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黒幕幼女の異世界ゲーム  作者: バッド
2章 まずは拠点を整備なんだぜ
18/311

18話 2番隊来たりて、黒幕幼女は歓迎する

 王都を守る門番は今日も今日とて、あくび混じりに立ち番をしていた。暇そうに通り過ぎる人々を見ながら、今夜はどこに食いに行こうかと独身の門番は考えていた。


 大店の商隊の馬車を馬が牽いていき、傭兵が護衛として足早についていく。行商人の隊商が徒歩で通っていく。そこまで金のない行商人たちが金を出しあって、護衛を雇い各村を訪れて、商売をしてるのだ。当然、腕の良い傭兵ではないから、魔物に殺られたり、ともすれば、傭兵が盗賊になって行商人を襲うことすらある命懸けの仕事だ。


 あんな仕事は金貨を100枚貰ってもゴメンだなと、月の収入が金貨8枚の門番は思う。よくあんな仕事をできるなと思いながら、行商人たちの集団を眺める。


 食い詰め傭兵だろう装備も青銅の槍と革鎧の腕の悪そうな連中と仲良く話ながら歩いて行くので、金ではなく信頼関係を大事にしているのだろう。


 再びあくびをしながら、今度はスラム街の連中が歩いていくのを見て、哀れに思う。裸足で森林に入っていくのだから、足は傷つき疲れ果てている。その隣で進む大店の商隊の馬車に乗る太った男と比べると、世間の格差を考えて、肩をすくめる。


 そうして、流れ行く人々を眺めていると、奇妙な集団を見つけた。馬を魔物にでも殺られたのか、なんとか修復したとわかる幌馬車を牽く集団である。


 合計7人、全員ローブを着込んでいる。一人は大柄の眼光鋭い爺さんで、伸ばした髪はすべて白髪だが、老いてもその動きに淀みはない。


 残りの連中は平凡そうな顔つきの、視線を外せば忘れてしまいそうな特徴のない奴らだが、なんとたった4人で表情も変えずに平然と重そうな馬車を引っ張っていていた。


 馬車には武器防具に、穀物らしい袋が積んであり、かなり重そうであるのに、だ。


 あいつらはその身体能力からして平民っぽくない。特に偉そうに先頭を歩く爺さんは。騎士に違いない。騎士が馬にも乗らずに歩くのは変だ。


 怪しい奴らだと、門番は目を光らして


 ふわぁと、あくびをして見なかったことにするのであった。あんな見るからに危険な奴らに絡むには給料が足りない。


 いつものごとく、門番は王都門を守る仕事をしっかりと務めるのであった。



 

 薄暗い雰囲気の道路を怪しい集団は歩く。既に周りはうらびれており、ゴミが散らばっておりスラム街へと入っていた。しかしながら、スラム街にお決まりの道路に座り込む痩せた人間が見えない。


 少し様子が変なスラム街を歩く集団。ギィギイと馬車の軋む音が響き、えっちらおっちらと馬車が進む。


 その馬車の集団の前に数人の人間が立ち塞がってきた。後ろにも数人の人間が現れて退路を塞ぐ。


「へっへっへ。ここは月光の縄張りなんだぜ爺さん。その馬車を置いていきな。命は助けてやるよ」


 下劣な表情で、短剣をこれみよがしに見せながら、相手が告げるのを爺さんは冷たい目で眺めるながら口を開く。


「月光……ここで間違いないようだな。こいつらは問題であるが」


 チンピラのリーダーらしき短剣を持つ男へと、爺さんは歩み寄って呟くように言う。その姿には動揺もなく、平然としていた。


「おぅ! この短剣が見えねえのか? あ、危ないんだぞ、こら! 危ないって! 子供の頃に刃物には気をつけなさいと注意されなかったのか!」


 チンピラリーダーが慌てるのも気にせずに、ローブから手を伸ばす爺さん。その手は青い色に塗られた銅の手甲に覆われている。


 ムンズと短剣を握り、その様子にチンピラリーダーは目を剥く。血だらけになると思いきや爺さんの手には傷一つなく、あっさりとチンピラリーダーは短剣を奪われてしまう。


「ひっ、騎士だ、この爺さん!」


 腰を抜かして座り込むチンピラリーダーと、それを見て動揺する他の連中。短剣を素手で握って傷も負わないその身体能力。魔物と戦える選ばれし血筋。平民とは違うその強さは騎士以外にありえないと。


「こやつらの矯正は後でで良いだろう。さて、姫の場所まで案内してもらおうか」


 バサリとローブをはためかすと、爺さんのその体躯は青いプレートメイルで覆われている姿を現すのであった。





 アイの拠点。幼女が住む部屋には一種異様な空気に包まれていた。


 いつものように、ボロっちい椅子に座り、ギィギイと椅子を鳴らして、むふふと偉そうに平坦な胸をそらしていた。こういうシチュエーションが大好きな幼女なのである。中身はおっさんだったような気がするが、その幼稚なところを見ると違うのだろう。


 肩にはマコトが足を組んで、ふふふと妖しげにしている。この妖精もこのようなシチュエーションが大好きなのだ。以前は目立つ仕事についていたとか、いないとか。お似合いの二人であるのは間違いない。


