言えば『洗脳』の類だ。

 精神に干渉する行為は相手に絶大な影響を及ぼす。」

「それってどのくらいすごいんスか?」

「たけのこ信者がきのこ信者に改宗するレベルだな。」

「国家転覆レベルでやべーじゃねぇッスか!」

「その分 リスクも大きい。()()と形容した通り、

 二者間では相互的な干渉が行われる。

 ミイラ取りがミイラになる可能性だってあるんだ。」

「ほぇ〜。……それ(らく)大丈夫ッスか?」

「随分と長引いてるようだから、どうだろう。」

「「・・・・・。」」

「そろそろ3時だ。退店するから準備を。

 おい、井寺伴助(いてらはんすけ)。出るよ。起きなさい。」

「…むにゃ……あと5年……」

井寺(いてら)が被り物の上からでも分かるほど

露骨に不機嫌になりつつ、ゆったりと身体を起こす。


「……ん? 2人とも目覚めてねぇスか?」

「対話が終わったらしいな。

 帰ってから続きをみればいいだろう。いくぞ。」

「・・・・・。」



(あしへん)



『秘密結社Ⅹ』アジト(兼ロガ宅) 時刻3時15分


「ロガ殿、今日泊まって行ってもいいか?」

「帰れ」

「酷いのじゃ! もうロガ殿なんて知らないのじゃ!!!」

井寺伴助(いてらはんすけ)が玄関のドアをぶち破って退出する。


「・・・・・。」

ロガは口をぱくぱくさせながらフリーズしたが、

すぐに正気を取り戻して彼を追いかけ、

10秒も経たずに帰って来た。


「はんすけっちはどうしたんスか?」

「しばいた。」

「そースか。」

井寺伴助(いてらはんすけ)はお調子者のトラブルメーカーだ。

皆で集まるたびに何かしらやらかしては、

こうして鉄槌を下されている。懲りないやつだ。



「みなとっちー!」

「・・・・・。」

「…まーだ見てるんスか?」

友達(ダチ)として、すぐにでも助けに行きたいけど、

 ボスに『邪魔するな』って言われてるから行けない。

 ならせめて俺は、友達(ダチ)の勇姿を見届けたい。」

「……ふーん。そう。」

御門移(みかどうつる)一元湊(いちもとみなと)の横に腰を下ろす。


「みなとっちがそうするなら、

 おれっちも一緒に見てようかな。いい?」

「もちろんだ。」


画面の奥で、蝶野楽(ちょうのらく)はあちこちを右手で触れ回っている。

やがて動きを止め、なんと、消えた。


「あれ? 消えちゃったよ?」

「【透明化】なんて使えたっけ? …まあ今更か。」


そして(らく)の虚像が現れる。


「なるほど、デコイか。」

「なかなかやるねー。」


ついに繁芸獏(しげきばく)蝶野楽(ちょうのらく)の最終決戦が始まる。


「おい。そろそろ帰って寝なさい。

 さもないと、翌日が眠くて辛くなるよ。」

「「今いいところだから黙ってて!!」」

「・・・・・。」

ロガは説得を諦め、部屋の隅で読書を始める。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

本当の予定なら、今日、あと2時間と30分後、

()()()()()()()『芸術品』の数々を爆破する予定だった。

そしてこれは、火力が足りなかった時のダメ押し。

だがしかし、今ここで計画が失敗したならば、

私はもう、何のために生きてきたのか分からなくなる。

だから、私はこの切り札を使う。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「…どうしてコイツ、自分が優勢になると

 ペラペラと重要なことを喋るんスかね?

 計画を邪魔してくれって言ってるようなもんッスよ。」

「止めてほしいんじゃない?」

「ふーん。」

御門移(みかどうつる)が立ち上がり、鬼無瀬(きなせ)ロガの方を向く。


「ボスー。」

「なんだ。」

「【千里眼】貸してー。」

「……邪魔はするなと

「分かってるッス。でも、バレないように

 裏からサポートするくらいはいいッスよね。」

「……はぁぁぁ。」


ロガは『世界の名所100選』という本を閉じ、

立ち上がって(うつる)の額に手を当てる。


「5分だ。いいな?」

「いいッスよー。」

(うつる)が【千里眼】で地中を模索する。

『記憶の固執』、『バベルの塔』、『メムノンと蝶』、

『埴輪 掛甲の武人』『森の掟』『ゲルニカ』…etc

多種多様な芸術作品が、

ご丁寧にも透明なポリ袋に閉じ込められて、

寂しそうに埋まっている。


「【ワープホール】…《多重発動》!!」


5分どころか、3分も掛からず回収が終了した。


「お疲れ様。(うつる)。」

「回収したやつどうします?

 これを粉砕するのは気が引けるんスけど…」

「水かけてみなさい。」

「?」


適当な絵画を【ワープホール】から取り出し、

蛇口から汲んだ水を端っこに掛ける。すると…


「溶けたッス。」

「じゃあ偽物だ。破壊せよ。」

「了解。」



「まずい!!!」

一元湊(いちもとみなと)が声をあげる。

プロジェクターで映し出された映像では、

蝶野楽(ちょうのらく)繁芸獏(しげきばく)に拳銃を向けられていた。

避けられるだろうか。いや、距離的に難しい。


「念の為、もう一度言っておく。

 絶対に2人の戦いを邪魔するな。」

「この戦いで、蝶野楽(ちょうのらく)は勝つのか?」

「ああ。」

「……まさか、相打ちなんて、言わないよな?

 ボスのこと、信じていいんだよな?」

「……ああ。もちろん。」


今ので確信した。

今助けに行かないと、俺は絶対に後悔することになる。


(うつる)!!!」

「はいはい、そうなると思ってたッスよ。」


【ワープホール】から(みなと)が上半身を乗り出す。


「……無理には止めないんスね、ボス。」

「・・・・・。」


この後、一元湊(いちもとみなと)御門移(みかどうつる)の2名は、

鬼無瀬(きなせ)ロガによって滅茶苦茶叱られた。


理由の1つは、蝶野楽(ちょうのらく)の戦いに干渉したこと。


もう1つは、

井寺伴助(いてらはんすけ)が焼肉屋『煉獄』で購入した、

忘れ物である『七味唐辛子』をあんなことに使ったこと。


⇐ go to the hell.

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