ペット
「遊んでいると言いますか、遊ばれているようにしか見えなかったのですが……?」
「き、気のせいです。 さすがの俺でも女子小学生如きに遊ばれるわけがないでしょう? あははははは」
何という事だ。
この俺が女子小学生と戯れている光景を朝霧さんに見られていたようである。
因みに女児や児童、女の子などと言わないのは、そちらの方が女子小学生という響きよりも、子供に良いように揶揄われているように聞こえるからである。
女子小学生ならば、まだ『学生』という風にも捉える事もできる、ような気がする。
しかしながらそんな俺の子供騙しのような精一杯の背伸びや見栄など朝霧さんには通用する訳もなく訝しげな視線で見られる。
「えいっ!」
「とうっ!」
「やぁっ!」
「ひぃっ!? やめっ! ひゃぁああっ!?」」
そしてそんな俺の精一杯の背伸びは女子小学生の、不意の抱きつき攻撃によって脆くも崩れ去ってしまった。
女子小学生如きに抱きつかれただけで女性のような悲鳴を上げて腰を抜かすような光景を見られては流石に言い訳のしようもない。
「こらーっ! お兄さんが怖がっているでしょうっ!? 君たち、やめなさいっ! それにここは交通量こそ少ないものの道路なんだから、道路でそんな事をしてちゃ危ないでしょうっ!?」
「えぇーっ!?」
「怖がってないもんっ!」
「というか、おばさんこそ誰よっ!? お兄さんの何なのっ!?」
「おばっ……が、我慢我慢。 相手は小学生。 所詮は子供の言う事」
「お兄さんもおばさんと遊ぶよりも、私たちと遊ぶ方が良いいよねっ!」
「おばさんと違ってピチピチだよっ!」
「おばさんはあっち行っててっ!」
一体どこでそんな言葉使いを覚えたのか? と思うような言葉使いで女子小学生達は朝霧さんに反抗的な態度で応戦する。
いつだったか、女性はいくつになっても女性だし、自我を持ち始めたその時から女性であると言う言葉を聞いた事があるのが、確かに女子小学生といえどもその風格は立派なレディーのそれであった。
だからこそ俺はビビったのであって、決して小学生にビビった訳ではないのだ。
「い、言わせておけば……」
その証拠に朝霧さんも大人の余裕というものが剥がれ落ちているのがその表情からも見て取れる。
そして次の瞬間朝霧さんはそう天高らかに叫ぶと女子小学生を押しのけて俺に真正面から抱きついて来るではないか。
「わ、私は新谷さんのご主人様で、新谷さんは私のペットなのよっ!!」
「はいっ?」
いや、まぁ、確かに今の俺は見方によっては朝霧さんのペットです……はい。




