第五話 解始
「グフォエっ」
決まったッ。これ以上ないクリーンヒット!
憎い顔に、渾身の一発をぶち込んでやった。
少女の身体は、その勢いで宙を舞い、木にあたってそのまま地面に落ちてきた。
「ゲホッ。なんで?なんでっ?私、さっき完璧に刺したよね!?槍!なんで攻撃してくるわけ!?」
「しらねぇよ。いや、ごめん。知ってるわ。お前にはわからねぇだろうがなぁ!」
死に際に見たあの力。多分コイツが使ってるのと同じ力だ。なら!
落ち着け、冷静になるんだ。神経を自分の内側、魂に秘める力に全てを集中させろ!
掴まえろ!魂を、力を!
――掴まえた!いけるっ!
捉えた力を、魂から身体に流し、それを左手の中に集める。
できた。私の能力の能力の結晶。
紅く輝くそれが握られた拳を私は、前に突き出す。
「『解放』」
言葉を発した瞬間握られた結晶は、より輝きを増し、その輝きは、私を包む。
あぁ。私の魂からどんどんと力が解放されていくのを感じる。
結晶が力を使い果たして消滅するのと同時に、私の『解放』も完了する。
さっきまで着ていた服はどこかへ消え、アイツが着ているような着物っぽい服へと変化する。毛量もちょっと増えたような。
まぁ、そんなことはどうでもいい。今は…
「さぁ、これでパワーは同じだな」
目の前にいる奴をぶっ飛ばすだけだ!
ありえない!おかしい!
だってアタシ刺したじゃん!ブスって。なんで攻撃してくるわけ!?しかも『解放』まだしてるし!
さっき刺した槍――醒操鬼槍には、2つの効果ある。
一つ目は、眠っている能力を目覚めせる。
二つ目は、魂に鬼の能力を刻み、その能力で、新たな仲間を増やすように、精神と思考をコントロールする。
通常、仲間になればお互い攻撃をすることはできなくなる。
だけど…この娘は、攻撃をしてきた。
この娘の場合、一つ目の能力だけが発動している。一体なぜ?
「はぁ…しょうがないな、残念だけど」
だが、効かないものはしょうがない。ここまできたら、仲間にするのは諦めて今後の障害にならないよう始末する他ない。
タイプの子を手にかけるのは正直嫌だが、鬼の精神操作に抵抗することはできない。
一つ目の効果は効いたんだ、全ての能力に耐性があるわけじゃないだろう。勝算は充分ある。
私が元々持っていて、あの槍によって目覚めさせられた能力を使う。
魂からの力の流れを操作し、手に力の結晶を作る。
『解放』とは違う黄色に輝く結晶を。
「『武創』正撲の杵」
手の中にあった結晶が形を変え、巨大な杵へと変化する。
「その勝負、受けてたとうじゃないか!」
「今からモチでもつく気かぁ?一発でKOさせてやるよ。さっきみたいになぁ!」
こうして、二人の戦いの火蓋は切られた。
第六話もおたのしみに!