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黒幕幼女の異世界ゲーム  作者: バッド
14章 海でバカンスなんだぜ
200/311

200話 鰹節音頭を踊る黒幕幼女

200話到達。活動報告に記載しました。

 海上沖合に停泊しているガレオン船。そこでは謎の宗教団体が怪しげな踊りを踊っていた。


「かつおぶし〜、かっつおぶし〜、たくさんつくるよ、かっつおぶし〜」


「かつおぶし〜、かっつおぶし〜、たくさんつくりゅよ、かっつおぶし〜」


「かつおぶし〜、かっつおぶし〜、たくさんつくるぜ、かっつおぶし〜」


 幼女がえいえいっと、手足を可愛く振って踊り、その上空でおどろおどろしい踊りを暗雲を漂わせながら妖精が踊る。そろそろ妖精の踊りは怪しくなってきたので、封印しないといけないかもしれない。


 とはいえ、かつおぶし作りである。


「カツオのたたきに白米ってあうのですね。最高ですね。もうこれだけで良いんじゃないでしょうか」


 とりあえず作ってみたカツオのたたき、ちゃんと藁で焼いた物を食いしん坊ガールなマユが食べまくっていたりもした。白米を茶碗にてんこ盛りにして、むっしゃむっしゃと。


「おいひいよ、アイちゃん! このお刺身って最初は食べるのに躊躇したけど。大トロおいひ〜」


 顔を幸せだと綻ばせながら、ララもマグロの刺身を白米と共に食べていた。そうだろう、そうだろう、刺身には白米だよな。


「ぎゃ〜、こいつ分身したよ〜」


「ん、なるべく傷つけないように倒す。むむ、こいつ身体がぐにゃぐにゃで刃が通りにくい」


 ランカとリンは甲板に乗り込んできた巨大アンコウと戦っていたりもした。アンコウは器用に分身したり、斬撃緩和のスキルでケモ娘たちを翻弄していたりもする。というか、この世界の釣りって、本当に釣り竿いらんな。


「うぉ〜、また釣れたぜっ。ここ入れ食いだなっ」


 モルガナが興奮しながら、釣り竿をあげて魚を釣り上げていた。鯛やらヒラメ、カレイを釣っているからそうでもないのか。というか、モルガナは魔物を釣らないな……。特性のおかげぽい。


 見事にてんでバラバラに遊ぶ少女たちであった。一人違う? 中の人は海底に沈ませれば良いと思います。


「ねぇ、鰹節をそんな作り方で作るわけだし?」


 ポーラと一緒に鰹を捌いて骨抜きするアイへと、トモも同じように骨抜きを手伝いながら尋ねてくる。


「ん? そうでつよ。というか、これしか作り方ないでつよね?」


 ポーラ5歳、物凄い速さで鰹を捌き、骨抜きしています。ちなみにポーラの両親たちもガレオン船に乗り込んで一緒に鰹の処理をしているが、ポーラだけに焦点を合わせれば良いだろう。幼女を見ていると癒やされるし。


「ん〜……。局長の飼っている猫も食べない干物にならない?」


「あれは石油を使った乾燥風だからでしょ。魔法ならそんなことは……。ん〜、たしかに丁寧に半年以上かけた鰹節の方が美味しい予感はしまつが、仕方ないでつよ」


 乾燥化と、魔帝国から手に入れた工作魔法を唱える。骨抜きの終わった鰹がみるみるうちに乾燥していく。適度に水分を残さないといけないから、加減が難しい。魔法操作必須だな、これ。


 工作魔法の内訳は乾燥化、凝縮化、平均化の3つだった。たしかに工作魔法ぽい。これがあればセメントを速攻乾燥させて、平均化でムラをなくすことも可能だ。セメントでなくても、レンガなども凝縮化を含めれば簡単に作れるところが凄い。


 そこまで強力な魔法ではなく、生命体や魔法生物など抵抗できるものには無効化される。低レベルの風魔法や土魔法を改造したらしいが、たしかに別属性として良い魔法だ。工作魔法なら俺も開発できるんかなぁ?


