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黒幕幼女の異世界ゲーム  作者: バッド
13章 塔のダンジョンにチャレンジなんだぜ
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182話 神聖騎士を任命する黒幕幼女

 王都タイタンの月光街にある月光屋敷。屋敷の一番奥にある部屋では、厳かな儀式が始まろうとしていた。


 めがみのしと、と書かれたタスキを肩にかけて、ふんすふんすと鼻息荒く幼女が真っ白なトーガを着込んで立っていた。


 部屋は薄暗く、祭壇に置かれている銀の燭台に灯る蝋燭の灯りだけが周囲を照らしている。


 祭壇の上には妖精が手を斜め上に掲げて、足を伸ばしてポーズをとっており、めがみぞうのふり、と書かれたタスキを肩にかけている。どうやら本物の女神像はNGだった模様。


 たぶん腕を4本にしたり、顔を3つにしたりと悪ノリして作ったのがいけなかったのだろう。祭壇におこうとしたら、灰となりまちた。


 その二人だけで、部屋はアホな空気を醸し出していたが、幼女の前に跪くお爺さんが真面目な雰囲気を少しだけ生み出していた。


 たぶん厳かな儀式。ごっこ遊びじゃないと信じたい。


「ギュンター卿よ。この間の戦い、実に見事でちた。その褒美として、神聖騎士+へと昇格をしまつ」


「ハハッ! 有難き幸せ!」


「日本酒ベストセレクション30本詰め合わせもあげまつ」


「おぉっ! さすがは姫。某は一生ついていきますぞ!」


 お酒の褒美になると、声を弾ませて喜ぶ酒騎士であった。


 まぁ、こんなもんかと、最後に剣をお爺さんの肩に置いて終わりだよねと、一応肩にウンセと苦労して置く。でもセリフがよくわからない。幼女はそういうのに詳しくないのだ。


「ん、リンが教える。原稿用紙30枚にまとめてきた。少し少ないけど、このセリフを」


「これからも頑張ってくだしゃいね、おしまい!」


 壁際に立つ銀髪侍少女がなにか言ってきたがスルー。30枚って多すぎだろ。


 と、言うわけで、きたる悪魔王との戦いも考慮して、ギュンター爺さんは新型となった。こんな感じ。


ギュンター

職業︰神聖騎士+

体力︰1800

魔力︰600

ちから︰160

ぼうぎょ︰200

すばやさ︰150


特性︰呪い無効、精神攻撃無効、寄生無効、浮遊、神聖法院(仲間の状態異常大耐性)

隠し特性︰神聖なる身体 悪魔、不死系に聖なる炎で追加中ダメージ。これは悪魔もしくはアンデッドが神聖騎士に触れると発動する。


スキル︰礼儀作法5、聖剣技7、格闘技5、剣術7、騎士剣術7、槍術7、騎士槍術7、弓術3、鎧術7、盾術7、騎乗術3、回復魔法5、闘気法3、魔装2、気配察知6、空中機動5、魔法操作


装備︰浄化の赤竜剣(攻撃力250 聖属性、斬撃+)、癒光の赤竜鎧(防御力200 オートリジェネ、物理魔法耐性+)、魔鏡の赤竜鱗盾(防御力150 魔法反射、6枚の結晶竜鱗がシールドビットとして盾から分裂して展開可能)、ミスリルの弓矢(攻撃力90)、赤竜の槍(攻撃力190 火属性、貫通+)、ミスリルソード(攻撃力90)、聖なる服(防御力60 状態異常耐性+)聖獣セイントホース、自動修復、自動帰還




 

 素材は特性浮遊持ちの霊以外は全部人である。ギュンターは単純な特性とスキル構成でないと、神聖騎士にはなれないので。スキルは騎士系を全部取得。闘気法と魔装もつけて、まさしく聖なる騎士といった感じ。職業もそれに合わせて神聖騎士となった。特性浮遊や空中機動は、もはやデフォルトでつけないといけないと思います。


 特性神聖法院は神聖騎士にした時に、自動で覚えた。パーティーへのクリティカルを含む状態異常攻撃を防ぐ特性だ。


 装備は気合いをいれた。浄化のサファイア、赤竜の骨、オリハルコンを使い浄化の赤竜剣。光のオーブ、アダマンタイト、赤竜鱗を使い癒光の赤竜鎧を作成。魔鏡の甲羅、結晶竜鱗6枚、ミスリル6を使い魔鏡の赤竜鱗盾を。赤竜の血、赤竜の牙、アダマンタイトにて赤竜の槍を作成したのだ。


