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黒幕幼女の異世界ゲーム  作者: バッド
1章 プロローグなんだぜ
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2話 おっさんは女神様からスキルを貰う

 おっさんは、思わず真顔になってしまった。なぜかというと共通語言語読解スキルがあるゲームは、ハードで骨太な異世界とテンプレで決まっているからだ。 


 現実世界なら言葉は色々あるが、ご都合主義でなぜか皆は共通した言語で話すのが当たり前なのがライトな異世界転移なのだ。どこの国が発行しているのかわからない謎の共通通貨を使っていたりもするのがテンプレである。


 通貨発行権を持たない国は滅びるか、支配されているかだが、なぜか発行した国がわからない通貨を皆が使っているのだ。イージーな世界と言う訳。


 わざわざ共通語と言ってきたので、昔のオタクであった時の知識が鮮明に記憶から浮かび上がる。セージレベルをあげて、覚える言語を増やさないといけないハードな異世界ぽい。


「現代共通語は世界全体で、一割のエルフ、ドワーフ、ハーフリング、獣人、共人と人類圏で使っています。他は共通語を基準とした方言が五割、これは以前に滅びた神が支配していた名残りです。古代共通語は神が与えた魔法の言語ですね。これら会話と読み書きできれば、魔法の使える可能性もあり、暮らしに困りません。たぶん」


 わ〜いと、両手をあげて、嬉しそうに顔を綻ばせる女神様。


 マジかよと、両手をあげて、絶望の顔になるおっさん。


「では、行ってらっしゃ〜い。あ、姿は金髪碧眼、身体能力はその世界の騎士の平均身体能力の三倍に設定してあります。良い異世界生活を〜」


 さようなら〜と、死の切符を渡そうとする女神様に

 

「待ってください! 女神様、このチートスキルだと病気とか、毒とかに弱いんじゃないでしょうか?」


 素早くソファから立ち上がって、ジャンピング土下座をする。行商で必須の日本地区の古来からの技だ。土下座には自信がある、行商で危機に陥った時には必ず役にたってきたからな。


 このままではヤバイと直感したのだ。鑑定? アイテムボックス? その前に異世界に行くのに各種耐性が必要だ。きっときっと、病気ですぐに死ぬ未来となる予感がするのだ。


「あ〜、なるほど。たしかに言われてみれば地球人の身体を改造しているから免疫とかありませんでした。それじゃ、スキルは健康体にします?」


 言われて見ればと、女神様はプニプニほっぺをポリポリとかく。うん、知ってた。たぶん、女神様は気づいていなかったと。だが、健康体だけでは……。


 言語が通じないと、どれだけ苦労するかは大陸に移動してから思い知った。バウムクーヘンと片言で意味の通じない言葉を語っていた苦い記憶があるし。


 異世界では地球以上に致命的だろう。なにしろハードな異世界ぽいし。女神様がチートスキルと呼ぶぐらいだし。読み書きは文明が発達していない時代であるほど有用なのだから。


 なので、頭をゴリゴリと絨毯へと押し付ける。


「言語読解スキルも貰えませんか? そうじゃないと、俺は野垂れ死にすると、今までの経験からわかりますので!」


「う〜ん、でもチートスキルは一つがテンプレですし。でも、たしかにこのままだと異世界転移して数分後に血を吐いて死んじゃう予感がしますね……」


 怖いことを言う女神様である。やはり土下座しておいて良かった。俺、グッジョブ。


「それじゃ、こうしましょう。一つのスキルを与える毎に五歳分を若くしちゃいます。それだけ生活は苦労しちゃいますけど。ちなみにその身体の今の肉体年齢は20歳です」


 良い考えを思いついたと、ポンと手をうつ女神様に寿命を伸ばして若くするのがペナルティかと意外に思い、そんな異世界はやはりハードだと考える。


「ありがとうございます。では若くしてください」


 是非もない。スキルは二つとも必要なのだ。あとは己のこれまでの経験を信じて異世界を生き抜くのみ。おっさんは強靭なる意思を持っていると自負しているのだ。……ん? というか……。


