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順応性バツグン! 元宇宙人のほのぼの探偵物語  作者: ミケユーリ
芸人と涙
16/55

元宇宙人探偵の調査

 何が浮気だ、真っ白じゃねーか。芽の出ない若いミュージシャンと一晩過ごしてはいるが、自分の立場をよく理解しているいい嫁だ、おっさん。あんな腹出たおっさんにはもったいないできた嫁である。


「あの日の思い出」と刻まれたディスクをケースにしまって元の位置に戻す。

 本当に大切にしているんだな。傷ひとつない、とても綺麗で鮮明な記憶だ。たびたび、ひとりで思い出してはこうして再びしまい込むことを繰り返しているのだろう。


 他には、めぼしいタイトルはねえな。芸人、聖天坂太郎にまつわる物ばかりだ。


 ――もうここには用はないな。体に戻るか。


 坂太郎の妻がよく訪れるという喫茶店。

 朝9時から張り込みにやって来た。すると10時頃になぜかアヤが来店し、俺の姿を見つけると同じテーブルについた。


「なぜアヤがここに? 大学生ではないのか」

「はい、大学に行かなくてはいけないんですけど……やっぱり気になって。聖天坂太郎さんの奥様の調査、私も同行させてください」

「金は持っているのか? アヤ」

「はい、今日は現金を持って来ております」

「ならば同行を認めよう。マスター、モーニングセット」


 それから3時間、とっくにしびれを切らしていた表の思考は、やっとこ聖天坂太郎から渡された妻の写真と同じ女性が来店したと同時におもむろに体から出て妻の脳内に入り込み、記憶を鑑賞して真実を知った。


 同じ体にいる間は表の思考の見た物知ったこと考えていることが俺にも共有されるが、出て行かれてしまうとそうはいかない。

 俺も何があったのか知っておきたかったから体から出て妻脳内にいたため、体の方は中身なくぐったりとテーブルに突っ伏していた。普通に死体である。


「あら、お目覚めですか、淀臣さん。すっかりナポリタンが冷めてますよ」

「来てたのか。気付いていればもっと早くに戻ったのに」

 気付かなくて良かった。電車に乗ってるとこまでしか見てなくても食いもん優先しかねないからな、表の思考は。


 坂太郎の妻、野口真由美が窓辺の小さなテーブル席で有線放送の音楽を聴きながら読書をしている。


「新人さんの楽曲が多いのかしら。知らない曲かつ若い歌声にワクワクしますね」

「……アヤは、バンドに詳しいのか」

「バンド? 詳しいとは言えません。人気バンドなら分かる程度です」


 人気バンドなら分かるアヤでも知らない新人の曲が多くかかる喫茶店。

 彼女がなぜこの喫茶店をよく訪れるのか、その理由は明白なのかもしれない。つい、余計なお世話を焼きたくなってしまうが、それはいらない大きなお世話だ。


「彼女は浮気などしていない。その恐れを感じ取り、自ら身を引いたのだ」

「……え? 淀臣さん、それはどういう意味ですか?」

「彼女は知るべきだ」

「何をですか?」


 ――彼女の疑惑を、確信に。

 だがそれは、証拠を得てからだ。

 必ず証拠があるはずなのは、この妻ではない。

 しょ……?

 金持ってる芸人だ。

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