第六話 殴戦
落ち着け。相手の能力は、まだ分からない。けど、『武創』を使ってきていないことから、武器は、使わずに、拳で殴るのが主なダメージソースとなるだろう。
なら!それを封じてしまえば勝ち!
今度は、緑色に輝く結晶が少女の手の中に生成される。
「『付与』浸辛通痛」
なんだ?今度は、緑色に光ったが、まぁいい。
今は、ただ殴ることだけを考えるっ!
「いいよ、来な」
二人の間の、静寂が破られた。
最初に動いたのは私だった。この着物、予想外に動きやすい!たぶんこの格好のままでもマラソンが走れる。
私は、全速力で相手との距離を詰る。だが、私もバカじゃない。そのまま真正面から行ったら、普通に避けられてしまうだろうし、あの、モチつくやつで、ぶん殴られてしまうかもしれない。
「うっ」
絶対に杵が当たらないであろうギリギリの地点で左前方へと飛ぶ。普通の人間には、できないだろうが、今の私なら届く!そのまま、体勢を整えて、目標とした木を、持てる脚力で全力で蹴るっ!
木の位置は、アイツの後ろ。背後からの攻撃。
ハッとしたような顔でアイツは振り向く。
だが、もう遅い!
『解放』による、身体強化と、木を蹴ったことによる加速を乗せた拳。ただでは、すまないだろう。
「食らえッ!」
拳の先で、頬の少し柔らかな感触を感じる。
やった!当たっ、
「クッっ。あガァぇ」
モモのパンチをモロに食らった少女は、そのまま、また宙を舞い、吹っ飛ぶ。だが、今回は、空中で体を捻り、ギリギリ着地する。
痛いッ。なんでだ?さっきは、こんなに…。加速したのが原因?だけど…
少女の顔に拳が触れた瞬間、モモの体には、とてつもない激痛が走った。それは、さっき、槍を刺されたときに、匹敵する痛みであった。
「アナタ、カワイイから特別に教えてあげる。さっき、私が『付与』…ほら、緑色のあったでしょ。あれの能力でね、他人が私の身体に触れた瞬間、焼けるような痛みが走るの」
少女は、鼻血を流しながらの笑みという不気味な表情で言う。
「殴る、つまり身体に、嫌でも触れなければいけない闘い方で、痛みに耐えながら闘える?まぁ、できないよねっ。」
杵を、しっかりと構え直す。明らかな臨戦体勢。
「じゃあ、大人しく倒されて♡」
ついにきた。あちらから、こちらへ向けての攻撃。
どうする?やせ我慢でこのまま殴り続けるか?いや、無理だろう。私は、そこまでイかれていない。
だとしたら、どうすればいいか。
簡単だ!直接殴らなければいいだけの話。
さっき、アイツがやってるのを見た。見よう見真似だが、いけるか?
今もなお、アイツは、私に接近し続けている。
時間の余裕は、1秒たりともない。
もう一度、全神経を集中させ、魂からの力を左腕に集める。
「できたっ!」
光り輝く黄色の結晶!
「『武創』桃源刀・斬鬼!」
言葉を放った瞬間、結晶は、一本の刀へと、姿を変えた。
第七話執筆中!投稿は、明日くらいにできればと思っています。