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黒幕幼女の異世界ゲーム  作者: バッド
17章 お祝いするんだぜ
232/311

232話 陽光帝国首都来訪

 景色が変わった。一瞬のうちに。


 アイちゃんのお部屋にいた自分は、今は見たことのない場所へと移動していた。


 見慣れたテーブルや椅子、ソファや縫いぐるみが置いてある、私たちメイド軍団が頑張って飾り立てたアイちゃんの可愛らしいお部屋から、広々とした何もないホールへと景色は変わっていた。


 不思議なクリーム色の石で作られた床。なにか模様が彫られており、魔法陣に見える。私の目は青い光のサークルが床を走っているのがわかった。


「すごーい! これがテレポートなんだ。あっという間に移動できるんだね!」


 私はここに連れてきてくれた女の子に話しかける。女の子というか、私よりも背が低い簡単に抱きかかえることができるほどの小さな身体の幼女はえっへんと胸をそらした。


「そうでしょー、そうでしょー。これがあたちが覚えた新魔法。テレポートでつ。これでつまみ食いする時にこっそりと台所に侵入できまつよ」


 くふふと、悪戯そうに笑うので、私もそれは凄い事だと一瞬思うけど、そんな悪戯に使ってよいのかとも思う。でも、アイちゃんは使いそうである。


 最近は一緒に遊ぶ時間も増えてきたので嬉しい。頭をナデナデしちゃおうっと。


 サラサラで滑らかな触り心地にいつまでも触りたくなっちゃう。アイちゃんも目をつぶって気持ち良さそうにしていて子猫のようで可愛い。


「行きますぜ〜」


 いつまでも撫でていたら、声をかけられた。


 私は笑顔でかけられてきた声に答える。


「は〜い、お父さん」


 家族となったガイさんへ、ううん、お父さんへと笑顔で答えて、アイちゃんとおててを繋いで出口で待っている人たちへとついていくのであった。


 私の名前はララ。最近、お母さんが結婚して幸せな女の子だ。仕事はアイちゃんのお世話をしているメイドです。


 只今、陽光帝国首都サンライトに来ています。観光が楽しみだなぁ。




 ホールを出ると柱が並ぶ天井が仰ぐほどに高い通路となっていた。なんというか、人の住む場所ではない神聖な建物のような感じがする。


「ここは神殿なのでつよ。人々を見守る有り難い女神様が作るクッキーを祀ってまつ」


「クッキー?」


 アイちゃんがムフフと得意顔で説明してくれる中で、私たちは通路を歩いていく。クッキー?


「名付けて、月光サブレ。クッキーの形は満月、半月、三日月、うさぎ、子猫、鳩とたくさんありまつ」


 パクリの可能性があるが、異世界なので問題ないと幼女は言っておきまつ。


「クッキー? お供え物なの? それに天井からぶら下がっているのはランプ?」


「神様でつよ。あそこにレプリカが売ってまつ。あれは提灯でつね。神秘的でいいでしょー」


 通路を過ぎると巨大な正面扉がある広間に到着した。そこには天井から提灯とやらがたくさんぶら下がっている。


 そして、幟が壁から垂れ下がり、横断幕がかけられていた。


「おいでやす、月光神殿?」


 なんだか神々しさがなくなっていくような感じがしちゃうよ。幟には、お土産あります、美味しい饅頭、焼き立てクッキーはいかが、とか書いてあるし。


 空気は清浄なんだけどなぁ……。ここにいるだけで、身体が清められるような、元気になるような感じがするし。


「ふふふ、やはり信者さんには徳の高いあたちが祈りながら作ったかもしれないクッキーを食べてほちいでつからね。既に販売する準備は万端でつ」


 部屋の壁沿いにずらりと屋台が並んでいて、少女たちがお土産を並べていた。ガラスケースに色とりどりの美味しそうなケーキとかも並んでいて、お客さんらしき少女がベッタリと顔を押し付けていた。


「駄目ですよ、これはお土産なんですから」


「むふーっ。姉として妹が売り出すお菓子は全部味見しなくてはいけない。全部一個ずつ買う。お金は来月のお小遣いから引いておいて」


 わいわいと話しているお客さんや売り子さんたち。お土産かぁ。商魂たくましい。というか、逞しすぎないかな?


