第二話 死望
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「ふぁあ、うーん。あ、朝か」
カーテンから漏れる、淡い光によって、朝だということを察する。
「うぅ。スマホ、スマホ。どこやったっけ…」
……
「あぁ、どっかいっちゃったんだった」
昨日は、ただぼーっとして、壊れた心をさらにすり減らすだけすり減らして、そのままソファで寝てしまったようだ。
朝には、希望が溢れていた。シオンちゃんと、教室で、朝会うことを考えるだけで、眠気は全て吹き飛んでしまった。
けれど、今は違う。
何もないのだ。朝だろうが、昼だろうが、夜だろうが。
愛していた人間を全て失ってしまった私にとって、もう残っているものは何も無い。
時刻は、早朝、5時。まだ朝のニュース番組が始まったばっかだ。
適当に、リモコンをポチポチしたが、大体のどの局も同じようなニュース番組だ。
「……」
「……」
「…死のう」
今、私が生きている意味なんてものは無い。
ただ、惰性で生きているだけ。
なら、希望もへったくれもないこの現世より、あるかもわからない死後の世界…天国とか地獄に賭けたほうがいいんじゃないのかとも思えてくる。
私は、その死後の世界とやらでシオンちゃんと暮らすことに賭けてみることにした。
ただ、「死ぬ」といってもいろんな死に方がある。例えば一番オーソドックスなやり方は、やはり飛び降りではないだろうか。
「飛び降り…」
死に方なんて特に関係ないだろう。別に痛くても一瞬だ。痛いのには、慣れている。
問題はどこで飛ぶかだが、
「飛び降り…飛び降り…」
思いついてしまった。
あるじゃないか。
ある程度の高さがあり、そして、私が死ぬのに最適な場所が。
そうとなったら、善は急げだ。これが善であるかどうかは知らないが。
それにしても、少しお腹が空いた。
昨日から何も食べていないから、当然である。
「腹が減っては、自害はできぬ、か」
「確か、冷蔵庫に…あったあった」
冷蔵庫から、食べかけのシリアルを取り出し、皿に食べる分だけ出す。
「はむっ、うんうん」
これが最後の食事であるが、別にいままで食べたシリアルと何ら変わりのない味だった。
どうやら、心のありようで、味が変わるということは無いようだ。
…どうせ最後なんだし、もう少し良いもの食べればよかったかな?
まぁいいや。
そんなことは、もうどうでもいい。黙々と、シリアルを食べ続ける私。
皿の中に山を作っていたシリアルは、全て私の腹の中に入った。
あと、何かすることあったっけ。死ぬ前に。
うーん。
あっそうだ。
こういうのって、遺書とか書くべきなのかな。
「一応、書いておくか。」
棚から、適当な紙とボールペンを引っ張り出して、適当に書いてみた。
もう、生きている意味がないから死を選んだこと。また、おばさんに迷惑をかけることを許してほしいということ。
まぁ、遺書なんてこんなものだろう。
よし、もうこれでいいや。行こう。
テーブルの上に、今書いた遺書(適当)を置き、玄関に向かう。
おっと。
その前にリビングの電気を消す。
まぁ、別にもうどうでもいいんだけど。
外に出ると、鳥のさえずりと、優しい陽の光が、体を包む。
「うーん、絶好の自害日和〜」
ここまでくると、もう逆にハイになってしまう。
そのまま、自転車にまたがって、目的地に走り出す。
ヘルメットは、しなかった。だって、今から死にに行くのに、命守ろうとしてもしょうがないんじゃないかな。
この、何もない家の近所を見るのもこれで最後か…
ここら辺、シオンちゃんと一緒に、よく歩いたっけ。幸せだったな。
そんなことを考えているうちに、着いてしまった。
私の死に場所に一番相応しい地。
――シオンちゃんに、告白された場所に。