「本節だと数年かかるって聞いたことあるし、たしかに仕方ないかもね。でも、カビはどうするんだし?」


「数で勝負でつ。それになんとかなりそうでつしね」


 ヒョイと食糧倉庫から椎茸を取り出す。なにそれとトモとポーラが興味深げに見てくるので


「てんててーん。かつおぶしいたけ〜」


 女神様の神域にて作られた椎茸を取り出す。


「おぉ〜、オヤジギャグだけど、なんか凄そう」


「これは椎茸と鰹節の味が混ざってりゅね。出汁にするには両方の味が混ざって難しいでしゅ。使いこなせれば凄い料理ができりゅかも」


「これを使いこなすのはかなり難しいぜ。ちっとも使わなかった素材だからな。出汁は合体させたらいけないと反省していたぜ」


 トモは一言多いが感心して、ポーラはカプリとかつおぶしいたけを齧って感想を言う。俺がネーミングしたわけじゃないし、知らんよ。それにしても、マコトの言うとおりだろう。鰹節と椎茸の味を混ぜたら駄目だろ。


「でも、これカビじゃなくて胞子だよね?」


「………たしかに」


 かつおぶしいたけを塗りたくればカビが生えるんじゃねと思ったが、たしかにトモのいうとおりだな。どうしよ。


「凝縮化でカビを何種類か集めれば良いんですよ。成功品は解析でわかりますし」


「おぉ、なるほど! それはナイスアイデアでつね」


 ポムと手をうって感心する。かつおぶしいたけは使いづらい食材らしいから仕舞っておこ………。今の発言だぁれ?


 キョロキョロと周りを見渡すが、トモとダンボール箱に座ったポーラしかいない。ま、いっか。


「これは後で研究しゅるからちょーだい?」


「ポーラは研究熱心でつね。はい、ど〜ぞ」


 かつおぶしいたけをポーラに手渡して、さて、試すとするか。


「魔法操作、凝縮化、鰹節菌?」


 ちょっとイメージに自信が無いので、疑問口調になるが、それでも魔法を使う。


 骨抜きも終わり、再度乾燥化を軽くした鰹の燻製に手を掲げる。ゴゴゴと魔法の光が放たれて鰹節っぽくなるが……。


「駄目でつね。腐っていまつ」


「まだ早すぎたんだぜ」


 そういうのいらんからと、マコトのセリフにツッコミつつ、解析で失敗した物体と表示されたので焼却しておく。ほら、よくこういうのを投げ捨てて、後々化け物とかが産まれる小説とかあったし、念の為ね。


「次いきまつよ、次」

 

 鰹節作りのためには妥協しないのだ。幼女は鰹節が欲しいのだ。よくよく考えていたら、おっさんは鰹節を使った出汁なんかあまり使わなかったような気がしてきたけど。


 いやいや、味噌汁に使っていたはずだと、かぶりを振って次々と作るが……。


「うまく作れましぇんねぇ」


 また一つ失敗したので、焼却しながら落ち込む。予想以上に難しいぞ、これ。鰹節菌というイメージを作りにくいのも拍車をかけている。


「アイおねーちゃん、上手く魔法できないの?」


 コテンと首を傾げて尋ねてくるポーラへと頷く。上手くいかないのだ。そもそも鰹節菌なんか見たことないし。


「私もお手伝いすりゅ! 手を握れば良い?」


 フンスと息を吐き、無邪気に聞いてくるポーラに、じ〜んと感動しちゃう。良い娘だ。手を握って魔法を使えば、料理適性のあるポーラの力が影響するかもしれない。


「お願いしまつ!」


「うん!」


 ポーラが強く頷き、お互いの手を繋ぐ。


「あたしも手伝うぜ」


「面白そうなので、私も手伝いますね」


「私は応援するし?」


 マコトも頭の上に乗り手伝うと言ってくれて、トモもどこからかお祓い棒を取り出して、ぶんぶんと振る。トモの応援の仕方は少し違うんじゃね?