「わかりました。なら、せっかくですし三つあげますね。まずは超健康体スキル。毒、病気、呪い、精神攻撃、寄生攻撃無効で、なんと六時間の睡眠または睡眠状態レベルのリラックスをすれば、欠損も治っちゃう健康体になるチートスキルです」


 くるくると女神様は可愛らしく回転しながら、一方的に話を続けてくる。


「作物の手スキルと食糧倉庫スキル。作物の手は地球のいかなる作物の種も女神イチ式加工をされて産み出せます。それとそれらの作物を育てて加工できるスキルです。女神イチ式とは、異世界の植物と交配不可で収穫できた二世代目は決して育生不可で、異世界の植生に優しいシステムです。食糧倉庫は地球産の作物なら時間停止で仕舞える専用倉庫です。実際に使えば色々わかります」


 バッと回転を止めて、両手を掲げて決め顔になる女神様。子供の決め顔は可愛らしいなぁと思いながらも、いきなりの展開にハッと気を取り直す。


 いつの間にか自分の身体が小さくなっていた。恐らくは15歳分スキル付与に使われたのだろうが、勝手にスキルを三つ付与されたのは後でに回して、肝心なことを聞く。


 迂闊にも、最初に聞く内容であったのに、先入観から聞くのを怠った。


「すいません、女神様。俺が行く異世界はどんな世界ですか?」


 人類がいるらしいが、目が10個とか、手足がたくさんある人類かもしれない。その場合は異世界転移をお断りしようと決めている。というか、俺としたことが一番重要なことを聞き忘れるとは、やはり異世界に浮かれていたのだろう。


「あ〜、はいはい。昔のハードモードの紙ゲームとテレビゲームがごっちゃになった剣と魔法の世界です。あとは自分で調べてください。楽しみが減っちゃうでしょ? ただ現実なので、寿命とか政治とかはゲームみたいな感じではないです」


「ぶっちゃけますね。俺にはわかりやすくて良いですが……それなら地球産の作物と同じもんがあるんじゃ……品種改良されていない原種ですか?」


「地球と同じ作物は麦とかですね。神様の世界ツクールにデフォルトで入っているらしいです。昔暴れた神様に滅ぼされた神様の誰かが親切に作ったパッケージだとか。でも八割は植生違いますよ。ロマン植物とかいますしね」


 なるほどと、女神様の教えてくれる内容を咀嚼して、考える。やはりハードモードなのか……。だが、そこまで問題はなさそうだし、文明が進んでない分、野蛮でやりやすい世界だ。自分の夢が叶うかもしれない。


「で、スキル三つセットはいりませんか?」


 最初に商品の魅力を語って、購買欲を持たせるセールスマンみたいなことをやる女神様である。それを聞いたら、このスキル三つをいらないなんて断る言葉は出せない。


 しかし、しかし……。自分の手を見ると物凄い小さい。背丈も五歳児の背丈だろう。こんな状態でハードな異世界を生き抜くことはできそうにない。しかし…しかし…。


 迷うおっさんへと、女神様が優しい表情で口元をニマニマと悪戯そうにしながら一つの提案を持ちかけてきた。


「その身体でも騎士の三倍のステータスはあります。ゲームと同じく年齢だけが若いだけでステータスには影響しないというやつです。でも……」


 ぴとっと、俺の鼻に指をつけてきて


「サービスです。もう一つスキルをあげちゃいます。貴方の夢を叶えられる可能性のあるスキル。生き抜くために便利なスキル。ステータスも平民の三倍のステータスにしておきますけどどうします?」


 可愛らしい顔を近づけてきて、女神様は悪戯そうな笑みを変えずに聞いてくる。


 その提案の内容。即ちスキルの説明を聞いた俺は断れなかった。


 たしかに俺の夢を叶えられる可能性があるスキルだ。


 代価がでかすぎるが……どうせ歳だったんだ。この二度目の人生はボーナスみたいなもの。はっちゃけることに決めてやるぜ。


 俺はその提案に強く頷き、おまけも貰えませんかと頼み込み、そこそこのアイテムを貰い、さらにおまけのおまけも貰えませんかと行商技、土下座アタックを披露して貰うのであった。


