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女子高生、サラリーマンを拾う  作者: Crosis


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無言の時間

 もし俺が同じ事をされたと思うと、元嫁ほど冷たい態度は取らないものの、普通に引いていたとも思う。


 しかしながら朝霧さんは俺へ冷たい言葉をかける事も、引くことも無く、むしろ優しい言葉をかけながら俺の頭を撫でてくれ、その表情は慈愛に満ちており、そしてなぜか『お母さん』と呼びたくなるのをグッと堪えていた。


 この人の隣ならば安心できると、無条件にそう思えた。


 今まで朝霧さんには何故か、その姿にどこか安心してしまう自分がいたのだが、今回に関してはそれを強く意識してしまう。


 そしてどうにかこうにかバスも乗り継いで目的地である運動公園までつく事ができた。


 帰りの事は考えると鬱になりそうであった為、今は帰りの事は考えないようにする。


 帰りの事は帰りにでも考えればいいのだ。


 今は、朝霧さんとこの公園を楽しむことを考えよう。


 しかしながら行きのくだりでかなり、体力的にも精神的にも疲れたのは確かなので朝霧さんには申し訳ないんだが、とりあえずは一旦休憩にしてもらう事にして、良さげな場所を見つけてシートを敷き、そこへ朝霧さんと一緒に座る。


「はい新谷さん。 お疲れ様でした。 これ麦茶です」

「あ、ありがとう。 ごめんね? 俺のせいで面倒臭いでしょう?」

「いえ、そんな事はありませんよ。 むしろ逆にこれはこれっで楽しくもありますので新谷さんが負い目を感じる必要なんかありませんよ」

「そ、それならば良かったです」


 そして、二人で当たり障りのない会話をし、朝霧さんはそんな事を言ってくれるのだが、きっとお世辞なのだろう。


 この言葉を全てを鵜呑みにできない程には俺も歳をとって色々経験してきた。


 それでも、貶すでもなく、罵倒するでもなく、馬鹿にするでもなく、俺は悪くないと言い、疲れたねとお茶を出してくれる朝霧さんに俺の心はかなり救われていたのも事実である。


 貶されて、罵倒されて、馬鹿にされて当たり前であると自分自身でそう思っていた他所に、自分自身ですら自分の事を肯定できない中朝霧さんだけは俺が負い目を感じる必要はないと言ってくれたのである。


 思わず目頭が熱くなってきたのだがここで泣いては余計に朝霧さんに迷惑をかけてしまうと、グッと我慢した。


 そこからは子供達が遊ぶ声や風の音を聞きながら、二人無言になる。


 元嫁ならば『私がいるのに無言になるなんてありえない。 男、特に夫ならばちゃんと女性であり妻である私を楽しめるよう努力をしろ』と言っていただろうし、実際何度も言われていた為、会話が続かないような事となると毎回ストレスを感じていたものである。


 だが、今この時ばかりは何故だかこの無言の時間が心地よく感じてしまう。

 

 

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