 ガイがアイの隣に立ち、壁際にケインやマーサ、ララたちが並んで様子を見ている。


 アイの目の前には跪く老人とその部下たち。老人は青い鎧に身をつつみ、立派な騎士に見えて、その部下たちも身じろぎもせずに静かに跪づいている。


「よくきまちた、ギュンター。待ちわびてまちた。顔をあげよ」


「はっ。遅参して申し訳ありません。このギュンターとダツ一族の6人只今到着のご挨拶をさせていただきます」


 お爺さんが跪きながら、挨拶を返してきて、アイはご機嫌で足をブンブンと振っちゃう。むふーむふーと興奮しちゃうけど、隠さなきゃと、なんとか内心に押し隠す。


「よい。これであたちも安心できるというものでつ」


 フハハハと、内心でこのシチュエーション最高と、尻尾があったらブンブン振っちゃうだろう黒幕幼女がここにいた。おっさんの夢が一つ叶ったぜとも思っていた。実にしょうもない。


「ははっ! このギュンターが姫の剣となり盾となりましょう。ご不便をおかけしました」


 ノリノリのギュンター爺さんである。まさに忠義の騎士に見えて感心しちゃう。え? この爺さんは昔から仕えてくれた騎士一族じゃないよね? と考えちゃうほどに。もしかして、俺は前世で姫だったのかしらん。


 お前の前世はむさ苦しいおっさんだろと、ツッコミがあって良いかもしれないが、転移しているので、前世は姫の可能性がワンチャンあるよと思うアイ。


 なんど転生しても、姫はないだろうと思われるが。


「これであたしも楽になるぜ! 一人でアイを守るのは大変だったからな!」


 フンスと妖精も胸を張り設定にのる。凄腕魔法使い妖精マコトなんだぜと。


「マコト殿にも苦労をお掛けしました。儂にこれからはお任せくだされ」


 ドンと胸を叩き、頼もしい姿を見せるギュンター爺さん。


「あ、あっしも頑張ってましたぜ。ギュンター爺さんよぉ」


「そなたが頑張ってこのあばら家か? ガイよ?」


「ま、まずは1つずつなんですぜ。まずは」


 アイの座る椅子の後ろに屈み込み、ギュンターに睨まれて、震える声で弁明する小物代表ガイ。それは演技? 演技なの? 本当に演技?


 呆れるアイへと、ギュンターが後ろにいる部下へと目線を向ける。部下はコクリと頷き鉄の箱をアイへの前へと置く。


「まずはこれをお納めください。金貨1200枚、金板20枚でございます」


 鉄の箱をギュンターが開けると、ジャラリと金の眩い輝きが目に入り、ケインたちはもちろん、貴族に仕えていたマーサすらも、その大金に驚き目をみはる。


 なかなか見ない金額である。領地を持たぬ法衣男爵の年収を超えるに違いない。それを箱に入れてポンとなんでもないように渡す爺さんは高位騎士に違いないと、マーサは推測する。


「よろちい。ようやくまともに活動できまつね。あれも持ってきまちたか?」


 ウンウンと頷いてご満悦な幼女は、さらにギュンターへと尋ねる。


「はっ! ご要望の通りに。後でご検分をお願い致します」


「よくやりまちた。長旅ごくろー様でちた。ひとまず休むとよいでつよ」


 あたちは優しいボスなんでつよと、幼女が労りの声をかけると、まさか親分の影武者? とか、椅子の後ろから聞こえてくるので、幼女パンチをお見舞いしておく。 


「ありがたきお言葉ありがとうございます。しかし、まずは姫の支配地域らしくしなくてはと思う所存です」


 ん? とコテンと小首を可愛らしく傾げる幼女。どういう意味?


「ここに来てすぐにチンピラたちに絡まれましてな。姫の地域での狼藉は見逃すことができません。ソードマン、アーチャー、巡回に行ってこい!」


「はっ!」


 ソードマンとアーチャーが、それではと会釈して部屋を出ていく。口をぱくぱくさせて幼女は見送るしかなかったり。


 どうやら堅物らしいねと嘆息すると、もう普通にして良いからと、ちっこいおててをひらひらさせる。


 ありがとうございますと、立ち上がり


「で、少女よ。なぜ儂だけを見て驚いた? 何か変なものを見たような奇妙な驚きかたであったが?」


 ララへと剣を突きつけて、尋ねるギュンターだった。


 驚きで目を開き、身体を縮こませるララをマーサが庇おうとするが、ギュンターはその鋭い眼光で動きを制する。


「え、と、ギュンター様が……着ている鎧が魔法の鎧だったからです」


 ララの怯えた声に、今度はギュンターが目を見開く。アイたちも驚きでララを見つめてしまう。魔法の鎧だって、なんでわかった訳?


