想像以上に高い買い物
「いや、そもそもそんなに払えないっ!! どうやって支払っていけば良いんだよっ!? いくら何でも高額過ぎるだろうっ!?」
そして間男は間男嫁に出された財産分与、慰謝料、養育費まで提示されては返せるものも返せないと反論する。
恐らく俺へ返済する分がある間男からすれば財産分与で半分間男嫁に持って行かれるだけでも間男の頭の中で描いている返済プランは破綻しているであろう。
そして恐らく間男の描く返済プランはが破綻しているというのは間違いなく、このままでは慰謝料どころか子供への養育費も払えないと思われる。
「退職金」
「は?」
「退職金を貰えばまだ何とかなるでしょう。 そこからは私の父が経営している会社の僻地店舗の平社員となり、全て返済が終わるまで飼い殺しさせてもらいます。 逃げれるとは思わない事です」
「……………そ、そんな……」
そしてついに間男は足掻いてもどうにもならない、逃げられないと悟ったのか言い返す事もなく、項垂れる。
一時の快感を得るには想像以上に高い買い物だったようだ。
「あとは、新谷さんの奥さんにも慰謝料請求させていただきます」
「どうぞ。 あれはもう私の嫁ではないので」
「いやよっ! 私っ、離婚しないからねっ! それに何で私が慰謝料を払わなければいけないのよっ! 絶対サインなんかしなんだからっ! 裁判でも何でもすれば良いわっ! そうすれば私の正当性が認められて恥をかくのはあんたたちだからっ!! そもそもおかしいと思っていたのよっ! 今日で確信したわっ! あんた達二人は裏で私に隠れて不倫していたわねっ!! 絶対に許さないからっ!」
「それがお前の意思というのならば裁判をしても、こちらとしても一向に構わないのだが、まず負けるし裁判記録にもそのことがしっかりと残ってしまう。 それでは万が一君が再婚などをしようとして相手方に興信所を使われた場合は一発でバレてしまうだろう。 しかし示談ならば財産分与である程度は返す事ができるし、裁判をしていないから裁判記録にも残らない。 再婚する時に今日の事さえ黙っていれば相手方にもバレない可能性もある。 それに、この状況では弁護士も断られる負け戦だから俺は裁判はすすめない。 それでも裁判をしたいというのならば勝手にしろ」
俺は尚も喚いている元嫁に向かってこんこんと今元嫁が置かれている状況を説明する。
そして元嫁は俺の言葉を黙って聞いており、この時俺はようやっと人間の言葉が嫁に通じたものだと思っていたのだが、結局この時の対応のせいで俺は後々苦労する羽目になってしまうなどとは誰が想像できようか。




