第八話 決着。そして、
「おーい!おーい!聞こえる〜?」
「うっ、うう。聞こえてるよ、一応」
「それならよかった。痛い所ある?」
あの後、そのまま少女は気絶してしまった。それと同時に、お互い服が、私は元々着ていた服に、少女は、元々着ていたであろう服に戻った。
全く、意味がわからない力だ。
「ない。てゆーか、話し方全然違くない?」
「本来は、こっちだよ。さっきはちょっとハイになっちゃってただけ。」
少女は、ふーんといってそのままゆっくりと起き上がった。背中についた土をポンポン払いながら、口をひらく。
髪の色は、さっきまでのような奇抜な色ではなく、なったものの、まだ少し赤みがかかっている。
そういう私も、少しピンクがかっているような?
「なんで、あたしのこと殺さなかったの?すごい怒ってたじゃん」
「うーん。だって、洗脳されてたでしょ、あなた。それに、あの『発動』には、洗脳を解く効果が、奇跡的にあったの」
「よく気づいたねぇ。そうだよ。人を刺して回ることに疑問を抱かないように、コントロールされてたみたい。好きだよ」
「見えたんだよ、あなたの中、魂がね。黒いのが張り付いてた。それを切り落としただけ」
「こわっ。あの槍やばすぎでしょ」
「それに、この力は、シオンちゃんを、色んな人を救うために使うって決めたから」
「アナタって、随分なお人好しなんだね。普通、槍で胸突き刺した人のこと、助けたりしたいよ。愛してる」
合間合間に、なんか言ってる気がするけど無視しよう。
「もういいよ。さっきのことは水に流そ。ほら、私も、酷いこと言っちゃったし…」
「大丈夫。それよりさ、これからどうする気?まぁ、大体わかるけど」
そう、これから。
この、よく分からない力で、一番にやるべきこと。
それは―
「単刀直入にきくけど、シオンちゃんがどこにいるか分かる?」
シオンちゃんの捜索と洗脳解除。
「微妙だなぁ。一応私の持ってる情報だと、そのシオンちゃんっていう娘は、私のことを刺した段階では、もう、なんかよく分からない組織に捕えられていて、そこから脱走してきてた。みたいな感じだったよ。まぁ私もさっきまでその組織の一員だったんだけどね」
「それで、そのっ」
「因みに、組織の本拠地はわからないよ。残念ながらね。目的も何もかもがわからないんだ」
情報が、少なすぎる。まぁ日本中探せば見つかるだろうが、少しでも絞りたい。
「ちなみに、あなたが刺された場所ってどこ?」
これで少しでも絞れれば…
「ん?広島だよ。私、家がそっちなんだ」
ふーん、広島。広島。
「広島っ!?」
「そ。広島」
「ちょっと待って、ここ静岡だよ!?えっ何できたの?」
「えっ、歩き」
「歩きぃ!?」
そんだけ、何にも考えず歩いちゃうわけでしょ。洗脳怖すぎぃ。
「あのさ、こんだけ話してまだ名前聞いてなかったんだけど、アナタ、名前は?」
そういえばまだ名乗ってなかったな。
「私は、太呂川 桃。モモでいいよ。あなたは?
「モモ、いい名前だね。こんないい名前をつけるご両親に挨拶しに行きたいな。婚約の。ま、それはそれとして。私の名前は、勝山 炎。ホムラってよんでね」
もうツッコミは、入れないでおこう。
「よろしくね、ホムラ」
「それで、なんだけどさ。モモは、今からシオンちゃんの捜索を始めるでしょ。そして、多分その過程で
、あたしみたいなな危ないヤツに会うことになると思う」
うん、確かにホムラは、二重の意味で危ないかもしれん。
「だからさ、一人より二人の方がいいと思うんだ!ほら、数的有利ってヤツ?だから、その…一緒に行っちゃうダメかな?」
ホムラの、突然の提案に驚く。
「別にホムラがいいなら、いいけどさ、なんで初対面の相手に、そこまでしてくれるの?広島に家もあるし、家族もいるんでしょ?」
大体わかるけれども。
「あの…。あたし、モモちゃんに助けられてさ、その〜、恋しちゃったんだ。モモちゃんに!だから、ね。好きな人のことを助けてあげたいんだ」
うん、知ってた。
「でもほんとにいいの?好きな人の、彼女の捜索なんて」
「いいよ!全然!探してる間に寝取っちゃから!」
おいおい。それを大きな声で、しかも本人の前で言うなよ!
「まぁ、いいや。じゃあよろしく。ホムラ!」
「こちらこそ!モモ!」
こうして、私たちの長い長いシオンちゃん捜索の旅が、始まったのだった。
九話執筆中!