「なぜこの鎧が魔法の鎧だと思った? 答えよ!」


 口調を荒くして尋ねるギュンターに、ララはマーサへと視線を向けるが、母親がコクリと頷くのを見て、観念して自らの力を話すのであった。


「なるほど……。まほーを見抜く瞳でつか」


 なにそれかっこいいと、アイは厨二病心が魔眼なんてかっこいいと騒ぐが、それよりも気になることを尋ねる。


「あたちたちの持っているのも、まほーそうびだと、わかって声をかけたんでつね?」


「う、うん。洋服が光っていたり、斧も光っていたりしたから」


 おずおずとしたララへと、続けて尋ねる。極めて重要なことだ。


「あたちたちの持っている装備が光って見えたんでつね?」


「そうだよ。だからお金持ちだと思って、声をかけたの」


「……そうでつか。それならば問題ないでしょー。これからはその瞳を使って貰うときがあるかもしれないので、ララよろしくでつ」


 魔法を見抜く瞳。透明化の魔法も見抜かれそうだ。魔道具の存在も。使いどころは難しいが、いつか役に立つ時が来るかもしれない。


 そして、ゲームキャラは魔法の存在として認識されないことに心底安心した。魔法的生物にはゲームキャラは入らないのだろう。もしも魔法生物として認識されていたら、極めて面倒なことになるところだった。


「脅かしてごめんなしゃい。これからのことも考えて、どうぞ」


 ガイから受け取り、ララへとポンと投げるそれに、慌てて少女は受け取り


「き、金貨! 金貨だっ!」


 手にある金色の通貨を見て、驚き飛び上がっちゃう。


「良いの、アイちゃん? これ、貰っても?」


「もちろんでつ。これからの働きに期待しまつ。では、ガイ、マコト、ギュンター以外は解散しまつ」


 はい、もうイベントはおしまい、と手をぱちぱちと可愛らしく叩くと、皆は頭を下げて出ていく。出て行く際に、マーサが真剣な表情で深々と頭を下げたのが印象的だった。


 皆がいなくなり、気配察知にも感じられなくなったことを確認して、アイはステータスを呼び出す。


 ギュンターたちのステータスを呼び出して確認したのだ。


 こんな感じ。


ギュンター 

職業︰聖騎士

体力︰400

魔力︰200

ちから︰50

ぼうぎょ︰80

すばやさ︰40

特性︰呪い、精神攻撃、寄生無効、配下強化 配下のステータスを全て5アップ

スキル︰礼儀作法2、聖剣技2、格闘技2、剣術2、鎧術2、盾術2、回復魔法2、気配察知2

装備︰魔法の片手剣、魔法の鎧、魔法のカイトシールド、自動修復、自動帰還


ダツシリーズ 一つ以外はステータス10


ダツソードマン2人 格闘技2、剣術2、気配察知2 ちから20

ダツアーチャー2人 格闘技2、弓術1、気配察知2、気配潜伏2 ちから18

ダツシャーマン  格闘技2、火魔法2、回復魔法2 ちから15

ダツスミス    格闘技2、鍛冶3、火魔法2、ちから15


 

 わかりやすくギュンターは人素材をメインにサブとしてゴブリンキングの力を受け継ぎ、ゴブリン素材100を消費して、ぼうぎょとすばやさを上げた。そして、このステータスの偏りとスキルの偏りで聖騎士の職業が開放されたので、聖騎士にしたのだ。


 聖騎士の特性は、ゲームで言えばタンクである。高いヒットポイントが売りである。あと、騎士ということで、礼儀作法もスキルについた。騎士が礼儀作法を知らないのは変だかららしい。


 それともう1つの職業特性として、聖剣技。何という響きの良さと、幼女はわくわくしていたら、悪魔、不死系にダメージ補正が入るだけだとか。技も同じように悪魔、不死系に特化しているとのことで、喜んだぶんがっかりしました。まぁ、いつか役に立つだろう。


 山賊の特性はとマコトに尋ねたら、小悪党に見えることらしい。なるほど。


 ダツシリーズは量産型シリーズにして、メインに人を6使用。サブとしてソードマンはゴブリンリーダー、アーチャー、シャーマンも同じくゴブリンアーチャーとシャーマンの力を受け継いだ。スミスはゴブリンシャーマンの力を受け継いでいる。


 クーザとどちらに名前をしようかなと迷ったが、正式採用はダツにした。ネーミングの元は内緒です。


「さて、これで兵士はとりあえず揃いまちた。例のモノを使って次は拠点の内政をしまつ」


「オッケーだぜ」


「ヘイ親分」


「かしこまりました」


 忠実なる部下を連れて、黒幕幼女は穀物の袋を開けに行く。


 ギュンターたちに見つけたお金とかを渡して、外部から来たように演じさせた黒幕幼女であった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ジェイガンですね、分かります。 [気になる点] 門番の行動がくたびれたオッサンと被りまくる件。 異世界の同位存在と言われても納得するレベル。 [一言] 空中分解しそうな量産兵士ですね。
[一言] 「手にある金色の通貨を見て、驚き飛び上がっちゃう。 「良いの、アイちゃん? これ、貰っても?」 スラムに住んでいて、力もない者に金貨を与えるって、どうなの。治安が良いのなら、利があるけど、…
[一言] ネーミングの元は内緒。内緒であるが分かってしまう。 戦いは数だよ兄貴!
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