 ミスリル2個でミスリルソードとミスリルの弓矢。闇の毛皮100で聖なる服を作れた。闇、悪魔系統を素材に幼女が作ると浄化されて聖なる物になるみたい。


 なぜミスリルソードと聖なる服を作ったかというと、普段使いにしてほしいから。赤竜系統は物凄い目立つ武具だと思うので。たぶん神器だと勘違いされると思う。ちなみに武具は全て青と白色で統一して作られている。赤竜なのに。神聖騎士が赤色は変だと思うんだ。


 これなら紅蓮と戦ってもなんとかなりそうなステータスだろう。ただ、完全に戦闘特化なので使い勝手はガイの方が上だ。悪魔王との戦いで大活躍間違いなしではある。


「全てバージョンアップされた騎士。神聖騎士+ギュンターばんじゃーい」


「ばんじゃーい」


 リンが喜ぶ幼女に合わせてくれる。キャッキャと楽しげに遊ぶ二人は、祭壇にわさび巻きを奉納したりしちゃう。女神の使徒よ、ドロップアップの加護をくれ給え〜。


 ギュンターのパワーアップイベント終わり、と数分でイベントを終えたアイは幼女なので遊んじゃうのであった。きっと、わさび巻きを女神様は好きだと思うんだよね。





「今日はギュンターお爺さんの神聖騎士就任とガイの成果を祝って、宴会でつ! 本国より、お爺さんは月光の成功を認められて神聖騎士となりまちた!」


 広間にぽてぽてと戻ったアイは、わ〜いとおててを掲げて、満開の桜のような笑顔で皆に宣言した。ちょうど皆も広間に集まり寛いでいたので、ちょうど良い。テーブルやソファやらクッションを置きまくって、広間というか休憩所になっているけど。


「おぉ〜。アイちゃん、神聖騎士って、なぁに?」


 ララが質問をしてくるので、ニコニコと笑顔で答える。


「神聖騎士は全ての聖騎士を纏める者でつ。本国でも数人しかいない希少な職業でつね。なかなかなれないことで有名なんでつよ。強さと徳を持つ善なる者と建前はなってまつ」


「騎士団長のようなものですか?」


「ちっちっちっ、ダランしゃん、神聖騎士は本国の精強なる聖騎士の頂点。軍を纏める元帥みたいなものでつ」


 ダランの質問に、ちっこい指をフリフリと振って、もっと凄いのだと、ぴょんぴょん飛び跳ねて言う。その姿は無邪気な幼女で可愛らしい。


「凄えぜ。脚本家になれるな。今度劇を作ろうぜ、あたし主役で」


 なんだか妖精が感心してたけど聞こえないフリ。


「そこまでとは……。ギュンター卿おめでとうございます」

「おめでとうございます」

「さすがはギュンター卿」


 広間にいたバーンたちも、お祝いの言葉をギュンターに伝えてくるので、うむうむとお爺さんは喜ばしい表情で、祝いの言葉を受け取る。


「儂の祝いなので、飲み放題にするらしいぞ」


 喜ばしい表情なのは宴会ができるからであった模様。


「ガイ様はなんの成果なのでしょうか?」


 マーサが問いかけてくるので、答えてあげる。


「ガイは悪徳貴族をやり込めまちた。相手からの賠償金は金貨30万枚。それに合わせて今までの魔法道具作成とかの功績もありまつからね。一緒にお祝いしまつ」


 そろそろガイにもちゃんとしたご褒美が必要だと思ったのだ。それと宴会したいし。


「お、親分が優しい。明日は嵐に間違いねえっ。あの極悪なブラック企業の社長のようなあの親分が優しいっ」


 感動だと、涙ぐむ山賊をニコニコと笑顔で見ながら話を続ける。


「ガイは報奨金として金貨3万枚を贈りまつ。え? そんなにいらない? わかりまちた、そのうち金貨2万枚は宴会費用にしまつ。え? 宴会にしては費用がかかってる? わかりまちた、夏の前のお祭りにランクアップしましょー。さすがはガイ。太っ腹でつね」


 ガイが答える前に、幼女はその優しい考えを読み取って、ウンウンと頷く。さすがはガイ。心優しいおっさんだ。


 あれよあれよとお祭りに変更された。気前が良い勇者だねと、アイはハウゼンにお祭りにする手配を指示しちゃう。宴会よりもお祭りしたいのでつ。


「あれぇ? あっという間にあっしの報奨金がなくなりましたぜ? おかしくないですかい? もしかして怒ってます?」


 やべえ、からかいすぎたと、冷や汗をガイは流す。正直、忙しいのは自覚しているが、いつものふざけたやりとりだったのだ。


「まさか? 怒っているフリでつよ。さぁ、宴会からランクアップしたのでつが、とりあえず宴会はけってーい。さぁ、酒蔵からじゃんじゃんお酒とジュース、食料庫からどんどん食材を持ち出して、お料理をたくさん作って食べましょー」


「もっとタチが悪かった!」


 幼女の言葉に恐れおののく山賊である。怒ったフリなのだよ。怒ったフリ……フフフ、本当だよ?


