一緒にしないで頂きたい
「ひゃ、ひゃいっ!?」
「おまえ、少し休め。 新谷の事が気になるのは分かるが相手があの元嫁では最悪夜逃げもあり得る」
「で、ですがっ!!」
「そう根を詰めてお前自身が倒れてしまっては元も子も無いだろう。 それに今現時点で仕事にも悪影響が出てきている。 倒れる前か大きなミスをする前に一度休めと言っているんだ。 これは命令だと思え。 そうだな、取り敢えず一週間は休んでいいから。 ついでに有給扱いだからな」
「わ……分かりました」
周囲から見ても今の私はそうとう危うい状態だったのだろう。
見かねた上司からの命令で渋々休むことを了承すると、周囲から安堵の溜息が聞こえて来る。
皆には心配をかけてしまったと罪悪感を感じると共に、これは上司から『新谷を探してこい』というメッセージでもあるのだろうと、私は気付く。
そうと分かればいつまでもうじうじしていられない。
上司の期待に応える為にも私はこの一週間で新谷さんを探さなければっ!!
そして決意も新たにガッツポーズ。
「分かりましたっ! 必ずやこの一週間で新谷さんを探し出して見せましょうっ!! 大船に乗ったつもりで良い結果を待っていてくださいっ!!」
「なっ!? ちょっ、待てっ!! そういうつもりで休暇を与えたんじゃないっ! ちゃんと休めっ! おいっ! その『私、皆まで言わなくても分かってますから。 みんなの前だから建前を言っているだけだって』という表情を止めろっ! お前まで何かあったら俺の出世に影響が出るかもしれないんだよっ! なっ? 頼むから家で大人しくしていてくれっ!」
なるほど、敵を騙すにはまずは味方からという事ですね、上司。
しかしながらそこまで露骨にしてしまったら逆に怪しまれると思うのですが、これは指摘した方が良いのだろうか?
そんな事を考えていると同僚の女性二人が私に近づくと抱きついて来るではないか。
「ホント、堀田さんって新谷さんの事が大好きですよね」
「ねーっ!可愛い可愛いっ」
「もっ、もうっ!揶揄わないでくださいっ! 私と新谷さんはそんなんじゃないですから、変な勘繰りは止めてくださいっ!!」
そもそも私と新谷さんの仲は世間一般的な好いた惚れたというような浅い関係ではなく、もっと深い関係なのだ。
そんな物と一緒にしないで頂きたい。
「えぇーっ、バレバレなのにっ。うりうり」
「本当、堀田さんは直ぐに顔にでるよねーっ。 かいぐりかいぐり」
「だから違いますっ!! それとっ! 新谷さんは見つけ次第首根っこ掴んででも連れて来ますからっ!! それでは私はこれでっ!! 一秒でも無駄にしたくないのでっ!!」
「はいはいいってらっしゃーい」
「愛しの新谷さんに会えるといいですねっ!!」




