第三話 襲来
「モモちゃん!私、モモちゃんのことが好き!」
「私、モモちゃんが不安な顔するのがとても嫌なの」
「だから!私は、モモちゃんが不安にならないように、一人にならないようにしたい。ずっとそばにいたい!」
「親友じゃなくて、恋人として」
「私が彼女じゃ、ダメかな?」
忘れることなど、できる訳がない。
半年前。まだ、冬の寒さが残っていたときのことだ。
私は、この橋の上でシオンちゃんに告白された。
中学校から友達になり、親友と呼べるような仲にまでなった私達は、二人で同じ高校を受験し、見事合格。
そのときは、二人で抱き合って喜んだものだ。
家族がみんな死んでしまったときも、誰よりも私のことを心配してくれた「親友」だった。
あの日、私はシオンちゃんに告白された。
とても嬉しかった。
とてもとても嬉しかった。あのとき、私は、産まれて初めて嬉しくて涙を流した。
こんなにも、自分のことを想ってくれる人がいるのか、そしてそんな私は、なんて幸せなんだろうかと。
私は、泣きながらOKをした。そうしたら、シオンちゃんまで泣き出してしまったのをよく覚えている。
そのときから、シオンちゃんと私との関係は、「親友」ではなく、「恋人」になった。
私の、数ある絶対に忘れることのできない思い出の中で、唯一と言っていいほどの「幸せ」な思い出だ。
そんな、二人の思い出の場所で、私は今から命を断つ。
下は川で、かなりの高さがある。これなら多分、確実に死ぬことができるだろう。
橋の柵から体を乗り出し、下を見る。流れは、少し早いくらいだろうか。
それにしても高いな。
ちょっと、怖…いや、全然怖くないな!
嘘だ。ホントは怖い。怖くないと自分に言い聞かせるだけだ。
どうしたモモ!さっきまで、あんなに死ぬ気満々だったじゃないか!怖くないだろう?今からシオンちゃんに会いに行くんだから!
そんな無意味な自問自答を繰り返していたが、遂に覚悟を決める。
「はぁー」
「逝くか、」
柵に。片足をかけようとしたそのとき。
ブォン。
ガキンッ。
「は?」
真横から何か変な音がした。
一つは風を切るような音。もう一つは、金属音のような音がした。
恐る恐る右を向くが、右には何もなかった。
今度は、左を向くと、そこには…
真っ黒な棒のようなモノが地面にブッ刺さっていた。
自分の体との距離は、ほんの十数センチ。先端は、明らかに尖っていて槍のようだ。
これは何だ?
そのまま視線を上に上げると、何やら人影のようなものが見える。
あれは、女の子か?
「あれ?外しちゃった〜。てゆーか、あの娘メッチャカワイイじゃん。タイプだわ〜」
「パパっと刺して捕まえちゃお!今日からあの娘は私の彼女だ!」
「『武創』 醒操鬼槍っ」
少女の手に、黒い気が集まってゆく。
それは、一本の黒い槍へと姿を変えた。
第四話 襲来② 明日投稿します!