感想メール
むしろこれ程想っている女性が近くにいるというのに何で私の前から消えてしまったのか。
本当ならば先輩はあの元妻と離婚した瞬間、私と結婚する運命であったはずなのである。
なのに私の所に現れることもなく、会社にも辞表を出して姿を晦ますなんて、ちょっと考えられない。
だって、私ほど新谷先輩の事を想って、尽くして来たいる女性など今この世界にいる訳がないし、そんな女性の前から逃げるなど意味がわからないではないか。
そのため、一瞬私の脳裏に自殺という二文字が浮かび上がって来たその頃、昔新谷先輩が学生の頃に使っていたと思われるウェブ小説用アカウントが再び動き始めた時は安堵したもだ。
どこかで先輩はまだ生きている。
でも一体どこで? そして一体なぜ姿を晦ましているのか。
足取りさえ掴めないという現状が、新谷先輩が生きていると分かったからこそ余計にヤキモキしてくる。
そして今日も仕事の合間、そして就寝時間までみっちりと自分の足からパソコンなどを駆使して探してみたのだが空振りに終わってしまった。
「一体、どこにいるのよ? 新谷先輩」
そう私は壁一面に貼られている新谷先輩へと語りかけながら、今日も新谷先輩のウェブ小説アカウントへ、ここ最近日課になりつつある感想メールを送るのであった。
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「ぶえっくしょんっ!!」
何故か知らないけれど急に寒気がしてきた。
もしかしたら元嫁が俺へ怨念か何かを飛ばしているのではないか? と一瞬だけ思うのだが、さすがにそれはないだろうと。 きっと気のせいだ。 と思う事にする。
そんな事を思いながらウェブ小説のアカウントを開くと、今日も数件の感想メールが届いていた。
内容は小説を褒める内容に、ツブヤイターはいつ再開するんですか? といった内容である。
メールの文章から良い人そうな雰囲気は伝わってくるので、その人には申し訳ない気持ちにはなりつつ毎回ツブヤイターは復帰するつもりは今の所無い旨の返信をしている。
いつどこで今この場所が元嫁にバレるのか分からないのである。
そんな状況でツブヤイターなど、うっかり呟いた内容やアップした写真などから今の場所がバレる危険がある為できるわけがない。
というかやりたくても万が一を考えてしまうと恐怖でツブヤイターを開こうとするだけで激しい動悸や眩暈といった症状が現れるのだからできない、というのが正しい理由でもあるが、さすがにその事を読者に伝えるわけにもいかないだろう。
いまだに一人だと電車にすら乗れないのだから、情けないやら何やら。




