ご自由に
そして弁護士さんは一呼吸置くと、悪魔のような笑顔で間男へ話しかける。
「知ってますか? 裁判って記録に残るんですよ? 勿論会社があるから休みますなんて理由で日程の変更はできませんし、もし来なければ問答無用で訴えた側の証言が通ってしまいますけど……それでも慰謝料で示談にせず裁判で戦いますか? そもそも、勝てると思っているんですか? それに、新谷さんの貯金を勝手に使った件については刑事事件に持って行く事も視野に入れてるんですよ?」
そう、嬉しそうに話しながら間男を追い詰めていく弁護士さんを見て、弁護士さんだけは敵にしてはいけないと強く思ってしまう。
間違いなく、あれは一度狙われたらとことん追い詰めていくタイプである。
「い、いやでも……あの金は勝手にあいつが使った金だし、そもそも浮気だってあいつから誘ってきたんだからむしろ俺も被害者だろうがっ!! こんな事おかしいだろっ!!」
しかしながら間男は俺とは違い弁護士さんに恐怖心を感じないのか、それともまだ勝機があるとでも思っているのか、俺が聞いても反論にすらなっていない子供の言い訳のような内容で反論する。
「では、君から奥さんに送ったこのメール内容、ここに『あのバカ旦那にもう一回経済DVふっかけて離婚して慰謝料ガッッポリ奪ってやろぜっ!!』『旦那の貯金がそんなにあるんなら俺欲しい車あるんだけど?』『あー、あのバカ旦那の金で豪遊するのはたまんねぇーなっ!! またしようぜっ!!』などなど、まだまだありますが、こういうメールをしていて、自分には非が無いとでも、まだ言えますか? そして高級車という証拠があるのは勿論、今までの使い込んだ分のレシートもあるので言い逃れはできないでしょう』
「こ、こんなのはでっち上げだっ! そ、そそそそれに人のメールを見るのはプライバシーの侵害だぞっ! こっちが訴えてやるわっ! プライバシーの侵害で訴えても良いのかっ? あっ!?」
「大丈夫です。 訴えるのならばご自由に」
「……え? め、メールを勝手に見るのはプライバシーの侵害で、犯罪なんじゃ……?」
「間男さん……私が誰だか忘れたんですか? 私、弁護士ですよ? そしてその弁護士がこの件については問題無いと言っているんです。 そして、その弁護士が、もし違法な場合こうして堂々と相手に反撃されるような事をしますか? するわけないでしょう」
「え、いや、あの……その……」
そして間男が今の状況に気づき始めたのかみるみるうちに顔色が悪くなり、脂汗も書き始める。




