私にも何が何やら
「あ、やっぱり見てたんですね。 何か言いたい事があれば包み隠さずに言ってもらっても構いませんよ?」
「えっ、あっ、み、見てないっ! 見てないけど、一緒に暮らしている以上はそりゃ一度や二度見るよね、と言いますか…………見てました。 すみません」
そして尚も見ていないと誤魔化そうとする朝霧さんなのだが、流石に誤魔化しきれないと判断したのか、俺の事を見ていた事を認める。
その顔は真っ赤に染まり、きっと嘘がバレて恥ずかしいのであろう。
「で、でも別に新谷さんい何か言いたい事があるとかそういう事ではなくてですね……」
「そうなんですか? ですが何かないとそんな頻繁に見つめて来ないのでは?」
「いや、それが私にも何が何やら……。 気が付いたら新谷さんを見ていたと言いますか……」
ふむ、これは一体どういう事だろうか? 朝霧さん本人も気付けない程の失礼な事をしてしまっているという事なのだろうか?
しかしながら朝霧さん本人が分からないといっているのだ。 そんな事を俺にわかるわけもない。
「あ、そっ、そうだ新谷さんっ!!」
「はいなんでしょう?」
そんな事を思っていると朝霧さんがこの話題から離れようと言わんばかりに話しかけてくる。
正直いって俺から振った話題なのだがお互いに何だか気まずい雰囲気になってしまっていたのでありがたい。
「今日は土曜日ですねっ!」
「ええ、そうでっすね。 それがどうかしましたか?」
「じ、実は私今日と明日はお休みなので、二人でどこかへ出かけませんか? も、もちろん新谷さんが今現在移動できる範囲で構いませんんし、無理なら断ってくれても構いませんからっ!!」
「成る程……一人より二人でリハビリって事ですね。 いいでしょう。 今ではコンビニまで行けるようになった俺はコンビニにあるATMからお金を引き落とせますし、少し電車で遠出でもしましょう。 交通費はこちらが出しますので」
と、いうわけで今日は朝霧さんと二人で出かけることになった。
今では一人で難なくコンビニまで行けるようになった俺なのだ。
そろそろ公共交通機関を使えるようになってもいいのでは? と思い始めていた所なのでまさに渡りに船とはこの事であろう。
それに、一人よりも二人でリハビリをした方が理にかなってる気がするし、隣に誰かがいるというだけで何だかどこまででも行けるよな気分になってきた。
流石に、元嫁にも会うこともないだろうし、会うとしたらどんな確率だよとも思う。
いや、思わなければやってられないというのが正解なのだが。




