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あさましい娘

「いえいえとんでもございませんっ!!しかし何事も無くて本当に良かったです」

「いえ、こちらこそご心配とお騒がせさせてしまったみたいで申し訳ございません」


そして二人してぺこぺこと頭を下げ始める。


何故だろう?猛烈に心の良心の部分が痛むのは。


「あ、一応信じてもらえないかもしれませんがあの橋では(・・・・・)死のうとは思っていなかったのは信じてください。ただ、どんなものなのかなと思っただけですから」


そう男性は言うのだが、私は気付いてしまう。


この人『あの橋では』と表現したという事は他の橋で自殺する気満々ではないか、と。


「それでは色々お世話になりました」

「すこし、待ってもらえませんか?」


そして男性は立ち上がると着崩れたスーツとネクタイを軽く整えると「失礼いたしました」と言い出て行こうとするので私は思わず引き止めてしまう。


「何でしょうか?」

「今から自殺しに行くのですか?」


その問いに男性は言葉を選んでいる素振りをした後、ゆっくりと口を開く。


「ええ、そうですね。私なんか生きていても仕様がない人間なので。どこか、誰の目にもつかないような場所でひっそりと………という思いが無いわけではないですね。むしろ今はその気持ちの方が強い気がします」


やっぱりという気持ちと、今自分の事で一杯一杯であろうにも関わらず私の事を考えて自殺すると言い切らない彼なりの優しさが伝わってくる気がした。


「だったらその命、もう少しだけ伸ばしてください」

「………どういう事でしょうか?」

「図々しいお願いとは思いますがその伸ばした命の分だけ、今回のお礼として私が貰っても良いでしょうか?」


ああ、私の良心がもう持ちそうにない。


しかしここでこの死にたがりの男性をほっとく事もできない。


もしかしたら酷い事をされて翌日には姿をくらましている可能性だってある。


いや、その可能性の方が高いだろう。


だがそれで良いと、むしろそうして欲しいとさえおもってしまう。


何故ならばそうしてくれさえすれば私は晴れて加害者から被害者へとジョブチェンジ出来るからである。


そして加害者となれば万が一私に引きずり落とされたという事を思い出せたとしても自分から警察などに相談しに行く事は出来ないであろう。


行ったら最後、暴行容疑でお縄である。


ああ、なんとあさましい娘であるか。


お父さん、お母さん、私は今日大人の階段を上る事でしょう。


お相手も若い娘とそういう行為を出来るのだからウィンウィンの関係であると、私は思います。


「…………………分かりました。それではどれ程の期間となるかは分かりませんが少しだけ私の命を貴女に上げましょう」

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