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順応性バツグン! 元宇宙人のほのぼの探偵物語  作者: ミケユーリ
宇宙人、探偵になる
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アウストラレレント星人について

 さて唐突だが、語り始めていいだろうか。うざかったら飛ばしてもらって全然構わない。後の展開に特に差しさわりない。

 生まれてからずっと表の思考とディスカッションしながら生きてきたのに、表のヤツに忘れられてひとりぼっちで20年。我がアウストラレレント星人の平均寿命は4000万年だからほんの一瞬とは言え、ひとりで寂しかった。なので、語らせて?


 我がアウストラレレント星人の大半はゲル状である。

 ゲル状。スライムみたいな。洗濯のりと液体洗剤と絵の具で作ったやつ。

 わざとじゃないんだけど、ソファの上に置きっぱなしにしちゃって、知らずにパパが座ってズボンをスライムまみれにさせちゃって超怒られるやつ。しかもあれ、べっとりいっちゃうと洗濯しても取れない。


 我がアウストラレレント星人は、一生涯にひとつのタマゴを吐いて子孫を残す。

 皆頭が良く向上心にあふれ勤勉なため、その寿命のほとんどを真面目に働き、気が付いたらもう寿命じゃね? ってパターンが多い。そこで寿命尽きる直前にタマゴを吐き、その生涯を終える。


 残されたタマゴが成長し生まれて来た時、もう親はいない。

 生まれたての赤ん坊でありながら己の力のみで生きていかねばならないという過酷な運命。


 そのため、生まれた時から自身の体内に複数いる思考とディスカッションを繰り返すのだ。思考の数はタマゴの中からの固定であり、増えることも減ることもない。

 互いに知恵を寄せ合い、どうすれば自分の命をつなぐことができるのか、話し合う。何度でも言うが、生まれたばかりでまだロクに目も見えないような赤ん坊が、だ。


 アウストラレレント星人は、思考の数が多いほど頭が良いとされる。

 思考の数だけ多角的に物事を見る目があり、考えが多様化するため優れた人間であるとされるのだ。


 俺はたったふたつしか思考がない上に、アウストラレレント星人にしては珍しくヒト型なため、それはそれは蔑まれストレスのはけ口にされ、劣等生のレッテルを甘んじて受け入れていた。


 そんな俺が突如大抜擢(だいばってき)された、探査隊員という大仕事。なぜ、探査隊が組まれることになったのか。


 我がアウストラレレント星には、独裁者がいる。独裁者と聞くと、武力や権力で民衆を圧迫する悪者をイメージするかもしれない。

 だが、アウストラレレント星人は皆、頭の中に複数いる思考を取りまとめるだけで疲労困憊(こんぱい)で、表に出ている思考同士は「お前も大変だな」「いや、お前こそがんばってるよ」と慰め合い励まし合うことこそあれ、ケンカなどしないから戦争なんてありえない。

 我が天敵のように特定の人物を敵視してるような人間の方が珍しい。


 アウストラレレント星の独裁者は、宇宙に夢を馳せるロマンチストである。形はゲル状。


 人ひとりが生涯にひとつのタマゴを残す繁殖法なので劇的に人口が増えることはないが、まれにいわゆる双子、三つ子、五つ子の姉妹、六つ子の兄弟が生まれ、ゆるやかに人口は増えていっていた。

 四トントラックの荷台ほどの大きさのアウストラレレント星の限界は近い、と独裁者は長年第二のアウストラレレント星とするべく生命のある星を探していた。


 宇宙的に見ても寿命の長いアウストラレレント星人である独裁者は、ついに長い長い年月を経て青く美しい生命溢れる星を見つけた。

 うれしくてつい不用心にゲルを伸ばしたところ、たまたま飛来していた隕石にゲルが当たった。

 隕石は方向を変え、見つけたばかりの星に衝突してしまったらしい。

 何しとんねん。せっかくの生命溢れる星に。


 ロマンチストなクソ使えねえ独裁者のせいで、我ら探査隊が組まれたのだ。

 だが、すでに宇宙船なんて跡形もなく消えている今、探査なんぞ無意味である。


 もう探査なんかどうでもいい。嘉純さんに触りたい! お願いだから俺の存在を思い出せ! 俺よ!

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