 3人の女の子が手を繋ぎ、妖精が頭の上で無駄にポーズをとる。


「パルス!」


 速攻ボケようとするマコトをはたき落として、再度おててを繋ぎ目を瞑り集中する。


 幼女の身体から黄金の粒子がどんどんと生み出されて、周囲はキラキラと輝き幻想的な風景となっていく。


 ふわりふわりと黄金の粒子が浮き、アイたちの髪がたなびき、身体が照らされる。


 3人の女の子たちが光り輝くその幻想的な光景に皆は息を呑み、感動して眺めていた。


 物凄い重要なイベントっぽいけど、作るのは鰹節である。


「魔法操作 凝縮化 鰹節菌!」


「かちゅおぶし!」


「ランクを上げたら面白いですよね」


 3人の声が重なり、目の前に置いてある鰹が光り輝き、眺めることも無理な眩しさになり


 ピカーン


 カッとフラッシュグレネードのような閃光が発せられるのであった。


 そうして、アイたちの目の前には鰹節ができていた。


「鰹節? これ、鰹節でつか?」


 鰹節をつんつんとつついて、アイは半眼になっちゃう。だって、ねぇ……。


 ポーラたちもしげしげと鰹節らしきものを見て戸惑う。


 だって、黄金色に輝く鰹節というか、鰹節の形をした黄金という感じなんだもの。


「解析結果は鰹節とでまちた。星マーク付きの鰹節。とっても美味しいと書いてあるんでつけど」


「やったな! それはハイクオリティなんだぜ。大成功だな」


「そんなシステムでちたっけ? なんだかおかしい感じがしまつが……。これを元菌とすれば鰹節を量産できまつか……」


 マコトのセリフには非常に納得いかないが、異世界鰹節だし、これで良いのかな? いや、第三者の力を感じるぜ。


「食べてみましゅ」


「そうでつね」


 ま、いっか。とりあえずナイフで削ってみて、と。


 シャシャッと薄く削って、皆に手渡す。ララとマユも食べ物みたいだと、集まってきた。モルガナは釣りに夢中。ランカとリンは


「今度は鮫だよ。この鮫、魚雷を撃ってくる〜」


「ふぉっー! 旧ドイツ軍が使っていたユーサーメに違いない。こいつはきっと賞金首」


 新たに現れた妙にメカニカルな鮫と戯れていたりもしたので、呼ぶのはやめておこう。


「しかし……これ食べれるんでつかね?」


 どう見ても黄金である。金を薄く延ばしたといってもおかしくないので、疑わしく眺めちゃう。


「ん、こ、これは!」


「ぐうっ!」


 ララとマユが気軽そうにパクリと口の中に入れて、パタリと倒れる。って、ええっ?


「どうしたんでつか? え? これ毒?」


 アワワワと慌てちゃうアイ。マコトとトモは平気そうにムッシャと食べているから大丈夫に見えるんだけど。現地人には毒だった?


 倒れた二人に駆け寄ると、ぽそりと二人が囁くのが耳に入る。なんじゃらほい? んん? と耳を近づけると


「うぅ……アイちゃん、これ、美味しい」


「感動で涙が止まりませんです……」


 ん? 鰹節の一口でこんなに変わるわけ?


 あんぐりと口を開けて、食べてみると


「がはっ」


 パタリと幼女も倒れちゃう。なにこれ? 美味すぎる。


「まったく魚臭くなく、口の中で消えちゃいまちた。溶けまちた! 淡いそれでいて口の中に残る魚の旨味、しかもさっと消えてなくなり余韻がのこりましぇん!」


 これ、本当に鰹節? 美味すぎるでしょ!


「あ〜、これは美味いな。さすがだぜ」


「やったね。これを使えばこれからの料理も期待できるし?」


 ようやく口を開くマコトとトモ。二人は食べた感想を口にする。どうやらこの二人は舌が肥えている模様。


「アイおねーちゃん、これを増やすの?」


 ポーラの言葉に迷う。これはまずくね? 美味しすぎて、まずいとは、これいかに。


「大丈夫なんだぜ。たまたまハイクオリティができただけで、これを元にした菌で鰹節を作っても普通の鰹節ができるだけなんだぜ」


 大丈夫だとマコトに言われて安心を……するかっ!


「たまにできちゃうんでつよね? ハイクオリティだけに」


 そうしたらこの鰹節を奪いあう戦いが勃発しそうな予感がするんだ。


「ハイクオリティは料理レベルか錬金術が高くないと作られないから安心しろよ」


「なるほど、それなら安心でつか」


 ようやく胸を撫でおろして安堵する。それなら俺以外は作れないだろうし。


「私もこれつくりゅ!」


 張り切っているポーラに少しだけ不安を覚えるけど。


 なんにしろ、鰹節はできてんだしと、黒幕幼女は何を作ろうかと迷うのであった。


 将来、ポーラの一族が作る鰹節。その中で数万本に一本、極々稀に作られる黄金の鰹節は、金と同じ重さで取り扱われるが、それは未来の話である。

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― 新着の感想 ―
[一言] 荘厳な儀式風に鰹節を作ろうとしてる所にサラッと混ざってランクを上げてくれる女神様には(笑)
[一言] 段ボール有るところ奴がいる。中の人がおっさんな女神が。 地味に楽しんでませんか女神様。女神様が楽しんでいる限り黒幕幼女安泰なのでいいんですが。
[良い点] 妙にメカニカルな亀も居てるに違いないw [気になる点] 【出汁にする気には両方の味が混ざって難しいでしゅ】「出汁にする」の後の「気」が不要かと。 [一言] 確か、魔法操作スキルは希少な力と…
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