間抜け
「あははははははははっ!! バアアアアアアアアーーーーカッ!! アンタは本っ当にダメダメねっ! 頭が悪いにも程があるでしょうっ!!」
「では、あなたの言う通り経済DVの慰謝料は五百万円、奥さんに浮気分の慰謝料とは別に支払うよう請求いたしますね」
「…………は? ……え? ……は? ……どういう……え?」
「間抜けは見つかったようだな?」
そして、弁護士がまさか自分に経済DVの慰謝料請求をしてくるとは思っていなかったらしい元嫁は鳩が豆鉄砲を喰らったような表情をし、口をパクパクと閉じては開いてを繰り返しているところに、まるで見下すように言い返してやる。
今まで見下してきた相手に逆に見下されるように言い返された事があまりにも腹が立ったのか、元嫁はみるみる顔が真っ赤に染まっていき、その顔はまさに般若のようだ。
「ま、ままま、間抜けですってっ!?」
「ああ、間抜け以外に何があるんだ? この弁護士は俺が雇った弁護士だから俺が有利になるように動くに決まっているだろう? そんな事も分からないのか? お前は」
「な、う、裏切ったわねぇっ!?」
「いえ、裏切ったも何も初めから私は旦那さんの味方ですし、依頼主を裏切る事をしてその噂が広まった場合、私は弁護士で食べていけなくなるじゃないですか」
「こ、こんな事が許されると思うなよっ! そっちがそのつもりならこっちも弁護士を雇ってくるからっ! もう謝っても許さないからねっ! それと、なんで私がコイツに経済DVをしている事になるのよっ!? おかしいでしょうっ!! 証拠はあるのっ!? 証拠っ!! 私は証拠はあるからねっ!!」
「弁護士を雇うのはご自由に。 こんな負け戦で雇えればだけれども。 それにもし雇えれたとしても減額請求が関の山だろうな。 後、証拠ってあの嘘を書き綴った日記の事か? それもう無駄だぞ。 こっちはしっかりと証拠付きの日記があるから、それを武器に前回の件も纏めて訴えさせてもらうからな」
「はっ!? どう言う事よっ!? 意味が分からないんだけどっ!!」
そしてまだ尚わめく続ける嫁は無視して、次は間男へと対象を移す。
間男である上司は不貞腐れており、まるで悪い事をして怒られている時の反抗期の中学生のようだ。
「間男さんは提示された慰謝料は飲みますか?」
「は? こんな額おかしいだろ。 たかが浮気で五百万に、使い込んだ分合わせて二千三百万? どう言う計算したらそうなるんだよ?」
「そうですか。 いやなら裁判にしましょうか。 私達はそれでも良いんですよ? むしろそっちの方が旦那さんは有難いそうですが」




