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女子高生、サラリーマンを拾う  作者: Crosis


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ニヤけてしまうのが止められない

 そして私はなけなしの勇気を振り絞って扉を開けて中へと入る。


 心臓は張り裂けそうな程激しく鼓動を打つのだが、恐怖だとかという感情ではなく、何故か恥ずかしさに似た感情がこの謎の緊張感の原因だとは気付いているのだが、何故そのような感情を抱いてしまうのかという原因は見当もつかず、全くもって謎である。


「た、ただいまー……」

「あ、おかえり。仕事どうだった?」


 恐る恐る、まるで虎穴に入るかの如き緊張感を感じながら部屋へ入ると、ワイシャツの上に私の使っているピンク色のエプロンを付けてた新谷さんが柔らかな声と笑顔で出迎えてくれる。


「ぼ、ぼちぼちかなー」

「ふむ、偉い偉い、今日一良く頑張りました」


 そして新谷さんは私の所まで来ると頭を撫でながら労ってくれる。


 頭を撫でるという事は、新谷さんは今私の頭を撫でれる至近距離にいるわけで、更に撫でながらその笑顔は卑怯だと私は思うと同時に私の心臓は壊れるんじゃないかと思えるほど更に激しく動き始めるのだが、それとは別に社会人だという嘘がチクリと私の胸に刺さる。


「もう、子供ではないのですから。 でも、う、嬉しいものですね、こうして人に労って貰うというのは。 それで、その格好は一体如何したんですか?」

「あー、流石に居候させて貰って何もしないってのはどうも落ち着かなくてな、せめて掃除とご飯だけはと思って今晩御飯を作っている所だ。勝手に冷蔵庫を拝借させてもらった事はすまないと思っているが連絡手段がない事に気付いてない。 そうだ、ついでに今連絡先を交換しないか?」

「そ、そうですね。 これから先お互いの連絡先を知らないというのは流石に不便ですもんねっ!」


 なんだか連絡先を交換するのに自分自身にそう言い聞かせているみたいで、けれどそう自分自身に言い聞かせないと気付いてはいけない感情に気付いてしまいそうで。


「っと、これで良し。 じゃあ俺はこのまま晩御飯の準備に戻るからテレビでも観ててくれ」

「あ、そんな悪いですよっ! 私がやりますから新谷さんこそテレビでも観ててくださいっ!」

「いや、流石にそれは俺の良心が痛む。精神的にも悪いからむしろ俺の事を思うのならば家事は俺にやらして貰えないだろうか?」

「そ、その言い方は卑怯です。 で、でもでも私もたまには料理を作りたいのでその時は変わって下さいねっ!」

「ああ、約束しよう。 とりあえず、今日は俺が作るから」


 なんだろう? 今まで感じたことのない感情で心が満たされて行くと同時に、顔がニヤけてしまうのが止められない。

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