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女子高生、サラリーマンを拾う  作者: Crosis


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幸せな時間

「ふふ、それはどういたしまして」


 こんな会話を軽くした後、どちらからともなく無言になった。


 しかし、この無言も気まずい故に喋る事が無くなって生まれる無言などというのではない。


 むしろこの無言なのが心地よいとすら感じてしまう。


 そして、二人共何かを話すでもなく、子供達や風が草木を撫でる音を聞きながらゆったりとした時間を過ごしていると、隣から規則正しい寝息が聞こえてくる。


 きっと、新谷さんはここへ来るまでにかなり精神的な労力を使ったのであろう。


「ふふっ」


 無防備に眠ている新谷さんを見ると、何故だか無性に愛おしく思えてくるのだから不思議である。


 そんな愛おしく思う新谷さんを私はそうするのが当たり前であるかのように膝枕をして、頭を撫でてあげる。


 そうする事で、私の中にある愛おしいという気持ちがさらに膨れ上がってくる。


 その気持ちが今は何なのかまだ分からないのだが、きっと悪いものではないのだろうという事だけは分かる。


 むしろ、この愛おしいという気持ちを、何故か新谷さんと一緒に育てていきたいと思ってしまうのだから不思議だ。


 そして、それと同時に今この時間がとても幸せな時間だとも思うのであった。





 正直言うと、今の俺ならば朝霧さんがいなくても何とか公共交通機関を乗り、隣町くらいには行けるものだと思っていたのだが、その根拠のない自信は見事に裏切られる事となった。


 意気揚々と電車へ乗り込むまでは良かったのだが、そこへ乗り込んだ瞬間、周囲の人間の目が、俺を見ているような錯覚に陥り、それと共に『お前のせいだ』という幻聴も聞こえてくる。


 この言葉が幻聴であり、そして周囲の人間が俺如きを見ていない事も理解しているのだが、理解していてなお恐怖心がそれを上回ってくる。


 これが外ならばまだ何も思わなかったであろう。


 電車という閉ざされ、逃げ場がない空間で感じる恐怖は、俺の想像を遥かに超えていた。


 その結果、俺は気がついたら朝霧さんに抱きついていた。


 その事に気づいた時恥ずかしいという気持ちも当然湧いてくるのだが、その羞恥心よりも恐怖心が上回っているので自分ではどうしようもなかった。


 もしこれが元妻ならば『恥ずかしいから辞めなさいっ! 私まで頭のおかしな人と思われるじゃないっ!』と言われ、そのまま俺の腕を振り解きどっかへ行ってしまっていただろう事が容易に想像できる。


 別にっこの件については元嫁を責めるつもりもないし、むしろ当然の反応であるとも思う。

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