第十一話 巨像をぶっ倒せ
「……おっきいですね、です」
エルヴィも俺と一緒に遥か高くを見上げながら、うわーと口を開けて言う。
二足歩行で大地を揺らしながら歩く巨像、その全高20メートル。
正直に言うと、数値だけ聞いてもその大きさがイメージしづらかったのだが――間近で見て見ると、こりゃ相当にデカい。
思い切り顎を上に上げて、ようやっと巨像の頭部が見えるレベルだ。
ずっとこの姿勢キープしてたらむち打ちになりそう。
「これは、どこからどう攻めるべきか……。ま、とりあえず小手調べに……〔狙撃職〕スキル――【貫通矢】」
小型弓を引き絞り、矢を放つ俺。
放たれた弓矢は衝撃波を発生させるほどの超高速で飛翔し、巨像の胴体へと直撃。
それは並大抵の土人形であれば、貫通を通り越して巨大な風穴を作っていたであろう威力だったが――
「……わかっちゃいたけど、まるで効いてなさそうだな」
――ほぼ無傷。
やはり身体の表面が少し削れたくらいで、ダメージになっている様子はない。
となれば、
「エルヴィ、キミは地上から攻撃を加えて、少しでも奴の気を逸らしてほしい。できるか?」
「勿論、お任せください、です!」
彼女が意気揚々と答えると、右手を前に出す。
同時に魔法陣が展開され――
「〔人形職〕スキル――【人形召喚】」
唱えると、魔法陣の中から二体の人形が顔を出す。
背に羽を生やし、妖精少女のような形をした魔術人形。
そんな二体の魔術人形は、ふわりと宙に浮いてエルヴィの前に陣取る。
「ウルヤナ、ユルヤナ、行くよ」
エルヴィが指から魔術糸を繋ぐと、人形たちは魔弾を放って巨像へ攻撃を始めた。
人形から放たれる魔弾は威力こそ低いが連射性能は十分で、奴の気を逸らせるかもしれない。
よし、じゃあ俺は……
「〔前衛職〕スキル――【空踏み】」
スキルを発動し、思い切り地面を蹴る。
すると俺の身体は天高く飛翔し、さらに空気を蹴ることでさらに上空へと跳躍していく。
そうして巨像の背中へと着地した俺は、振り落とされないよう何とかしがみ付いた。
「うわ、たっか……! こんな場所から落ちたら、絶対助からないぞ……!」
下を見て身震いする俺。
これが地上20メートルから見る世界……怖すぎるだろ……。
高所恐怖症になりそうな気持を抑えつつ、俺は腰からナイフを抜く。
そして――その切っ先を、巨像の岩肌へと突き刺した。
ギィン!と弾かれるナイフ。
当然と言えば当然だろう。
しかし――
『報告。敵に攻撃がヒット。【経験値奪取】で〝経験値〟を奪取します』
天の声が教えてくれる。
――よし! やっぱり〝経験値〟は問題なく奪取できる!
これをひたすら繰り返せば――!
「はあああああああああああああああああああッッッ!!!」
何度も、何度も何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も、無我夢中でナイフを振り下ろす。
『報告。敵に攻撃がヒット。【経験値奪取】で〝経験値〟を奪取します』
『報告。敵に攻撃がヒット。【経験値奪取】で〝経験値〟を奪取します』
『報告。敵に攻撃がヒット。【経験値奪取】で〝経験値〟を奪取します』
『報告。【経験値奪取】で〝経験値〟を奪取。敵のレベルダウンを確認しました』
『報告。【経験値奪取】で〝経験値〟を奪取。敵のレベルダウンを確認しました』
『報告。【経験値奪取】で〝経験値〟を奪取。敵のレベルダウンを確認しました』
俺の【経験値奪取】は一突きする旅に〝経験値〟を奪い取り、どんどん巨像を弱体化させていく。
それはすごい勢いであり――同時に俺のレベルも上がっていく。
『報告。【経験値奪取】によりシュリオ・グレンはレベルアップ。レベル314になりました』
『報告。【経験値奪取】によりシュリオ・グレンはレベルアップ。レベル315になりました』
『報告。【経験値奪取】によりシュリオ・グレンはレベルアップ。レベル316になりました』
『報告。【経験値奪取】によりシュリオ・グレンはレベルアップ。レベル317になりました』
すごい――――すごいすごい、すごい!
巨像に【経験値奪取】が有効だとは思ってたけど、ここまでだなんて!
俺のレベルは右肩上がりなんて表現じゃ足りないほど、どんどんと上がっていった。
そしてもう何度目かもわからないレベルアップと、巨像のレベルダウンを確認した時――
「こいつでどうだッ! 〔前衛職〕スキル――【装甲砕き】ッ!!!」
高防御の相手を力づくで叩き潰す、極めて破壊力の高い一撃。
これだけレベルを下げたなら、攻撃だって通るはずだ――!
俺はそう思っていた。
だが――
「なっ……マジ、かよ……!?」
絶句する。
俺が【装甲砕き】で攻撃した場所は大きく凹んで陥没こそしていたが、どう見ても致命傷にはなっていなかった。
「どうなってんだ……!? あんなにレベルを下げたってのに……!」
流石に困惑してしまう。
前に洞穴でホブゴブリンを倒した時は、今回の半分以下のレベルダウンで十分倒せるほどだったのに。
さらに厄介なことに、俺の目は他冒険者のレベルは視認できるのだがモンスターのレベルまでは見えないのだ。
これじゃ確認のしようも――いや、待てよ……?
「おい――天の声、巨像のレベルってわかるか!?」
『疑問。天の声とは私のことですか?』
「ああそうだよ! で、どうなんだ!?」
『返答。わかります。巨像は現在――レベル5486となります』
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