第七話 このチカラ、誰のために?なんのために?
「『武創』使えんのかよ!」
これは、反射的ででた本音だ。
この速度からの急制動は、不可能!
でも、あの娘の得物は刀で、使用は初めて、のはず。ならば、多少の危険は承知してこのまま攻撃する!
「どりゃあ!」
分かる!
今まで刀なんか一回も触ったことないのに、扱い方が手に取るように分かる!
合わせろ、合わせるんだ。敵の攻撃に!
ふぅー、ふぅー。
ここっ!
タイミングを合わせ、刀を斜めに振り下ろし、相手の持っている杵の上の方に当てる。
当たった!
さらにそこから全力で振り下ろし、相手の体制を崩す。狙いは、これだ。倒れた所に、攻撃を加え、倒す。
「やば!まずいっ。『発動』武愚無苦っ」
「うっ!?」
追撃をするため、次の攻撃の予備動作に移った瞬間、今度は青色の輝きが現れ、突如として地面がぬかるみ、体勢を崩してしまった。
「あぶなっ。死ぬ方と思った〜」
その隙を突かれ、相手には、距離を取られてしまった。
ちっ。今のは、ただ相手の体勢を崩しただけであり、崩した後の攻撃に重きを置いていたため、ろくなダメージを与えることができなかった。
ぬかるんだ地点からは、抜け出すことができた。
相手は小回りの効く技が多い…どうしようか。
「はぁはぁ。何回も聞くけどさぁ。はぁ。なんでそんなに強いわけ?目覚めたばっかだよね?教えてよ!なんで強いかさ」
「特別に教えてあげるよ。それはさ、愛だよ。愛。シオンちゃんへの。今、私は死ぬわけにはいかないの。悲しませたくないの。わかった?」
「シオンちゃん〜?そんな理由か〜。ってか、その言い方っ!彼女いたのか〜。残念。君、めっちゃタイプなんだけどなぁ」
「生憎、私はアンタみたいなのタイプじゃないんだわ。アンタ、恋人とかいなさそーだもんな」
「やかましいわ!ん?ちょっと待って。シオンちゃん?そいつ、名字なに?」
「あっ?そんなことは聞いて何に…。御仁島だよ。御仁島 紫媛。それがどうし―」
「知ってるわ、そいつ。」
「は?」
反射的にでてしまった。
「なんで?」
純粋な疑問をぶつける。」
「えっ。だって、あたしの能力目覚めさせたの、そいつだもん。歩いてたらさ、急に槍でグサーって。んで、気づいたら体が勝手に…あれ?勝手に?てかなんで私は…うっ、ああっ、おはっ」
ちょっと様子がおかしいが、今はそんなことはどうでもいい。シオンちゃんがどうしてそんなことを?
「それって、いつの話?」
「うっあぁ。ん?なんの話?あっ、いつの話かってね。確か一週間くらい前かな?」
「一週間前!?」
おかしい!おかしい。事件が起きて、シオンちゃんが、消息を絶ったのが三週間前。その間なんの情報も見つからなかった。なのに…
「ねぇ、それ本当なの?」
「ホントだよ。御仁島なんて名字珍しすぎて忘れるわけないよ。」
コイツの言ってることは、本当なのだろうか。コイツは、シオンちゃんが、消息不明になっていることなど知らないはず。そんな、すぐバレるような嘘、わざわざつくのか?
「シオンちゃんを最後に見たのは、どこ?」
「うーん。これ以上は無理かなぁ。アタシのモノになってくれれば考えるかも〜」
「誰が、お前なんかの。いいよ、力づく―」
「力づくって言うけどさぁ。間違って殺しちゃいましたってなったらどうするの?悲しませたくないとか言ってたけどさぁ、大切なカノジョが人殺したら、悲しむんじゃないかなぁ?」
「うっ」
確かにそうだ。アイツの言っていることは、正しい。じゃあどうするか。どうすればいい?
このチカラ、どう使えばいい?
「まぁいいや。おしゃべりはおしまい。もう、本気でいっちゃおうかな!『付与』業火拳乱!」
緑色に輝き、今度は、少女の両手が、紅く燃え出した。
「この手で触ったものは、全部燃えちゃうんだ。さらにさっきの、浸辛通痛の効果も合わさる。まともに食らって、意識を保てる人間はいないと思うよ。」
相手は、またしてもこちらへと接近をしてくる。今度は、食らったら、本当に終わりだし、なんなら刀も燃えてしまうかもしれない。
悲しませなあように、か。
槍を刺されたときの話をしてるときのことを考えれば、アイツのことも大体わかった気がする。そして、シオンちゃんもそれと多分同じ。
私は、決めた。
このチカラは――
殺したり、人を傷つけるためのチカラじゃなく、人を救うために使うよ。私たちみたいな人間を作らないためにも。
「シオンちゃん。と、その他の人たち。」
そして…
「お前も、な」
左手が、青く輝く。
「『発動』桃源流 一桃両断」
力を纏わせた刀を横へ全力で振る。
「はっ!そこじゃ当らなっ…あっ!?」
『発動』によって生じた斬撃波が、少女に直撃し、その身体を切り裂いた。
第八話執筆中!