「快適クラブの一員です」
空調の効いた一室で
電気を消しながら横たわっている
そうここは、快適クラブ
ここでの暮らしも随分と慣れてきた
あの日々はたった数ヶ月前のことだというのに
遠い遠い過去のように思える
この環境に慣れきったいま、昔を思い出す
この日々とは全く違う、あの日々を過ごしていた頃の自分は
斜に構えていたけれど
それでも前は向くようにしていた気がする
ここでの生活はさほど苦ではないから
あの頃の自分からますます遠ざかっていく
遠い遠いところまでいく
この状態に甘んじていながらも、昔を思い出す
この場所とは真反対の、あの場所に身を置いていた頃の自分は
時折後ろを向いたりしたけれど
なるべく前を向くようにしていた気がする
斜に構えていようとも
後ろを向いたこともあっても
前を向くようにしていた
ここでの暮らしは文字通り快適なのだが
いかんせん電気が点いていないので
俺はいま前を向いているのか後ろを向いているのか
それすらもわからない
なので電気を点けられる場所を探したい所なのだが
想像通り真っ暗な部屋の中なので
俺はどちらの方向をむけば見つけられるのか
それすらもわかっていない
変に探して足の小指とか肘の神経近い部分をぶつけるのも痛いし
そうなるのも癪だから
こうして横になってずっと目を閉じ続けている
それでも快適なんだからこのシステムは凄い
目を閉じ続けているから
生きているのか死んでいるのか
よくわからなくなる
快適すぎて麻痺しきったから
何が何だかさっぱりわからない
ずっと目を閉じ続けて
いつかまた目を開けられる時が来たら
視界も暗さに慣れきっているから
その時しっかり探してみよう
その時が来なかったら来なかったで
そういう人生だったってことにしておく
納得できるかはわからない