 行商を仕事としていた俺だ。貰えるもんはとことん貰う。相手が怒らないレベルで。


 おっさんはがめついのだ。商人なら当たり前だと思うけど。


 そうして、しばらくの時間が経過して、女神様との話し合いが終わり、いよいよ旅立ちの時が来た。


「貴方が楽しめる人生を期待しています。ムフフ、夢が叶うのをお祈り……いえ、私の加護をあげましょう」


 ていっ、と女神様は俺に蒼い粒子を振りかけてから、ニコリと慈愛の微笑みとなる。


「ありがとうございまつ。あたちも頑張るでつ」


 俺はペコリと頭を下げてお礼を……んん? 今のなにか変じゃなかった?


「テンプレですが、ステータスと言えば貴女とナビ妖精しか見えないし触れないステータスボードが出ますので、後で確認しておいてくださいね。それじゃ、バッハハーイ」


「待ってください。あたち、なにか口調が変でつ……」


 転移の光に俺は包まれ始めて、その光量に目を瞑っちゃう。なにか変でつと、女神様に尋ねることもできずに。


 俺は異世界へと転移するのであった。


 長生きできるかと、短命で終わるか、あたちの夢が叶うのか。それは誰にもわからずに。


 第二の人生が始まったのであった。


 既に旅立ちから不穏な空気が発せられていたけど。






 鬱蒼と生い茂る植物。陽の光を防ぎ、影を作る見上げても先端が見えない長大な木々が聳え立つ中で、俺は膝をついていた。


「あぅぅぅ〜。最後の加護はいらなかったでつ……」


 嘆き悲しむその視線の先。宙に浮かぶ半透明のステータスボード。自分が取得したスキル一覧に記載されている内容。


 そこにはこう書いてある。


「可愛らしい女神の加護 戦闘時に高速思考になる。知力に女神の加護補正、口調が幼女になる」


 最後の加護が極めていりません。それに、なんだか頭が悪くなった感じがするのは気のせいかな? 


 なんだか俺の頭が侵食されていくような……。


 女神の加護。女神の呪いといった感じかもしれない。アホの呪い……。


 なぜ幼女の口調なのだ。たぶんなにかこだわりがあるのだろうなぁと、自分の手を見てみる。紅葉のようなちっこいプニプニおててが目に入ってくる。


 鏡を見れば可愛らしい幼女の顔が見えるだろう。


「悪魔に魂を売っちまいまちた」


 声も小鳥が囀るような可愛らしい声である。


 はぁ〜、と俺はため息を吐く。仕方ないとはいえ、こうなるとは……。


 実際は女神だけど、悪魔と契約内容は変わらないと思います。ちょっとどころか、かなりこちらの足元を見た契約だったからな。


「しょうがないでつし、残りのスキルを確認しまつか」


 改めてステータスボードを開こうとした時


「お前が社長か? よろしくな〜」


 フヨフヨと小さい光の塊が空から舞い降りてきた。仄かな光を宿す塊は手のひらサイズの半透明な翅を生やした銀髪ロングの妖精であった。


「社長って、なんでつか?」


 いきなりの意味不明なセリフに、俺が訝しげに妖精を見ると、ダンスをするように回転をしながら、妖精は得意げな表情で口を開く。


「あたしの名前はマコト! 世界を跨ぐ妖精マコトだぜ! あんたのサポートをするために送られてきた。よろしくな社長!」


「えっと、まず社長と呼ぶ理由を教えて欲しいのでつが」


「これからはあんたが雇い主だからな。よろしく社長」


 妖精のナビとは、俺は勇者っぽいなと思いながら、挨拶を返すのであった。

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[良い点] 後天的銀髪美少女芸人系アイドルが妖精になってますね!? 前作のラストから色々変化しているようですね! [気になる点] あれ、結局言語スキルは貰ってないんですね?
[一言] 銀髪残念アイドル娘の気配がする妖精ですな。
[良い点] あいえあああ!(´⊙ω⊙`)オッさん幼女爆誕!! [気になる点] 日本地区、前回のドイツ地区、こっから考えるに崩壊後の世界は順調に解放されてんですね( ´ ▽ ` )騎士の3倍が平民の3倍…
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