それで、彼って誰?
お昼休み。
私はただ新谷さんの事を思っていただけなのに友達の千秋と美奈子が心配そうに聞いてくる。
「お母さんは顔に出やすいんだから、すぐわかるよ」
「悩んでるんだったら私たちが聞いてあげるから」
「口にだしたら少しは楽になるかもよ」
「そうだよ。こういう時は一人で悩まずに私たちを頼って良いんだよ?」
私、そんなに顔に出ているだろうか?
ここ最近よく言われるのだが、いまいちピンと来ない。
「そういられてもなあ。 私の事じゃないし、それに、これは彼の気持ちの問題だとおもているしなぁ……あっ!?」
そう、いつも友達に話す感覚で私は話してしまった。
新谷さんの事を。
それくらい、私は自分でも気づかない内に彼の事に悩んでいたのかもしれない。
しかし、今はそんな事を言っている場合ではない。
それに、何なら周囲の雑音も心なしか小さく、お昼休みしては違和感を感じるほど静かである。
「…………き、聞いた?」
「「何を?」」
よ、よかったぁーーっ!! どうやら先ほど保私の呟きは聞かれてなかったみたいである。
そして教室がお昼休みにしてはやけに静かなのもきっとたまたまで、私の自意識過剰なだけだろう。
そもそも私の話を教室のみんなが知りたいだなんて自意識過剰にも程がある。
あぁ、今思えばそう思っていた恥ずかしい。
学校のマドンナのつもりなのかと自分で自分に叱責したい程である。
「き、聞いてないなら良いんだ。 ほんと、何でもないから」
「ふーーん。 それで、彼って誰?」
「まさかお母さんの彼氏……とかじゃないよね」
「…………………っ!!」
「あっ! 逃げたっ!!」
「まだ話は終わってないわよっ!! 待ちなさいっ!!」
「待てと言って待つ人なんかいないわっ!!」
やっぱり聞かれていたっ!!
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいっ!!
恥ずかしいぃぃぃいいいっ!!
どうしようっどうしようっ! なんであそこで逃げるのよ私っ!! これでは肯定するようなもんじゃないっ!!
そして、何とか追っ手二人を撒く事ができたは良いものの、これでは帰れないじゃない。
私のばか。
それもこれも全て新谷さんが悪い。
…………嘘だ。
素直になれない私のせいだ。
でも、素直になってしまったらどうこの気持ちを抑えていいか分からなくなってしまいそうで。




