第三話 覚醒
『パーティからの脱退を確認しました。仲間に付与していた〝経験値〟がスキル使用者に返還されます』
「え?」
突如どこからともなく聞こえてきた声に、俺は驚かされる。
それは初めて聞いた声で、まるで頭に中に響くようだった。
さらに次の瞬間――
「な……!? これは……!?」
俺の身体が金色に光り出し、同時に凄まじい力が湧き上がってくる。
『レベルが一定値を超えました。【経験値奪取】がランクアップ、派生スキル【カムバック】を取得します』
『レベルが一定値を超えました。【カムバック】により〔前衛職〕のスキルが一部解除されます』
『レベルが一定値を超えました。【カムバック】により〔防衛職〕のスキルが一部解除されます』
『レベルが一定値を超えました。【カムバック】により〔狙撃職〕のスキルが一部解除されます』
『レベルが一定値を超えました。【カムバック】により〔回復職〕のスキルが一部解除されます』
――次々と脳内に響く説明。
俺は流石に困惑を隠せず、
「ま、待て待て! 一体なにがどうなってんだ!?」
『返答。『白金の刃』から脱退したため、仲間に付与していた〝経験値〟が返還されました。また【経験値奪取】のランクアップにより、仲間が取得したスキルが一部受け継がれました』
なんとも丁寧に答えてくれる頭の中の声。
俺はしばし目をぱちくりさせ、
「……えっと、俺の質問に答えてくれるのか?」
『返答。【経験値奪取】に関することであればお答えできます』
「その、アンタはなんなんだ?」
『返答。【経験値奪取】の説明です』
「……それって、つまり?」
『返答。【経験値奪取】の説明です』
そうかそうか、キミは〝【経験値奪取】の説明です〟なんだな。
なんだかわかったような、わからないような……。
面倒くさいから、これから天の声とでも呼ぶようにするか……。
ともかく、【経験値奪取】に関する情報を与えてくれるらしい。
俺のスキルにこんなぶっ飛んだ能力があるなんて、知らなかったぞ。
「う~ん……どこから聞いたものか……。そもそもアンタの声を初めて聞いたけど、どうして今まで喋ってくれなかったんだ?」
『返答。【経験値奪取】のレベルが一定値を超えなかったためです』
「そのレベルを超えた今なら、色々教えてくれると」
『返答。【経験値奪取】に関することであればお答えできます』
「それじゃさっき仲間が取得したスキルが一部受け継がれましたって言ったが、それはゲイツたちが取得したスキルを受け継いだってことか?」
『返答。その通りです』
「具体的に、俺は今どんなスキルを使えるんだ?」
『返答。合計で132個の新スキルをお使いできますが、全てお聞きになりますか?』
「……いや、やっぱりいい。とりあえず使える状態ならそれで」
『返答。それでは取得したスキルを全て使えるよう、無意識下にフィードバックします』
天の声がそう言うと――頭の中に様々な情報が流れ込んでくる。
その瞬間、俺は色々なスキルが使えるようになったと感覚で理解した。
「これ、は……。なるほど、こういうことか」
さっそく俺は取得したスキルを使ってみることにする。
今の状況なら、〔狙撃職〕のスキルが便利か。
まずはこれまで光源となってくれていたマッチの火を消し――
「〔狙撃職〕スキル――【梟の目】」
これは暗闇でも周囲をハッキリと視認できるようになる〔狙撃職〕のスキル。
エーヴィンがよく使っていた。
なるほど、これは便利だな。
さっきあれだけ暗かった洞穴が、まるで昼間みたいにハッキリと見える。
「よくわかったよ。ところでレベルが上がったってことは、〔支援職〕のスキルも色々増えたってことだよな」
『返答。67個の〔支援職〕スキルが解除されました』
……ん? 67個? 〔支援職〕のスキルだけで?
いくらなんでも多すぎやしないか……?
いや、まさか……。
「な、なあ、今の俺のレベルってどれくらいだ……?」
『返答。シュリオ・グレンは現在レベル312となります』
「ぶふぉ!?」
思わず吹き出してしまった。
ヤバいな、レベル312の〔支援職〕なんて見たことも聞いたこともない。
たぶん現状において、世界最高レベルの〔支援職〕って俺になるんだろう。
でもまあそうか、これまで三年かけて『白金の刃』の全員に振り分けた〝経験値〟が全部戻ってきたんだから、それくらいになるよな。
俺はてっきり、仲間に付与した〝経験値〟は永続的なものになると思っていたから、これは嬉しい誤算というべきか。
ただそれって……。
「……ちなみに、今のゲイツたちのレベルってどうなってる?」
『返答。【経験値奪取】で〝経験値〟が付与されていない状態にまで下がっています』
……それって全員40~50、下手すりゃ60くらい下がってる可能性あるぞ。
なんかもう、このあとアイツらがどうなるか容易に想像つくな……。
「……でも自業自得だ。アイツらが俺を裏切って捨てたんだからな」
俺を崖から突き落としたかつての仲間たちの顔を思い浮かべ、俺はギュッと拳を握る。
『白金の刃』がこれからどうなるかなんて、もう俺には関係ない。
「ありがとよ。これからもなにか【経験値奪取】の疑問があれば質問するから、よろしくな」
『返答。こちらこそよろしくお願いします』
律儀に返してくれる天の声。
さて、なんかもうなんでもできる気になってきたし、まずはこの洞穴から脱出を――
「――――い、いやぁ! 誰か助けてええええぇぇぇッ!」
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