「寄付にあんまり頼りたくないでつからね。お金を稼がないといけましぇん」


「完全に親分の趣味だと思いやすが……」


 お父さんが呆れるように言うが、アイちゃんはまったく気にしていない。もっと目玉になる特産品を考えないとと、呟いている。さすがはアイちゃんだ。


「それじゃ、あたちは今後の商売、ではなく布教について話すので、また後でね〜。家族水入らずで過ごしてくだしゃい」


 あたちも食べると、おててを振りながらアイちゃんは屋台の少女たちに合流していった。


 しょうがねぇなぁと、頭をかくお父さんと、赤面するお母さん。私もアイちゃんたちに合流しようかと気を遣うが、今日は結婚式のドレスを作りに来たのだ。そうはいかないので、お父さんたちについていくのであった。ラブラブすぎるから、私の目の毒になるんだけど、我慢しようかな。


 ドレスと言っても、結婚式の主役はお父さんとお母さん。私はおまけだ。


 おまけと思っていました。お父さんがサンライトにある自宅に連れて行ってくれると言っていたので楽しみに来たのだけど……。


「ねぇ……お父さん。お父さんはここに来るの初めて?」


 用意されていた馬車に乗りこんで、新しく作られたサンライトの街並みにびっくりした。石畳の道路は綺麗に並べられて、デコボコもなく、家々は全て窓ガラスが嵌められており新築ピカピカだ。


 お店も一枚ガラスの大きな窓ガラスが嵌められているおしゃれなカフェや、レストラン。王都並みに多くの人々が歩いている。

 

 お菓子屋さんがあったので、お土産に買っていこうと、その道を頑張って覚えたりして、あれなぁに、これなぁにとお父さんへと尋ねて、お母さんに凄い街だよねと話しかけて、はしゃいでいたのだけど、馬車が停車したのでお家に着いたのかと思った。


 だけど到着したところは公園だった。あれぇ? 


「あっしもここに来るのは初めてでやすね。スノーからは屋敷を用意しておいたと教えられたんですが……。もしかして……」


 お父さんも額に汗をかいていた。青々とした木が立ち並び、奥までその光景が続く。公園と違うのは鉄柵が囲んでおり、立派な門があるところ。そして、門兵さんが敬礼をして門を開いてくれたこと。あと、星4豪華な屋敷、と書かれた看板もあった。なんだろう、あれ。


「もしかしなくても、ここがお屋敷なのでは、あなた?」


 お母さんが戸惑いながらも聞いてくる。御者さんは手慣れた様子でまた馬車を動かし始めた。


「あぁ………ダブったと言ってたから貰ったんでやすが……失敗だったかも」


 ここは公園だよと私は言いたかったが、道の先に大きな大きなお屋敷が見えてきたので口をつぐんでしまった。


 お屋敷前には大きな噴水が透明なお水をバシャバシャ流しており、綺麗に刈り込まれた芝生が見えた。


 お屋敷の扉前にはずらりとメイドさんや執事さん、庭師さんらしき人や料理人の人々が整列してもいた。ピカピカの鎧を着込んだ騎士さんたちもいる。


「到着しました、お館様、奥様、お嬢様」


 御者さんがそう告げてきて、お父さんはうぬぬと唸った。


「騙されやした。スノーも親分もこの屋敷を押し付けやしたね! 金を使わせるためにも、既に部下を雇っていやしたか」


「魔法爵って、凄いんですね。改めて感心しました」


 お母さんが多少引きつった口元を見せながら言う。


「侯爵様と同じ身分って凄いよね。こんなに大きなお屋敷なんだ。お庭でピクニックができちゃうね。今度お友だちを連れてきても良いかな、お父さん?」


 アイちゃんにお願いすればここに連れてきてくれるだろうし。かくれんぼをやったら、本当に見つからなさそう。気をつけなきゃ。


「お待ちしておりました、お館様。私は家宰のブラウニーと申します」


「私はメイド長のシルキーと申します。お館様はもちろんのこと、奥様、お嬢様。家の管理は奥様がなさるとお聞きしておりますので、後日落ち着きましたら、お話をできればと思います」


