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順応性バツグン! 元宇宙人のほのぼの探偵物語  作者: ミケユーリ
宇宙人、探偵になる
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成功報酬の条件

 神妙な顔で、嶌田良吉は依頼内容を語り出した。


「当然ご存知とは思いますが、我が嶌田家は歴史と伝統のある粘土工芸が世界的にも有名な名門です」

「もちろん、存じておりますよ。縄文時代から続いているとかなんとかかんとか」

「さすがは探偵さんだ。歴史の長さでギネス記録も持っています」

 縄文時代からて、歴史ありすぎて逆にまゆつばものなんだが。


「そんな嶌田家の一人娘が……綾が、ゆうべ婚約したと告げてきました」

「婚約?」

「しかも相手は、ホストだと言う!」

「ホスト?」


 ああ、ない話ではないだろうな。

 この聖天坂しょうてんざかが日本一地価が高いのも、土地柄の良さ、利便性の高い地理的要因も大きいが、隣の天神森てんじんもり地域には日本有数の巨大歓楽街が広がっているため、いくらでも金を出す人種が多数住んでいることが一因であろう。

 中には訳アリの住民も多く、そんな人たちのために秘密厳守、セキュリティ万全なマンションは一際家賃が高い。


 ここ、嘉純さんから譲り受けたマンションNOVAも、そんな訳アリの住人が多数の超高級賃貸マンションだ。

 分譲マンションも多くあるのに賃貸なのは、嘉純さんの夫からの「浮気をしたら即離婚と告げているのはハッタリではなく本気だ」という無言の圧力であろうと俺は考えている。


 嶌田家のような伝統工芸の大家の家元、嘉純さんの属する白鷺家のような総合商社のトップ一族、そして天神森でトップクラスに稼ぐホステスやホストたちまでも多種多様なハイパー金持ちが集まるのがこの聖天坂である。


 家元のお嬢さんとホストが出会ってしまうことも十分に考えられるだろう。


「綾にはすでに……いや、この伝統ある嶌田家のひとり娘である綾がホストと結婚だなんて、分家の者たちや弟子たちに顔向けできなくなってしまう」

「この名探偵への依頼内容は?」

「綾に婚約を破棄させていただきたい」

「普通に反対されればよろしいのでは?」

「それでは綾に理解のない親だと思われてしまう! 綾は昨日二十歳になってしまった。親の同意なくとも婚姻が成立してしまうんです! 反発心から勢いで入籍でもされたら取り返しがつかない! せっかくの話が流れてしまう!」

「話?」

「あ……いや、聞き間違いでしょう」

「かもしれません」


 ――依頼内容はちゃんと話を聞いておかないとな。いわば報酬を得る条件だ!


「では、シマダアヤに婚約を破棄させれば報酬をいただけるということでよろしいですね?」

「ええ。頼みましたよ、探偵さん」

「では大事な話に移りましょう。いかばかりいただけますか、報酬は」

 俺にとってはそれが一番重要なんだよな。


「100万円はお約束させていただきましょう。明日綾が婚約を破棄すると言い出しても100万はお支払いしますよ」

 良吉は、これなら満足だろう、とでも言いたげな自信満々な表情だ。

「簡単に明日クリアしても長期に渡り苦心しても報酬は同じだと言うんですか?」

 だが、満足しないのが俺の表の思考である。あからさまな仏頂面に良吉が驚いている。


「……分かりました。だが、ダラダラと長引かせられてはこちらも心もとない。条件を付けさせていただきます。3ヶ月です。3ヶ月以内に、綾に婚約を破棄させてください。綾自らが婚約破棄することが絶対条件です」

「3ヶ月ですね。分かりました。では、3ヶ月以内にシマダアヤの口から婚約を破棄すると言わせれば最低でも100万円。この契約でお引き受けいたします」


 俺が差し出した手を嶌田良吉が力強く握る。その手を、アヤの母親である紗也香が真剣な目で見つめていた。


 ――よし! 3ヶ月最大限に引っ張って300万に膨らませてから婚約破棄させればガッポガッポだぜ!


 いや、誰も月100万だとは言ってないのだが。嘉純さんから毎月30万もらうお手当てと成功報酬というものの質の違いを分かってねえな。


 まあ、婚約破棄を口にさせるくらい俺には造作ないことだ。

 アヤの脳に直接「婚約破棄しろ」って交渉すればいいだけなんだから。

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