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第七話 ラバノの町


 ――ラバノの町。

 山脈と草原に囲まれたのどかな場所で、辺境の小さな交易都市。


 ゴブリンの洞穴から出発した俺とエルヴィは、幸い道中で大きな危険やトラブルに見舞われなかったことから、おおよその予定通り三日程度でこの町に到着することができていた。

 で、今現在町の大通りを歩いているのだが――


「なんか……人が少ない気がするのは気のせいか?」


 俺は辺りを見回しながら言う。

 ラバノは辺境の町とはいえ、店も家も相当数ある立派な町だ。

 ならば昼間には多くの人で通りが賑わっているのが常なのだが――今俺たちが歩いている大通りは、明らかに人が少なく閑散としている。


「気のせいではありません、です。以前のラバノは、もっとたくさんの人がいた、です」


「ならこれは……まるでゴーストタウン一歩手前じゃないか」


 そう、大通りに限らず町全体から人の気配が消えている。

 だが元々大勢の人々が生活をしていた痕跡はあるのだ。

 まるで、住人が一斉に引っ越しでもしたかのような……そんな感じである。

 そんなことを思いながら歩いていると――俺はふと冒険者ギルドを見つける。

 丁度いい、情報収集も兼ねて顔を出してみるか。


「エルヴィ、俺はちょっと冒険者ギルドに寄っていく。キミは知り合いのところへ向かってくれ」


「え……? で、ですがまだ恩返しが……!」


「ああいや、ここでお別れってワケじゃない。後でどこかで落ち合おう。待ち合わせ場所を決めないか?」


 エルヴィと一緒に冒険者ギルドに入ってもいいのだが、得てして冒険者とは荒くれ者。

 特に来たこともない町の冒険者ギルドともなれば、どんな奴がいるかもわからないのだ。

 そんな場所に女の子を連れていくのは……流石にはばかられるんだよな。


「わ、わかりました、です……。それでは、後で『ヤーコブ人形店』にというお店に来てください。私はそこにいます、です」


「わかった、それじゃまた」


 エルヴィから大雑把な店の場所を聞いた俺は、一旦彼女と別行動となる。


 で、さっそく冒険者ギルドに入ったワケ……なんだが……。


「うぇっへっへ、なあいいだろドロテアちゃ~ん。今日こそ俺とアルコールワンナイトフェスティバル決めちゃお~ぜぇ~?」


「あ、あの、困りますガスさん、本当にやめてください……!」


 冒険者ギルドの中では、坊主頭の冒険者が受付嬢に絡んでいた。

 どうやらその冒険者は酔っぱらっているらしく、片手に酒瓶を持っている。

 おまけに体格も大きく如何にも強そうな見た目であるため、小柄で可愛らしい受付嬢は強く出られないのだろう。


 ……とまあ、それだけなら正直どこの冒険者ギルドでもたまに目にする光景ではあるのだが――不思議なのが、冒険者ギルドの中にその受付嬢と酔っ払い冒険者の二人しかいないことだ。

 比較的広く大きな建物なのに、中はがらんとしている。

 ラバノの町が如何に辺境にあると言っても、これはあまりに異常だ。

 やっぱり、聞いてみるしかないよな……。

 ついでに――


「おい、お前」


「……んあぁ? なんだぁテメー?」


「その人が嫌がってるだろうが。酒が飲みたきゃ一人で飲んでろよ」


「…………あんだとぉ? 今、なんつった?」


 酔っ払い冒険者は俺の方に身体を向ける。

 その身長は俺よりずっとデカく、屈強な腕は俺の足より太い。


「どこのどいつだか知らねぇが、このガス様に喧嘩を売るたぁいい度胸だな! あぁ!?」


「いや、俺は人様に迷惑をかけるなって言ってるだけだが」


「ハッ、ヒーローでも気取ってるつもりかぁ? 如何にも弱っちい見た目のくせによぉ、舐めてっとぶっ飛ばすぞ!」


 ドスドスと足音を立てて俺に近付き、無駄にデカい声で脅してくる酔っ払い冒険者。

 たぶん威嚇すれば体格差で怖気づくとでも思ったんだろうが――それ以前に、俺はあることがどうしても気になった。


「あ~……ところでさ、アンタ……」


「おん?」


「臭い。だいぶ酒臭いし、っていうか普通に臭いし汚い。たまには風呂入れ。そんなだから頭が剥げるんだぞ?」


 端的に言って、酔っ払い冒険者は不衛生だった。

 職業柄仕方なくはあるのだが、冒険者の中には町にいても衛生管理を露骨に無視する奴がいる。

 俺はどうかと思うんだよな、そういうの。

 そんな俺の忠告を受けた酔っ払い冒険者は――


「ぶ……ぶ……ぶっ殺す――ッ!!!」


 顔を茹蛸みたいに真っ赤にして襲い掛かってきた。

 やれやれ……。


「〔支援職(サポーター)〕スキル――【混乱(パニック)】」


 酔っ払い冒険者に対して、俺はスキルを発動。

 その瞬間、彼の巨体は転がるように床に倒れた。


「あ、あれぇ……? 身体が……フラフラ……頭もぉ……?」


 完全に前後不覚状態となって、立ち上がることすらままならない。

 【混乱(パニック)】の効果で身体が思い通り動かせず、頭の中もグルグルと回ってもうどうしようもないのだろう。

 おまけに元々酒を飲んでいる状態だったから、効果倍増といった感じか。


「〔支援職(サポーター)〕スキル――【攻撃力上昇(パワーアップ)】」


 次に俺は自分の攻撃力を引き上げ、酔っ払い冒険者のお尻がある方へと回り込む。

 そして片足を振り上げ、

 

「この辺かなっと――せいっ」


 酔っ払い冒険者のお尻を、そこそこの力で蹴り上げる。

 すると――ズバァーン!という迫力のある音と共に、彼は冒険者ギルドの出入り口から外へと吹っ飛んでいった。


「ぎゃあああああああああああああああああッ!!!」


 悲鳴と共に視界から消える酔っ払い冒険者。

 軽く蹴ったつもりが、凄い威力だった。


「……うわあ」


 たぶんめっちゃ痛かったと思う。

 なんならお尻が割れちゃったかも……いや、初めからお尻は割れてるか……。

 これがレベル313の蹴りとは、恐ろしい……。


『報告。敵に攻撃がヒット。【経験値奪取(ポイントスティール)】で〝経験値〟を奪取します』


 ついでに報告してくれる天の声。

 お尻を蹴り飛ばされた上に経験値まで奪われるとか、もう踏んだり蹴ったりだな。

 なんならちょっと可哀想とすら思う。


「あ~……やりすぎた、かな?」


「あ、あの、ありがとうございます、助けて頂いて……!」


 絡まれていた可愛らしい受付嬢は、すぐ俺の傍へと駆け寄ってくる。


 さて――それじゃ色々、尋ねてみるとするか。



少しでも面白い、次が気になると思っていただけたのなら、

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このページの下の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にしてもらえると、とっても嬉しいです。


何卒、次話以降もお付き合い頂ければ幸いです……!


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