 ガイも特に抗議はしない。本当に欲しかったら、何でも親分はくれるし、というか金貨増えすぎなんだよな。正直祭りに使った方が皆が楽しめるので、ガイも嬉しい。


 皆はバラバラと宴会の準備に散らばっていく。とはいえ、バーンはお客様、ギュンターは今回の主役だ。働くことはなくのんびりとしている。ダランやダツたちも荷物持ちやハウゼンの話し合いの護衛についていく。


 ガイ? ガイはララに引っ張られて厨房に連行されたよ。


 幼女? 幼女は働いたらいけないと思うので、ソファでゴロゴロするよ。


 ワイワイと騒がしかった広間が一気に静かになる中で、バーンがギュンターへと真面目な表情になり話しかけてくる。なんの話かと思えば


「タイタン王が月光と接触をとりたいようです。私に調整をするように命じてきました。どうやらデーモンスレイヤーがギュンター卿だとわかっているようでした。接触をとりたいのであれば、ドッチナー侯爵で良いのではないでしょうか?」


 バーンもドッチナー侯爵が月光商会とかなり親密に付き合っているのは知っている。辺境の子爵よりもドッチナー侯爵を頼ったほうが良いのではないかと、疑問をもったのだ。


 ふむ、とギュンターは顎に手をあてて考え込むフリをする。もちろんモニター越しにどういうことでしょうとアイに聞いてくるのは言うまでもない。


「簡単なことだ。バーン子爵が月光商会と王家との話し合いの調整をできるとあれば、バーン子爵は本当に月光と繋がりがあると貴族は考えるであろう。ドッチナー侯爵では、その高い爵位が壁となり、近づくのに躊躇う者もいよう。だが、子爵ならば近づくことに躊躇う者はいまい。月光商会に縁を作りたい者たちをバーン子爵に集めるつもりなのだ。ドッチナー侯爵、バーン子爵と月光商会の窓口がはっきりしていれば、監視もやりやすいのだろう」


「そういうことですか……。私は子爵に昇爵することになったので、王都でしばらく手続きをしなくてはなりません。しばらく忙しくなりそうですね。しかし、さすがはギュンター卿。私ではそのような考えに至ることはできませんでした」


「年の功というやつだ。この程度なら簡単に推測できる」


 ふらふらと手を振って、なんともないように答える神聖騎士。平然と答えるその様子はさすがは年の功。ハッタリだけは超一流である。


「王様との謁見イベントか〜。なにか色々とイベントがありそうで楽しそうだよな」


 マコトが俺の肩の上に乗りながら楽しそうに言うが……。う〜ん……。


「ん、なにか気になることがあるのか? 今のギュンターならどんな敵でも大丈夫だろ?」


「フラグを建ててくれてありがとうでつ。たぶん王城にはなにがしかのトラップがある予感がするんでつよ。神器系の。だから、あたちが行くにはなにか対策が必要でつし……。もっと大変なこともありまつ」


 真剣な表情になり、俺はマコトを見つめる。極めて重大なことがあるのだよ。


「悪魔王退治か?」


 マコトの問いにフリフリと首を横に振って否定する。もっと重大なことだ。


「そろそろ暑くなるので、あたちは活動限界になりまつ」


「あ〜……そういや、社長は暑さが苦手だったか。それじゃしばらくはお休みか?」


「そうでつね。お爺さんは南部地域に派遣しましょー。留守を理由に謁見イベントを延期させまつ」


 暑いのは苦手なのだ、エアコンの中に籠もるのも、魔法の服で暑さを誤魔化すこともするつもりはない。幼女の身体に悪そうだしね。なので、南部地域へと向かったことにして、謁見は延期させようと、黒幕幼女は考えるのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] わさび巻き…中のおっさんは大好きでしょうが女神様が食べると「からいでふ~」と涙目になってしまう予感。 女神様を泣かせると色々まずそうですね(´д`)
[気になる点] いつも楽しく読んでいますが、今回はかなりもやっとしました。 ガイはお調子者ではありますが、性根は善良で脇の甘さはあっても明らかに愚かな行動をとるような事もありません。 そしてギュンター…
[良い点] 何やらフリーメーソンじみた月光館での謎の儀式(^ ^)幼女と妖精が楽しげで何よりです。 [気になる点] リンの30枚の原稿用紙が気になりますね、おそらくは「その者、光と影を受けた剣をかざし…
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