「はい。ガイ様の妻のマーサと申しますので、よろしくお願いしますね」


 丁寧な会釈をして、執事のお爺さんがニコリと笑う。続いてふくよかな身体のメイド長さん。お母さんは決意を改めて固めたのか、真剣な表情で会釈を返した。


 私もよろしくお願いしますと、慌てて会釈を返す。


「ふふっ。メイドに頭を下げなくてもよろしいですよ。雇い主はお館様、ひいては奥様、お嬢様なのですから。話は聞いてます、平民から魔法爵の奥方にならせられたと。貴族の礼儀作法は大変ですが、微力ながら御教えできると考えております」


 シルキーさんがにこやかに伝えてくるので、お母さんはコクリと素直に頷く。私もこれからは貴族として生きないといけないのかなぁ。でもアイちゃんのお世話係は譲らないもんね。


 それと少し気になることがある。


「あの……皆さんは人間ですか?」


 私の目には魔力の塊と見えるんだよね、ブラウニーさんたちもシルキーさんたちも。


 失礼だったかなと思ったけど、シルキーさんもブラウニーさんたちもクスクスと笑ってくれた。


「なるほど。センスマジックから逃れる魔法も見抜く瞳には意味がないのですね」


「そのとおり。私たちは家の精霊ブラウニーとシルキーですよ。再就職先として雇われました。いやぁ、これだけ大きな屋敷の管理ができるのは感激です」


 半分ぐらいの人数が、ポムと煙に包まれたと思ったら、ブラウニーさんたちはアイちゃんと同じぐらいの大きさに変化した。皆、ちっこくて可愛らしい。


「家のことはお任せください」


 精霊さんたちが、この屋敷の管理をしてくれるらしい。凄いことだよね、これ!


「魔法爵様は雇っている者たちも特別だと、噂を流しておきます。そうなれば変な輩も減るでしょうし」


 精霊さんではない、普通のメイドさんが話に加わる。


「あ〜。なるほど、さすがは親分ですね。もう手を打ってくれやしたか。助かります」


 私たちを守るためにアイちゃんが用意してくれたらしい。その心遣いに嬉しく思う。たしかにこんなお屋敷に平民の私たちが住んでいたら、妬み嫉みもあるもんね……。


「私たちも警備してあげるから大丈夫〜」

「冷蔵庫の守りは万全だよ〜」

「料理の味見もバッチリ〜」


 メイドさんたちの髪の毛に潜っていたらしい妖精さんたちがひょっこりと顔を出してきて、胸を叩く。見慣れた妖精さんたちだ。彼女たちも守ってくれるらしい。


「どこを守るのか疑問に思いやすが、よろしくお願いしやす。あっしの大切な家族なんでね」


 苦笑いをしながらお父さんが頭を下げて、あらあらと皆が優しい笑顔になる。大切な家族だって………えへへ。


「とりあえずドレスのデザイナー様がお待ちしております。お早くどうぞ。お館様」


「あぁ、売れっ子らしいですね。急ぎやしょう」


 ブラウニーさんの言葉に頷いて、私たちは月光屋敷よりも遥かに大きなお屋敷に案内されて、長い廊下を歩いた先で、お部屋に案内された。洋裁室らしい。


「お待たせしてすいやせん……んん?」


 ドアを開けてお父さんが中に入って、デザイナーさんと言う人に謝るが、微妙な表情になった。


「お気になさらないでザマス。ザマスったらザマス。とりあえず凄腕のデザイナーはザマスと言っておけば良いらしいですよ、ガイ」


 銀髪の美人メイドさんがソファに座りながら答えてきた。


 お父さんはそっと扉を閉めた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 遂に銀髪のメイドがご降臨されたかぁ。 [一言] というか姉神様まで来てるような気がしますなー。
[一言] 元ラスボスデザイナーで良かったザマス。 女神様だったら斬新すぎる豆腐ドレスになっていたでしょう。う~ん、見てみたい。
[良い点] 幼女の中の人が日に日に浄化されていってる件 ( ;´Д`) [気になる点] 誤字報告です 【もっと目玉になる特産品を考えないと呟いている】おそらく「考えないと」の後に「と」が抜けてると思…
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